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【インタビュー】「DANCE to the Future 2026」木下嘉人
新国立劇場バレエ団の中から振付家を育てるプロジェクト「NBJ Choreographic Group」で意欲的に振付に挑戦してきた木下嘉人が、いま、振付家として新国立劇場バレエ団委嘱作に取り組んでいる。「DANCE to the Future 2026」での上演に向けての意気込み、創作への思いを聞いた。
インタビュー・文●加藤智子 〈ライター〉
「ジ・アトレ」2026年8月号より
作品の構想と「ドラフト・ワークス」での経験
―今回の新作は初めての新国立劇場バレエ団委嘱作、当初どのような思いで受け止められましたか。
木下 最初は「まさか!? 」と思いました。これまで手がけてきた作品は長くても15分間程度。少人数のダンサーと一緒に、ただひたすら自分の好きなように創ってきただけですから。今回、吉田都芸術監督に「もっと長めの作品を創ってみませんか」と声をかけていただき、挑戦することにしましたが、20〜30 分間程度の作品を、十一人、セカンドキャストを入れると十三人のダンサーとともに創る予定でいます。
―大人数の作品を創る機会はこれまでにもあったのですか?
木下 今までは、取り組むのが難しかったですね。創作ではかなりの気力と体力を使いますし、想像以上に頭を働かせなければいけません。僕のメインの活動はダンサーですから、踊ることを優先すると、デュエットや三、四人のための小品を創るので精一杯だったんです。その点でも、今回は僕にとっての新たなチャレンジとなります。
―作品の構想はどのように決められたのですか。
木下 取り上げたいテーマは自分の中にいくつかあったので、ネオクラシックなものからコンテンポラリー寄りの作品まで、いろいろな可能性を考えました。やはりダンサーとしての活動が最優先ですから、十一月の上演日程から逆算して、限られた時間の中でどんなものを創ることができるのか、じっくり検討してからミーティングに臨みました。実はそんな中で、視野を広げるために英国ロイヤル・バレエ&オペラが主催する「インターナショナル・ドラフト・ワークス 2026」に挑戦してみないか、というお話をいただいたんです。
―四月にロンドンに行かれたのでしたね。どのような催しだったのでしょう。
木下 世界各国から新進気鋭の振付家がロイヤルオペラハウスのリンバリーシアターに集い、それぞれの作品を上演しました。英国、フランス、デンマーク、カナダ、ノルウェーなどから集まった振付家の多くは、それぞれのバレエ団で活躍中の現役ダンサーでした。上演作品はどれもそれぞれに色があって、大いに刺激を受けましたね。たとえばパリ・オペラ座バレエのマキシム・トマは車椅子のダンサーとともにデュエットを踊っていたのですが、深みのある表現が見事でした。
"共鳴の感覚"をお客様と共有したい
―ご自身はどのような作品を上演されたのですか。
木下 6分間ほどのパ・ド・ドゥで、五月女遥さん、森本亮介さんに踊っていただきました。ルドヴィコ・エイナウディの音楽で、クラシックの動きをベースに創作したパ・ド・ドゥです。今度の新作で取り組もうとしているのと同じテーマで創ったのですが、タイトルは『Re: sonance』。つまり、"共鳴"です。「DANCEto the Future」では、これをさらに発展させ、広げていくつもりでいました。
―"共鳴"というテーマは、どんなところから生まれたのでしょう。
木下 ダンサーとして踊る中で、僕はいつも、身体を介した意思疎通、コミュニケーションの重要性、難しさを感じてきました。ただカウントで合わせたり、目視で合わせたりするだけでなく、音楽と身体を一体化させ、ダンサー同士が共鳴しなければ、美しいものは生み出せない、という思いを募らせてきたんです。
僕は新国立劇場バレエ団に入る前、ヨーロッパのバレエ団で活動していたのですが、とくにドイツでは現代振付家の作品を多く踊っていました。そこで得たのが、まさに"共鳴の感覚"です。新国立劇場バレエ団ではクラシックの作品を踊ることが多いのですが、コンテンポラリー作品の自由で多彩な動き、身体の内側からエネルギーを放ち、皆と共鳴する感覚が忘れ難く、僕も、ダンサーたちが身体で通じ合い、滑らかに、美しく展開していくような作品を創りたいと思うようになりました。今度の新作でも、クラシックの技法をベースにしながら、その"共鳴の感覚"を表現し、お客様と共有したいと思っています。うまく響き合っている人間同士でも、対立したり衝突したりするタイミングがあったり、また元通りになったりしますよね。僕はその様子を、研ぎ澄まされた身体表現でパズルのように組み立て、描き出したいと考えています。
すべての要素が響き合う 密度の高い作品を目指す
―ロンドンでパ・ド・ドゥを上演したことで、新作の方向性はより具体的になってきたのではないでしょうか。
木下 実は「ドラフト・ワークス」に参加したことで、僕はもっともっと突き詰めていかなければと感じ、それまでに考えていたことを一度白紙に戻したんです。それほど衝撃的な体験でした。たとえば、「ドラフト・ワークス」の照明家や舞台監督の方の素晴らしい仕事ぶり。作品が活きる照明を創ってくださいましたし、さまざまなカンパニーの人たちの多彩な作品が集まっているのに、それが別々のものではなく、まるで一つの大きな作品のように感じられる舞台を創られていました。それを体感したことで、僕自身、
イマジネーションがどんどん広がっていくように感じ、やってみたいことがぐんと増えたんです。「ドラフト・ワークス」で上演したパ・ド・ドゥはそのまま「DANCE to the Future」でも上演させていただき、また違ったアプローチで新作には取り組んでいこうと思っています。
―いまの段階で見えてきているところを教えてください。
木下 女性の主役を中心に、男女三ペアで展開し、クライマックスにはメインのカップルによるパ・ド・ドゥを、ということを考えています。照明家のお力を借りて影を使った演出を工夫することで、もっと空間を活かし、ダンサーもより活きるようにしたい。明確なストーリーはありませんが、どことなくドラマが感じられるようにしたいですし、すべての要素が響き合い、一瞬で見入ってしまうような密度の高い作品を目指したいですね。
―ダンサーとしてもフル稼働、これからさらに慌ただしい日々が続くのではないでしょうか。
木下 「ドラフト・ワークス」に参加できたのは、吉田都芸術監督のご尽力と後押しがあってのこと。ダンサーとして舞台で踊るだけでなく、新たなチャレンジの場を作ってくださったことに感謝したいですし、ロンドンでの経験を通して、何より創り続けることこそが大切だと実感しました。新作では、ダンサーと空間の"共鳴"を、多くのお客様にご覧いただきたいと思っています。
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