マンスリー・プロジェクト情報


[リーディング公演]
3人の女優により演じわけられる“イプセンの妻”
―“イプセンの再来”とも、“21世紀のベケット”ともいわれる
ノルウェーの劇作家ヨン・フォッセ作の『スザンナ』

1909年、イプセン劇が日本で初めて上演された。それは日本人によって上演された西洋近代劇の幕開けでもあった。この『ジョン・ガブリエル・ボルクマン』上演以来、約100年を経て同じノルウェーから“イプセンの再来”といわれているヨン・フォッセの作品が日本に紹介されている。

日本では、2004年『だれか、来る(“Nokon kjem til a komme”=英題“Someone will come”)』(太田省吾演出、平成15年度 公共ホール演劇製作ネットワーク事業)、『名前(“Namnet”)』『眠れ、よい子よ(“Sov du vesle barnet mitt”)』『ある夏の一日(“Ein sommars dag”)』(三浦基演出、青年団リンク 地点)、07年『死のバリエーション』(アントワーヌ・コーベ演出、世田谷パブリックシアター)などがあり、それぞれが日本初演で、現在ヨーロッパ現代演劇の最前線に立つヨン・フォッセと日本の演劇界が初めて出会った。

ヨン・フォッセは1959年ノルウェーの西海岸ハウゲスンに生まれ、フィヨルドの傍らで育った。比較文学で修士号を取得後、ベルゲンで6年間教壇に立ったが、92年以降執筆に専念、現在もベルゲンに住む作家にして詩人、そして劇作家。82年に作家としてデビューし、小説、詩集、児童文学、エッセイ集などを出版。92年に劇作『だれか、来る』を執筆、95年にザルツブルグ・フェスティバルで『名前』を発表して以来、まずドイツ語圏で頻繁に上演される劇作家となる。以後、30を超える劇作は40以上の言語に翻訳され、イプセン以外では最も上演回数の多いノルウェー人劇作家として現代演劇の最前線をリードしている。ル・モンド紙をはじめ批評家から“第二のイプセン”“21世紀のベケット”と称賛され、作品は、ミニマリスティックで、無駄を極力排した構成で、リアリズムにおさまらない詩的・音楽的な話法が特徴となっている。

96年にはイプセン演劇賞(ノルウェー)、02年「今日の演劇Theater Heute」誌最優秀海外作家賞(ドイツ)、03年にはフランス政府から栄誉賞、ノルウェー文学協会から「03年度ノルウェー国立文化協会賞(純文学部門)」を受賞。さらに、06年のイプセン没後100年を契機に「国際イプセン賞」が ノルウェー政府により創設されたが、イギリスの演出家ピーター・ブルック(08年)、フランスの太陽劇団・演出家アリアーヌ・ムヌーシュキン(09年)についで、今年10年にヨン・フォッセが3人目の受賞者になっている。


■リーディングで知るイプセン

そのヨン・フォッセ作品が“マンスリー・プロジェクト”第1回に登場する。

題して『スザンナSuzannah──3人の俳優がモノローグ風に演じる劇』、ノルウェー国営放送のテレビドラマ用に書き下ろした作品を、『ヘッダ・ガーブレル』出演中の七瀬なつみ、青山眉子、田島令子が出演、宮田慶子が演出にあたる。3人の女優は、それぞれ「若いスザンナ」「年老いたスザンナ」「中年のスザンナ」を演じ、各世代ごとのイプセンの妻を演じる。

年老いたスザンナ
でもなぜ来ないんでしょう
イプセンもシグールも
もうイプセンったらいつも来ない
私の誕生日なのよ
食事するのよ

若いスザンナ
彼 よくここを通るの
この下の道を
ぱっと上を向いて
立ち止まって待ってる
わたし彼のところに
かけ降りていくの

中年のスザンナ
ある意味では彼
わたしに結ばれているの
彼 わたしが必要なのよ
わたしなしでは破滅していたわ
消え去っていたわ
ヘンリック・イプセンはわたしなの
(台本より)


マンスリー・プロジェクト第1弾リーディング公演『スザンナ』が9月30日(木)・10月2日(土)に新国立劇場小劇場にて開催されました

お客様からは、「それぞれ違う年代のスザンナを、三人の女優の方がそれぞれの持ち味を出して朗読されて聴きごたえがあった」、「三世代の自分が重なり合うところが楽しめた。リーディング公演ならではと思う」、「新国立劇場がとても身近になるイベント。参加出来て良かった」などの感想をいただきました。


*****月に一度は新国立劇場にお気軽にお越しください *****

「マンスリー・プロジェクト」は、リーディング、講座、トークショーなど多彩なプログラムで、直近の演劇公演を、さまざまな角度からお楽しみいただくための催しです。 参加は無料です。(※事前申し込みが必要です)。ぜひご参加ください。
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