舞踊芸術監督 吉田都


2024/2025シーズンのテーマは「With a Sense of Adventure」。新国立劇場バレエ団が「冒険心を持って」突き進むシーズンとなります。『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』『ジゼル』『不思議の国のアリス』といったお馴染みの作品に加え、カンパニー・プレミエやバレエ団オリジナルの世界初演作品など、多彩な舞踊の魅力を感じられるラインアップといたしました。カンパニーとともに、皆さまにもワクワクしていただけるよう、冒険心、チャレンジ精神をもって一つひとつの舞台をお届けいたします。

またバレエ団以外では、<大人も子どもも楽しめるダンス作品>として2021年に初演したCo.山田うんの『オバケッタ』を再演いたします。年齢問わずどなたでもお楽しみいただける作品ですので、ぜひご家族で劇場に足を運ぶ機会としていただければ幸いです。

今回ご紹介する新制作は4作品ございます。まずは2024年7月にこどものためのバレエ劇場として世界初演する貝川鐵夫『人魚姫』。新国立劇場バレエ団から振付家を育てるプロジェクト「NBJ Choreographic Group」から誕生した初の全幕バレエとなります。このプロジェクトから生まれた作品は「DANCE to the Future」で上演されていますが、このたび全幕作品として結実することを一つの未来として示すことができました。これはプロジェクト、ひいてはバレエ団にとって大きな進歩です。

2025年3月のトリプル・ビル「バレエ・コフレ」では12年ぶりの上演となる『火の鳥』と一緒に、ハラルド・ランダー『エチュード』、コロナ禍の影響で上演が延期になっていたウィリアム・フォーサイス『精確さによる目眩くスリル』を上演します。いずれも初めてとなる振付家の作品で、カンパニーにとって新たな挑戦となることはもちろん、普段全幕バレエに親しんでいらっしゃる観客の皆さまにとっても「冒険」となる観劇体験をお届けできることと思います。

最後は2025年7月「Young NBJ GALA」で上演する、新国立劇場バレエ団ダンサー福田圭吾の若手ダンサーのための一幕物の新作です。彼も「NBJ Choreographic Group」で意欲的に作品を発表してきましたので、このたびバレエ団から作品を委嘱する機会を持てたことを嬉しく思います。「Young NBJ GALA」は若手ダンサー育成のために2023年に始めた企画ですが、今後も継続的に取り組んでいきたいと考えております。

そして何といっても、2025年の大きなハイライトは、カンパニーにとって初めての土地、劇場での海外公演となります、英国・ロイヤルオペラハウスでの『ジゼル』の上演です。かねてから実現を願っておりましたので、こうして皆さまにお知らせできることは幸甚の至りです。コロナ禍をはじめとする沢山の困難がありましたが、木下グループ様の大きなお力添えにより実現できる運びとなりました。演劇的でありつつも、新国立劇場バレエ団ならではの美意識を生かした『ジゼル』はきっとイギリスの観客の皆さまにもお楽しみいただけると思いますし、そして何より新国立劇場バレエ団とダンサーたちの素晴らしさを広く知っていただく絶好の機会となることが今から楽しみでなりません。

新しい挑戦と両輪で引き続き行わなければならないのが、ダンサーたちの働く環境の一層の整備です。公演回数の増加、新しいスタジオの増設、ダンサー一人一人のニーズに応えるパーソナルコンディショニングセッションの開始、ステージトレーナーの増員など、劇場全体として行っている様々な取り組みが実を結びつつありますが、まだ十分とは言えない状況です。今シーズンも改革を緩めることなく進めていく所存です。

世界は未だ戦争や大きな社会情勢の変化の最中におり、日本では2024年の年明けに大きな地震が能登半島を襲いました。この状況において、舞台芸術には何ができるか、新国立劇場は何をすべきか、改めて見つめ直しつつ、攻めの姿勢をもって次なる冒険へ一歩を踏み出していきたいと思います。

2024/2025シーズンも新国立劇場バレエ団への引き続きの温かいご声援を心よりお願い申し上げます。


舞踊芸術監督 吉田都


2024/2025シーズンのテーマは「With a Sense of Adventure」。新国立劇場バレエ団が「冒険心を持って」突き進むシーズンとなります。『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』『ジゼル』『不思議の国のアリス』といったお馴染みの作品に加え、カンパニー・プレミエやバレエ団オリジナルの世界初演作品など、多彩な舞踊の魅力を感じられるラインアップといたしました。カンパニーとともに、皆さまにもワクワクしていただけるよう、冒険心、チャレンジ精神をもって一つひとつの舞台をお届けいたします。

またバレエ団以外では、<大人も子どもも楽しめるダンス作品>として2021年に初演したCo.山田うんの『オバケッタ』を再演いたします。年齢問わずどなたでもお楽しみいただける作品ですので、ぜひご家族で劇場に足を運ぶ機会としていただければ幸いです。

今回ご紹介する新制作は4作品ございます。まずは2024年7月にこどものためのバレエ劇場として世界初演する貝川鐵夫『人魚姫』。新国立劇場バレエ団から振付家を育てるプロジェクト「NBJ Choreographic Group」から誕生した初の全幕バレエとなります。このプロジェクトから生まれた作品は「DANCE to the Future」で上演されていますが、このたび全幕作品として結実することを一つの未来として示すことができました。これはプロジェクト、ひいてはバレエ団にとって大きな進歩です。

2025年3月のトリプル・ビル「バレエ・コフレ」では12年ぶりの上演となる『火の鳥』と一緒に、ハラルド・ランダー『エチュード』、コロナ禍の影響で上演が延期になっていたウィリアム・フォーサイス『精確さによる目眩くスリル』を上演します。いずれも初めてとなる振付家の作品で、カンパニーにとって新たな挑戦となることはもちろん、普段全幕バレエに親しんでいらっしゃる観客の皆さまにとっても「冒険」となる観劇体験をお届けできることと思います。

最後は2025年7月「Young NBJ GALA」で上演する、新国立劇場バレエ団ダンサー福田圭吾の若手ダンサーのための一幕物の新作です。彼も「NBJ Choreographic Group」で意欲的に作品を発表してきましたので、このたびバレエ団から作品を委嘱する機会を持てたことを嬉しく思います。「Young NBJ GALA」は若手ダンサー育成のために2023年に始めた企画ですが、今後も継続的に取り組んでいきたいと考えております。

そして何といっても、2025年の大きなハイライトは、カンパニーにとって初めての土地、劇場での海外公演となります、英国・ロイヤルオペラハウスでの『ジゼル』の上演です。かねてから実現を願っておりましたので、こうして皆さまにお知らせできることは幸甚の至りです。コロナ禍をはじめとする沢山の困難がありましたが、様々な方のご支援、そして木下グループ様の大きなお力添えにより実現できる運びとなりました。演劇的でありつつも、新国立劇場バレエ団ならではの美意識を生かした『ジゼル』はきっとイギリスの観客の皆さまにもお楽しみいただけると思いますし、そして何より新国立劇場バレエ団とダンサーたちの素晴らしさを広く知っていただく絶好の機会となることが今から楽しみでなりません。

新しい挑戦と両輪で引き続き行わなければならないのが、ダンサーたちの働く環境の一層の整備です。公演回数の増加、新しいスタジオの増設、ダンサー一人一人のニーズに応えるパーソナルコンディショニングセッションの開始、ステージトレーナーの増員など、劇場全体として行っている様々な取り組みが実を結びつつありますが、まだ十分とは言えない状況です。今シーズンも改革を緩めることなく進めていく所存です。

世界は未だ戦争や大きな社会情勢の変化の最中におり、日本では2024年の年明けに大きな地震が能登半島を襲いました。この状況において、舞台芸術には何ができるか、新国立劇場は何をすべきか、改めて見つめ直しつつ、攻めの姿勢をもって次なる冒険へ一歩を踏み出していきたいと思います。

2024/2025シーズンも新国立劇場バレエ団への引き続きの温かいご声援を心よりお願い申し上げます。

プロフィール

9歳でバレエを習い始め、1983年ローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞受賞。同年、英国ロイヤルバレエ学校に留学。84年、サドラーズウェルズ・ロイヤルバレエ(現バーミンガム・ロイヤルバレエ)へ芸術監督ピーター・ライトに認められて入団。88年にプリンシパル昇格。95年に英国ロイヤルバレエへプリンシパルとして移籍、2010年に退団するまで英国で計22年にわたり最高位プリンシパルを務める。
日本国内では1997年の新国立劇場開場記念公演『眠れる森の美女』をはじめ、新国立劇場バレエ公演での99年『ドン・キホーテ』『シンデレラ』、2000年『ラ・シルフィード』、04年『ライモンダ』ほか、数多くの公演に主演している。
ローザンヌ国際バレエコンクール審査員を務めるほか、後進の育成にも力を注いでいる。バレリーナとしての功績と共にチャリティ活動を通じた社会貢献が認められ、04年「ユネスコ平和芸術家」に任命、12年には国連UNHCR協会国連難民親善アーティストに任命。
01年芸術選奨文部科学大臣賞、06年英国最優秀女性ダンサー賞、11年第52回毎日芸術賞など受賞多数。07年に紫綬褒章並びに大英帝国勲章(OBE)受賞、17年文化功労者、19年菊池寛賞。
20年9月より新国立劇場舞踊芸術監督。