情報センター
【情報センター閲覧室】『アートとパトロネージュ』特集コーナーのご紹介
パトロネージュは、音楽家、画家や彫刻家など芸術から宗教、スポーツ、政治、科学、ジャーナリズム等に与えた支援を指します。
― メディチ家、ロックフェラー、ルードヴィヒⅡ世、足利義満、織田信長、小林一三、五島慶太、堤清二...― 現代に至るまで多くの王や教皇、将軍、資産家の名が挙げられます。
今回『アートとパトロネージュ』と題し、近代芸術に貢献したパトロンたちにまつわる書籍をご紹介します。
特に、近代西洋音楽の普及と、近代図書、館制度に大きく貢献した紀州徳川家(徳川御三家=紀州〝和歌山″・尾張・水戸)の第16代当主徳川賴貞侯の足跡を扱った3冊をご紹介します。
『薈庭楽話(わいていがくわ)』の80年ぶりの復刻を記念し和歌山県教育委員会より、『德川賴貞侯の横顔』『薈庭楽話』『南葵(なんき)音楽文庫案内』の3冊が寄贈されました。
政治家、実業家、そして音楽学者であった賴貞は、西欧の図書館制度に感銘を受け「収蔵すること」から「閲覧する」ことへと近代的な図書館への転機となり、我が国における最初の公共音楽図書館「南葵楽堂」を設立します。
『德川賴貞侯の横顔』
- 著者/編集 喜多村 進
- 監修 和歌山県教育委員会
- 出版 2021年 中央公論新社
和歌山県出身の文学者であり、紀州徳川家「南葵文庫」や和歌山県立図書館の司書をつとめ、第16代当主・徳川頼貞侯の側近でもあった著者が、その天衣無縫な人物のありし日の姿をいきいきと今に伝える手記。
『薈庭楽話』
- 著者/編集 徳川 頼貞
- 出版 2021年 中央公論新社
- 紀州徳川家第16代当主であり、実業家・政治家として活動する一方、莫大な私財を投じた音楽資料のコレクション「南葵音楽文庫」で知られる著者が、明治・大正・昭和にわたり世界の著名な音楽家たちとの交流を回顧した自叙伝。1941年に50部のみ頒布された幻の私家版を初めて復刻した。
- 「『火の鳥』や『春の祭典』などが公演されたが、自分と一所のボックスにいるのはストラヴィンスキイだ。プロコフィエフの紹介でストラヴィンスキイと握手した。(略)ストラヴィンスキイは見た処よりずっと社交的で話も上手であった。(略)関東大震災があった時、プロコフィエフは大変親切な見舞状を呉れた。彼は友情に厚い人である。」※一部抜粋
紀州徳川400年『南葵音楽文庫案内』
- 編者 和歌山県教育委員会
- 寄稿・執筆 徳川宜子、泉健、近藤秀樹他
- 出版 2021年 中央公論新社
紀州徳川家第16代当主・頼貞侯が私財を投じて収集した世界的な音楽資料のコレクション「南葵音楽文庫」の全容を明らかにし、ローマ教会のミサ典書やベートーヴェンの直筆楽譜をはじめ、至宝の数々をオールカラーで初公開する!紀州徳川家400年記念出版。
「プッチーニから『蝶々夫人』の感想を尋ねられた頼貞は、「なぜもう少し日本の曲をご研究されなかったのですか」と指摘」※一部抜粋 その後プッチーニは頼貞に『トゥーランドット』のために中国の楽譜を取り寄せるよう頼んだが、第一次世界大戦のさ中楽譜はプッチーニの元にたどり着かなかった。もし楽譜が届いていれば、まるで違ったものになっていただろう、と頼貞は回想している。
その他、次の2冊もおすすめです。
『ルードヴィヒ二世の生涯』生い立ちの謎から死の真相へ
著者 シュミット村木眞寿美
出版 2011年 河出書房新社
「私たちが両方ともいなくなったときに、世紀を超えて人々を魅了し続けるべく、永遠に生きる神の芸術に心を燃やした私たちの仕事は、後の世に輝く手本として役立つ事でしょう」1865年8月4日のルードヴィヒからワグナーへの手紙である。これを書いたルードヴィヒはまだ19歳だった。彼は純粋にそう考えたのである。 ※一部抜粋
『億万長者の贈り物』美術館をつくった6人の物語
著者 岩渕潤子
出版 1992年 日本経済新聞社
「メディチ家は滅んでこそ、真の芸術の擁護者として美化され、神格化されることになった。そして、今世紀のビジネスマンたちにさえ共通して見られる「メディチ・コンプレックス」は普遍的現象となったのである。」※一部抜粋
上記以外にも、多数揃えています。近代芸術普及への情熱を感じてください。