台湾国際芸術祭
Taiwan International Festival of Arts

2015年更新した「TIFA」ロゴ

台湾と世界の架け橋

台湾国際芸術祭は台北にある国家両庁院が主催し、同劇場の4つのホールを会場として、2009年から開催されている台湾国内最大級の舞台芸術フェスティバルである。国家両庁院は、2074席のコンサートホールと363席のリサイタルホールを擁するコンサートホール棟(「国家音楽庁」)と、1526席の大劇場と190席の実験劇場がある劇場棟(「国家戯劇院」)から構成される。


台湾国際芸術祭は、台湾の舞台芸術愛好家に「TIFA」という英語略称で親しまれ、台湾のもっとも重要な舞台芸術イベントとして名を馳せてきた。旧正月の休暇が終わるとともに、台湾の舞台芸術は春(3月、4月)のローシーズンに入ることを背景に、国家両庁院ではより斬新的な現代の作品に特化し、8週間にわたって台湾国内外の芸術団体による演劇、ダンス、芸術分野が融合するクロスオーバー、音楽といった多様な演目を組んでいる。


台湾国際芸術祭のキュレーションは、その方向性から概ね三つの時期に区分できる。

①2009─11年 「未来の眼」(Vison of the Future)シリーズ展開期

台湾国際芸術祭を初めて開催した09年は、「未来の眼」をメインコンセプトとした。グローバル化によって国際的に繋がりを求める動きが強まる舞台芸術界に、現代性と実験性に富む海外作品を紹介した。国家両庁院は「芸術文化における台湾の眼」として機能を果たし、第一級と目される国外のアーティストの代表作を招聘することを基調にするとともに、世界的なマエストロと台湾のアーティストの国際的なコラボレーションによる委嘱新作を発表した。09年の舞台芸術界の鬼才と称されるロバート·ウィルソンと台湾の京劇名優・魏海敏による『オーランドー』(ヴァージニア・ウルフ原作)や、10年のロバート・ウィルソンと台湾オペラ名優・唐美雲、太鼓舞踊団「優人神鼓」による『鄭和1433』、そして、11年の鈴木忠志と台湾若手アーティストによるミュージカル『椿姫―何日君再来』などの作品が、この時期の台湾国際芸術祭を特徴づけている。

②2012─14年 「TIFA=質の高い芸術体験」の確立と台湾実演団体の創作力開花期

台湾国際芸術祭は国家両庁院が自らの自主事業の一環として主催するものである。国家両庁院は、日本の独立行政法人に似た法人格の組織形態であり、芸術祭のキュレーションの自由度と事業予算を確保しているため、きわめて充実した世界レベルの演目を公演することができる。ピナ·バウシュ、ピーター・ブルック、蜷川幸雄、ロベール・ルパージュ、ダニエル・フィンジ・パスカ、トーマス・オスターマイアーなどの巨匠の作品が台湾国際芸術祭の舞台を彩っている。この時期に各ジャンルのバランスに気配りをするキュレーションの目利き力は、観客から大きな支持を集めており、「TIFA=国際レベルの質の高い芸術体験」という認識が確立された。

そのうえ、国家両庁院そして台湾国際芸術祭の重要な役割は、実演団体に創作環境と発表舞台を提供することによって、舞台芸術界の発展を推進することである。09~11年の3年間の経験を基盤にし、この役割を担う台湾国際芸術祭のあり方を模索し、台湾国内の実演団体とのパートナーシップをよりいっそう強固に発展させた。コプロダクション作品『如夢幻泡影』(台湾「舞踊空間」と香港「進念二十面體」)、『愛情剖面』(台湾―フランスle Théâtre de Ajmer)、『愛人』(台湾「優人神鼓」とドイツベルリン放送交響楽団)を媒介として、国際合作を台湾舞台芸術界の視野に入れ、新作委嘱活動を通じて、無垢舞踏劇場、唐美雲台湾オペラ劇団、林文中舞踊団、國光劇団、台南人劇団、二分之一Q劇場など優秀な国内実演団体との連携関係を構築した。14年のフラッグシッププロダクション、現代中国文学の金字塔ともいえる白先勇(バイ・シェンヨン)の傑作長編小説を舞台化した『孽子』が、この時期の模索と努力を象徴している作品である。

③2015年以降 「TIFA」ブランドの強化期

16年から17年にかけて、台北芸術センターをはじめ、台湾では舞台芸術の新拠点が一斉にオープンを迎える。台湾の舞台芸術界の急激な変化と国内の新しい劇場による競争が予想され、ブランド強化と差別化戦略の一つとして、15年に台湾国際芸術際の新しいロゴを発表した。台湾国際芸術祭は、15年には「ターボ センセーション」(Turbo Sensation)、16年には「想像からの反響」(Echos from Imagination)をテーマとし、台湾と世界の架け橋として、音声と視感の相互関係及び交互作用による創造性という観点から、舞台芸術の限界とジャンルを超え、さらなる可能性を探求し続けている。
2016台湾国際芸術祭TIFAは2月25日~4月10日に開催される。
詳しい情報はこちら:http://tifa.npac-ntch.org/2016/tw/

李恵美 [国家両庁院芸術総監]

<2015.12.8発行『バグダッド動物園のベンガルタイガー』公演プログラムより>