新国立劇場バレエ研修所 栄養学講師 村田裕子先生による 【若手芸術家のための栄養学】
バレエ研修所でいつも「成長期のダンサーのための食事の取り方について」教えて頂いている講師の村田裕子先生による
「舞台芸術を志す若手芸術家の方々の体調管理にも役立つような"美味しい"お話」今月もニュースとしてお届け致します。
第3回目は【夏野菜と香辛料でからだの中から熱中症予防】をご紹介します。
- 新国立劇場バレエ研修所 栄養学講師 村田裕子先生による -
【若手芸術家のための栄養学】
第3回
そろそろ梅雨が明け、本格的な真夏日のはじまりです。このところテレビや新聞では毎日のように熱中症のニュースが報じられています。成長期のダンサーや若手芸術家のみなさんは、熱中症対策は万全でしょうか。
人間は、気温の上昇や運動によって体温が上がると汗をかき、汗が蒸発するときに体から熱を放出することで体温を調節しています。それが気温や湿度などの環境や体のコンディションによって、体から熱を放出する仕組みが機能しなくなると、熱中症にかかりやすくなるのです。熱中症は、炎天下だけでなく、湿度の高い屋内でも気をつけなければなりません。
熱中症予防には、水分と塩分の摂取が大切だといわれていますが、正確には、汗で失われた水分、塩分、ミネラルのこの3つを補給する必要があります。水分、塩分、ミネラルのほかアミノ酸も摂取できるスポーツドリンクを利用している人も多いと思いますが、糖分が多いのが気になります。スポーツドリンクは水で薄めて、レモン果汁を加えると疲労回復効果も高まります。
夏の食事には、からだを冷やす性質のある夏野菜、効率的に汗を出す香辛料や香味野菜を意識して取り入れてみましょう。からだの熱は、体内の熱、体表の熱の2つに分類されます。トマト、なす、ピーマン、パプリカ、おくら、きゅうり、ゴーヤ、おくら、ししとう、みょうが、とうもろこしなど、夏に実をつける野菜は、東洋医学では「清熱解暑(せいねつげしょ)」といって体内にたまった余分な熱を外に出す働きがあるといわれます。カレー粉、こしょう、唐辛子などの香辛料、ねぎ、しょうが、しそなどの香味野菜は、毛穴を開かせて、汗とともに体表の熱を発散させる作用があります。
ここでひとつ注意したいのは、冷やす性質のある食べ物と冷たい食べ物との違いです。冷やす性質のある食べ物とは、その食材そのものが体内の熱を取りのぞいてくれるもの。冷たい食べ物とは、アイスクリームや清涼飲料水などの冷蔵庫や冷凍庫で冷やしたものです。
お稽古場でたくさんの汗をかいたあとは、どうしてもアイスクリームや清涼飲料水を食べたくなります。食べたあとは一時的に爽快になりますが、熱中症予防の水分補給でおなかはたぽたぽのはず。胃液がうすまっているところに冷たい食べ物が入ってくるわけですから、胃腸が弱り、食欲減退、夏ばて、だるさ、むくみを生じやすくしてしまいます。
冷たい食べ物はそこそこに。夏が旬の野菜には夏にこそ必要なビタミンや色素成分、汗で失われたミネラルもたっぷり含まれています。夏野菜とたんぱく質は同量くらいのバランスで食べるのがベスト。香辛料や香味野菜を組み合わせて、からだの中からも外からの熱をとりのぞき、熱中症にならないからだを目指しましょう
栄養満点の料理3品をご紹介します!
豚肉となすの梅南蛮 夏野菜のタイ風カレー 白身魚のレンジ蒸し、トマトのねぎ塩だれ
写真① 写真② 写真③
Photo②③鈴木正美(studio orange)
写真①【豚肉となすの梅南蛮】
夏の元気のもとといえば豚肉。
豚もも肉には疲労回復効果の高いビタミンB1が豊富に含まれます。
からだを冷やし、熱を除くなすとともに少ない油で揚げ焼きに。
しょうがでさっぱり、
梅干を隠し味に加えたほどよい酸味の南蛮酢が食欲をそそります。
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写真②【夏野菜のタイ風カレー】
まろやかな中にもシャープな辛味がきいたタイ風カレー。
煮込まなくていいので、暑い夏でも作りやすい。
発汗や胃腸の働き、代謝を促してくれたり、
夏の紫外線によるトラブルからからだを守ってくれたり、
一皿の中にからだが喜ぶ栄養素がいっぱいです。
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写真③【白身魚のレンジ蒸し、トマトのねぎ塩だれ】
夏は1年のうちでいちばんたんぱく質を食べる量が減る季節ですが、
熱中症予防にも筋力を維持するためにもたんぱく質は不可欠。
白身魚はねぎの青い部分の上にのせてレンジ蒸しにすると
熱がやわらかく伝わり、しっとりと仕上がります。
白身魚のかわりに鶏のささみでもおいしくいただけます。
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夏野菜と香辛料で暑い夏を乗り切りましょう。どうぞ、お試しください!