居昌国際演劇祭・釜山国際演劇祭
Out of Seoul Festivals going on!!

第13回釜山国際演劇祭ポスター(2016)

ソウルが韓国公演芸術の中心地であるのは確かだ。しかし、韓国の公演芸術フェスティバルはソウルだけではなく、全国様々なところで開催されている。 各地域で開かれているフェスティバルは大きく二つに分類してみることができる。
ひとつは、居昌<ゴチャン>国際演劇祭及び春川<チュンチョン>マイムフェスティバル、密陽<ミリャン>演劇祭、春川人形劇フェスティバルなど、地域のアーティストらが自発的に必要に応じて組織した民間団体が主催するフェスティバルである。
もうひとつは、地域の文化観光資源の開発及び市民の芸術享受の必要性により、地域の文化財団及び文芸会館が主導するフェスティバルである。議政府<ウィジョンブ>音楽劇フェスティバル、水原<スウォン>演劇フェスティバル(旧、水原華城<ハソン>国際演劇祭)、果川<クヮチョン>ハンマダンフェスティバル、安山<アンサン>ストリートフェスティバル、 釜山<プサン>国際演劇祭などが挙げられる。
ここでは、韓国における代表的な地域フェスティバルの中、「演劇」を基盤としながら民と官がそれぞれ主導している居昌国際演劇祭と釜山国際演劇祭を通じて、韓国における地域公演芸術フェスティバルの現況と発展の方法について報告する。

野外で展開される居昌国際演劇祭

韓国の代表的な野外フェスティバルである居昌国際演劇祭は、1989年、劇団イプチェの主導により、慶尚南道<キョンサンナムド>地域の演劇団体間の和合と演劇の発展の方法を模索するために行ったシウォル演劇祭から始まる。
2001年、フェスティバル運営のため、常設機構(社団法人居昌演劇祭育成振興会)が結成され、安定的な公演準備及び運営の形態を備えることとなり、05年と06年、文化体育観光部から全国公演芸術分野の最優秀フェスティバルとして選定され、その優秀性を認められた。
居昌演劇祭は、自然風景を背景にして公演を楽しめることができる探<ス>勝<スン>台<デ>を中心に、9つの野外劇場及び市内の居昌文化センターをフェスティバルの場所として活用している。毎年、海外から約10団体、国内から約35団体が参加、付帯行事として約15の60~65団体が参加している。ジャンルは演劇だけではなく、音楽劇、国楽ミュージカル、ダンスなど、多様である。
演劇祭のプログラムは、国内・外公式招聘作 (KIFT IN)と競演参加作(KIFT OFF)に分かれている。前者は韓国及び海外の優秀な公演を紹介するプログラムで、後者は02年に新しくできたもので、競演形式で団体及び個人賞を与えるプログラムである。また、野外企画公演として、野外ストリート劇及び音楽、ダンス公演を昼の時間に設け、観光客にもフェスティバルの参加を呼びかけている。ほかにもセミナー、ワークショップなど、様々な付帯プログラムを行っている。
自然空間を活用して、公演芸術フェスティバルの観光資源化及び産業化の可能性を見せた居昌演劇祭は、毎年15万人以上の観客(居昌郡の人口は7万人)が訪れる地域公演芸術フェスティバルの成功例となっている。

国外マーケットも視野にいれた釜山国際演劇祭

釜山国際演劇祭は、釜山広域市が主催するもので、国内の優秀な公演芸術作品を発掘し、海外マーケットにその作品を紹介する目的で2004年に始まった。この演劇祭を通じて、最高の公演を釜山の観客に見せるだけではなく、優秀な韓国演劇を海外に紹介するキュレイティングの機能まで加わった演劇祭である。
5月第一週の10日間 (16年は5月6日から15日まで)に行われるこの演劇祭は、毎年異なるテーマで観客と向き合い、新しい公演芸術のトレンドを紹介する。始まって10年余の期間にもかかわらず、国内・外の話題作を招聘した充実したプログラムで、韓国を代表するフェスティバルの地位を確立した。
プログラムは、毎年のテーマに添った「CONCEPT」と、「祝賀公演」、新人演出家とクリエイターを紹介する「ダイナミックフリンジ(Dynamic Fringe)」をはじめ、「ショーケース」、「アーティストトーク」、「10分演劇祭」、「アートマケット」など、多彩である。
また、アヴィニョンフェスティバル(OFF)をはじめ、海外の有名フェスティバルに参加できる機会を提供する競演プログラムである「Go World Festival」を通じて、優秀作品の海外流通のキュレイティング役割も着実に遂行している。
釜山文化会館、釜山市民会館及び釜山市内の小劇場と、広安里<クァンリ>の野外舞台で開催されるこの演劇祭は、毎年、5~6本の国内・外招聘作品、10本前後の競演参加作品、20本前後の自由参加作品があり、約10万人の観客が参加している。



居昌国際演劇祭は「アヴィニョンフェスティバル」をモデルに地域フェスティバルの成功例として発展を続け、釜山国際演劇祭は公演紹介の機能を超え、国内優秀公演の海外市場への進出を目指す、一つの通路としてその役割を拡大している。このような地域の公演芸術フェスティバルは、その主体や方法などは異なるが、地域の文化的特色をベースに、ソウルだけではなく海外公演を積極的に誘致し、その規模と質的水準を高め、徐々にその地平を広げている。今後は、フェスティバルの特性をうまく反映した自らのコンテンツ製作を通じた競争力の強化と、国内・外の有力作品の招聘を通じて、疎外されている地域のアーティストとの、より有機的な協力、より積極的な地域市民の参加を導き、さらに充実したフェスティバルへと発展を重ねることを願っている。


カン・ミンギョン[演劇制作プロデューサー]
南山<ナムサン>芸術センターと財団法人国立劇団で制作プロデューサーとして勤務し、財団法人貞洞<チョンドン>劇場の公演企画チーム長を歴任

翻訳:李知映

<2016.5.17発行『パーマ屋スミレ』公演プログラムより>