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『作り手たちの美学―Bonsai-』展
Aesthetics of the Creators -Bonsai-




時空を超えた人生の旅を構想する屋根裏部屋「初台アート・ロフト」。アート作品である舞台衣裳に光を当て、新たな物語を創造します。2019年にスタートした「初台アート・ロフト」は、「ファンタジー展」「パラード展」「生命の木展」「神話への旅展」「想像力と技-素材と型-展」「時空をこえて展」「奇想空間展」「針と糸で繋ぐ未来への扉展」「クリエイターたちの集い」など様々な切り口から舞台衣裳の展示を実施してきました。今回の『作り手たちの美学』(Aesthetics of the Creators-Bonsai-)の展示は、制約の中で表現される舞台芸術と、同じく制約を逆手にとって自然の景色を創造する「盆栽」を重ね合わせてデザインされました。メインビジュアルには「精神の美」を花言葉にもつ桜を採用し、まさに作り手たちの美学にふさわしいモチーフとなっています。


舞台衣裳にはデザイナーや工房の人々といった作り手の美学が生きており、我々に語りかけてきます。新たな生命を吹き込まれたギャラリーには、そうした人々のエネルギーが時空を超えて伝わってくるかのようです。「盆栽スタイル」という制約の中で創り出された独創的な空間をお楽しみください。


今回の展示では、オペラ『建・TAKERU』(1997年初演)、『ドン・ジョヴァンニ』(2000年初演)、『椿姫』(2015年初演)、 『ナクソス島のアリアドネ』(2002年初演)、『魔笛』(1998年初演)、『マノン』(2001年初演)、『ワルキューレ』(2002年初演)、バレエ『パゴダの王子』(2011年初演)、『白鳥の湖』(1998年初演)、『眠れる森の美女』(1997年初演)、『梵鐘の聲』(1998年初演)、『ラ・シルフィード』(2000年初演)演劇『天守物語』(2011年初演)から、美しい衣裳の数々をご覧いただけます。



展示紹介


「初台アート・ロフト」は、新国立劇場のオープンスペースやギャラリーが会場となっています。高い天井から差し込む日光、夜の照明と展示物の影が織りなす神秘的な空間は、建築上の大きな魅力です。この劇場という非日常の空間の中で、本展示の衣裳の彩り豊かなそれぞれの魅力と個性が表現されています。

これまでの展示では、花をテーマに素材の異なるモチーフで空間を飾ってきました。今回は、オーガンジー布地を使って桜の木や各ギャラリーの柱を飾っています。約6,000枚の桜の花びらは、オーガンジー素材の布地に桜の花びら型の刺繍を施し、丁寧に一枚ずつ切り出し、手仕事で縫い合わせていったものです。また、同じくオーガンジー布地による「盆栽スタイル」で表現された各作品ごとのテーマ(薔薇、梅、松、カメリア、嵐など)にもご注目ください。1997年の杮落とし公演オペラ『建・TAKERU』、演劇『天守物語』、バレエ『パゴダの王子』などの衣裳とその空間からは、あらためて日本の着物の美しさと凛とした精神性が伝わってくるようです。


2階ギャラリーでは、「初台アート・ロフト」展示撮影カメラマンの田中亜紀氏から提供された花や自然をテーマにした写真が飾られています。舞台、人物、風景、自然の撮影を中心に活動している同氏による撮影イベントも計画しています。実際の衣裳やオブジェに加え、今回も約200点以上の展示作品の写真をパネルでご紹介いたします。カメラのフィルターを通して表現された世界もぜひお楽しみください。



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1Fメインギャラリー。1997年杮落し公演『建・TAKERU』より、建、弟橘姫、倭姫。黄色からピンク色に花が変化していく鬱金桜(ウコンザクラ)は、オーガンジー布地のすべて手作業によるもの。着物と桜。日本文化の美しさが漂う。
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『パゴダの王子』より王子とさくら姫。呪いの末に引き離されていた兄妹の感動の再会をイメージしたこの空間には、困難を乗り越え希望へと進んでいく2人の姿をソメイヨシノの木が見守っている。
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『梵鐘の聲』より維盛と祇王の衣裳。祇王の衣裳は縫製後に柄を手描きで描いている。柄の上にビーズで装飾し、繊細さを出している。柱にはふっくらとした梅の盆栽が咲き誇り、琵琶や小鼓が、平家物語の世界を視覚的音楽として伝えている。
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『ラ・シルフィード』よりシルフィードとジェームス。透け感があるロマンティックチュチュ。様々な楽器で構成された空間が美しいシルフィードに惹かれていくジェームスの内面を表現。空気の精シルフィードを連想させる風の盆栽が柱を飾る。

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『白鳥の湖』よりオデット、『眠れる森の美女』よりリラの精が登場して、夢の共演を果たす。柱にはそれぞれのキャラクターをイメージした羽とライラックの盆栽と空の鳥かご、本棚の沢山の本など、ふたりの世界を象徴する小道具が効果的。

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『魔笛』より2人の武士。一枚一枚違った表情を持つ創作プラスチックパーツを組み合わせて装飾された衣裳。パーツ同士の留め糸にはビーズが通されている。柱には日本をイメージさせる松の盆栽が空間を彩る。

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『マノン』よりマノンと神父の衣裳。マノンの衣裳は体のラインをシャープに見せる身頃や、美しく優雅な印象を与える袖口の飾りなど技が光る一着。柱の薔薇と解けゆる蝋燭が再燃する恋を象徴する。

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『天守物語』より富姫と薄の衣裳。富姫の衣裳は手描きで柄が描かれている。手描きならではの温かみがありつつ、影を描くことで立体感と迫力が生まれている。嵐をイメージした盆栽が柱を彩り、浮遊する小道具たちが異界の雰囲気を醸し出す。

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『ナクソス島のアリアドネ』よりバッカス、3人の精霊たちの衣裳。ギリシャ神話を彷彿とさせる石膏像に囲まれたブース。酒と豊穣と狂乱の神であるバッカスをより際立たせる空間。ぶどうと豊かな海をイメージした珊瑚の盆栽が彩りを加える。

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ドン・ジョヴァンニ』よりドンナ・エルヴィーラの衣裳。ジャングルの木々や動物たちを鑑賞するかのように、美しいドレスを纏ったドンナ・エルヴィーラがお迎えする。壁面に飾られた田中亜紀氏の写真が空間に一服の清涼感をもたらす。


今回の「作り手たちの美学-Bonsai-」展では、舞台衣裳と小道具、オリジナル装飾が織りなす空間デザインをより楽しんでいただけるでしょう。それぞれのコーナーは、まるで短編集のような独自の世界を創り上げています。


確かに、そのデザインを、その衣裳を、その小道具を考え、実際に創造し、この世に生み出した人々がいました。そうした作り手たちの飽くなき好奇心と創造性、気の遠くなるような手仕事によって、舞台芸術は支えられています。



2025年春 初台アート・ロフト『作り手たちの美学-Bonsai-』展

■会期:只今開催中~2025年8月下旬まで
■会場:1階メインエントランスホールおよび、2・3階ギャラリー
■開場時間:8:00~20:00

■ご観覧料:無料

 キュレーション:桜井久美(アトリエヒノデ)

 インスタレーション :渡邊健斗/青木美穂(IM space lab)
 装飾物制作補助:生駒ひばり/長久保彩女

 「建」の書:高津徑花
 写真撮影:田中亜紀

 マネキン製作:株式会社七彩
 植栽:株式会社野沢園

 小道具:新国立劇場 技術総括室

 制作:新国立劇場 情報センター

 事前のワークショップにご参加いただき、桜の花びらの制作にご協力いただいた方々に御礼申し上げます。

 

お問合せ


新国立劇場 情報センター

〒151-0071 東京都渋谷区本町1-1-1 ☎03-5352-5716

 

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初台アート・ロフトは、時空を超えた人生の旅を構想する

屋根裏部屋です。

 

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