ソウル国際芸術祭
Seoul Performing Arts Festival

2015年のオープニングパーティ

フェスティバルの歴史は、いつから始まったのでしょうか。45億年前の地球が形成されてからでしょうか。人類が誕生した250万年前でしょうか。フェスティバルは、人間が行なってきたもっとも古い慣習です。植物や動物も、お互いに交わって楽しくそれなりの祭典を試みますが、祭儀と結束の強化という次元で具体的なおかつ組織的に祭典を試みる集団は、人間だけです。

韓国を代表する世界的な芸術祭──SPAFの哲学

ソウル国際芸術祭(Seoul Performing Arts Festival, 以下 SPAF)は、2001年の秋にソウルの大学路で始まって以来、毎年秋にアルコ劇場と大学路芸術劇場を中心に華麗に幕を開け、世界の芸術家が集うフェスティバルとして成長してきました。韓国ではこういった芸術のフェスティバルは700ぐらいありますが、演劇と舞踊を中心とするフェスティバルはSPAFだけで、もっとも歴史があります。演劇は生身の人間同士が出会い、ぶつかり合う人間の根源的な部分があるので、積極的に人間同士が文化交流を図ろうとする場になります。SPAFも韓国にとどまることなく海外の演劇シーンのトレンドを国内にどんどん紹介していくといった、開かれた文化交流を目指しています。つまり芸術を通して社会的役割を担い「Best of the Best」の精神で16年続いてきました。

SPAFのフェスティバル・スピリット

SPAFは、毎年5つの大きなスローガンを掲げます。①世界最高レベルの10作品を海外から招聘し、国際交流のトップランナーの役割を果たす。②国内から公募で10作品を集めソウルアートマーケットと連携し国内外の文化交流のネットワークを構築。③海外のプロデューサーとのネットワークを強化し、駐韓文化院と協業(Co-Work)プログラムを用意。④ソウル、福岡、ドイツ、シンガポールなどの舞踊フェスティバルと連携して、振付家の海外進出を支援。特にソウルダンスコレクションでは審査委員のひとりとして、福岡ダンスコレクションのディレクターであるスウェイン佳子を招聘。韓国の振付家が横浜フェスティバルに招聘されるなど、日本と韓国でのレジデンス作業は飛躍的な成果を収めています。⑤「若手批評家賞」を開催し国内若手の演劇・舞踊評論家を発掘。海外アーティストによるワークショップやセミナーを企画しています。さらにスパプル(SPAF+People)と名付けたボランティアを40人ぐらい集め、最優秀ボランティアを1人選出して、ルーマニアのシビウ芸術祭に国際ボランティアに参加する権利を与えます。

SPAFの輝かしい業績

5つのスローガンを中心に運営されているSPAFは、これまで、たくさんの実績を残しました。ここ3年で、客席占有率平均97%、有料客席占有率平均84%を記録し、フェスティバルのブランドを確固たるものにしました。世界的な演出家であるロバート・ウィルソン演出、ベルリナー・アンサンブルの『シェイクスピアソネット』は、韓国初の国内公演を通じて客席占有率101%、有料客席占有率平90.1%を達成しました。また、舞踊分野においてもピーピング・トム舞踊団「アルエ(A Louer)」は客席占有率平均99%、有料客席占有率平均85%を記録し、韓国にいながら世界レベルの舞台が体験できるフェスティバルを実現できました。
日本とも継続的に交流しています。2014年10月に招聘したSCOT『リア王』は、鈴木忠志の名声を再確認できる感動の舞台となりました。
もちろん、フェスティバルの完成度を数字で評価することは重要ではありませんが、観客が名作に大きな関心を寄せている事実を伝えるためSPAFの「数字」を示しました。

SPAFは毎年10月末、フェスティバルが終了次第、世界各地で開催されるフェスティバルに参加していきます。1年間、世界各国のフェスティバルを回り、プロデューサーや各国の劇場と情報交換をして、優秀な作品をリストアップをすることで秋の公演日程に合う団体に接触しています。
SPAFは現在7名で構成された運営委員会と事務局によって運営されていて、演劇と舞踊、それぞれの招聘担当者が毎年各国の有名団体と交渉していきます。01年の創設以来、執行委員長と芸術監督による体制で民間の主導のもとで8年間運営されてきましたが、13年からはプロデュースを中心とする体制に変わりました。その間、海外からの招聘は153作品、国内作は487作品がSPAFに参加しフェスティバルを輝かせました。合計640作品とソウルダンスコレクションに参加した100作品の出演者とスタッフを合計すると、実に数万人以上のアーティストが、このフェスティバルのために美しい力を見せてくれたことになります。
今年は、9月30日の開幕を皮切りに10月30日までソウル大学路で開催されます。SPAFは人類が生きる場所を確認するフェスティバルで、人を慰め明るくし、包み込むために息づいているのです。まさに、地球村の住人である私たちの風景なのです。

劉仁華[ソウル国際公演芸術祭事務局長]
※2013年7月から2014年10月まで韓国公演芸術センター事務局長・運営総括本部長を務めながらSPAFを運営。15年11月まで韓国文化芸術委員会公演芸術センター長としてSPAFを主宰。現在はSPAF運営委員会事務局長。

翻訳:李知映

<2016.4.6発行『たとえば野に咲く花のように』公演プログラムより>