バレエ&ダンス公演関連ニュース

「Young NBJ GALA」出演者インタビュー


新国立劇場バレエ団ならではのシリーズ企画「DANCE to the Future」。2023/2024シーズンは「DANCE to the Future: Young NBJ GALA」と題し、若手ダンサーにスポットライトを当てたガラ公演をお届けする。

注目は「パ・ド・ドゥ集」。古典バレエの名パ・ド・ドゥを若手ダンサーが踊るというこれまでにないキャスティングで、バレエ団の"未来"を描く舞台を創り上げる。

「パ・ド・ドゥ集」に出演するのは4組8人のダンサーたち。これまでのバレエの歩みを振り返り、「DANCE to the Future: Young NBJ GALA」への意気込みを語る。



インタビュアー◎守山実花(バレエ評論家)
写真◎井上ユミコ

吉田朱里

ミルタ役を経て、今回のジゼル アルブレヒトへの愛や想いを表現したい

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次のシーズンで入団3年目になります。5歳からシンガポールでバレエを始め、9歳の時に帰国、研修所には16歳で入所しました。入団する前からソリストの役も踊りたいとずっと思っていたので、『ジゼル』でミルタ役をいただきとても嬉しかったです。1月の「ニューイヤー・バレエ」から4月の「シェイクスピア・ダブルビル」までは比較的時間を作れたので、トレーニングをしっかりしてまた次に持っていけるように、と課題に取り組んでいたところ、『白鳥の湖』で急遽オデット/オディールを踊ることになりました。リハーサルと違い本番は休憩中に着替えや髪の毛のチェンジなどがあり、時間配分も含めてイメージトレーニングをしなければいけないと学びました。体力も筋力もまだ全然足りないことを実感したので、この夏にしっかり鍛えて新シーズンに臨みたいです。

『ジゼル』は一番好きな作品です。第1幕から第2幕の物語が繋がっていることをお客様に感じていただけるように踊りたいと思っています。ミルタは、諦めずにアルブレヒトを助けようとするジゼルを冷たく拒絶するのですが、ミルタを演じた時はジゼルの気持ちを思って泣きそうになることがありました。今度はジゼルとしてアルブレヒトへの愛や想いを表現したいです。

来シーズンはいろいろな役に挑戦して踊りの幅を広げていきたいので、明確になった課題と目標に向けて準備していきたいと思っています。

仲村 啓

初挑戦の『ジゼル』 浮遊感が出せるようしっかりサポートしたい

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2019/2020シーズンに新国立劇場バレエ団に入団しました。幼稚園のときに友達に誘われたのがきっかけでバレエを始めました。中学生のころから本格的にレッスンするようになり、研修所に入りました。バレエに関係することを幅広く学べ、同じ目標を持った仲間たちと毎日過ごせる、とても楽しい時間でした。研修所ではみっちりと基礎を仕込まれ、直していくべきところも指導されるのですが、バレエ団では自分で課題をみつけ、研究していかなければなりません。それがプロの厳しさなのだと思います。

最初の大きな役は『シンデレラ』のカヴァリエでした。前に出て踊るところもあり緊張しましたが、女性ダンサーと組む意味でもとても勉強になりました。その後徐々に役がつくようになりましたが、今回「パ・ド・ドゥ集」に選ばれたこと自体がまず驚きでしたし、嬉しいです。『ジゼル』は初挑戦ですが、ジゼルの浮遊感が出せるようにしっかりとサポートしたいですし、好きな人が自分のせいで死んでしまった、その罪悪感やジゼルに対する気持ちを短い中でも出していければと思っています。

実は「シェイクスピア・ダブルビル」の公演中に怪我をしてしまい、『白鳥の湖』には出られませんでした。怪我が治ったら、もう一段階ステップを上がれるようにしっかりと身体と向き合っていきたいです。

来シーズンは、入団する直前にスタジオでリハーサルを見学していた『アラジン』の再演があるので、今度は自分があの世界の中に入って活き活きと踊れることを楽しみにしています。

中島春菜

今の私たちにしかできない『眠り』をお見せできるよう頑張ります

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16歳の時に新国立劇場のバレエ研修所の予科に入所し、4年間の研修を経て、バレエ団では5年目のシーズンが終わったところです。バレエ団ではたくさんの作品に出会うことができ、とても幸せです。今シーズンを振り返ると本当に多くのことに挑戦させていただきました。あっという間に1年が終わってしまいましたが、『白鳥の湖』では、初演時に踊ったときと比べて精神面でも少し強くなったかも! と感じることがあり、嬉しくなりました。もちろん課題もたくさん見つかっていますが......コツコツ頑張りたいです。

『眠れる森の美女』のグラン・パ・ド・ドゥは研修所公演で渡邊峻郁さんと踊らせていただきました。研修所を卒業して5年経って、その時と同じ中劇場で『眠り』を踊るのはなんだか不思議な感じもしますが、バレエ団でパ・ド・ドゥを踊る機会をいただけて嬉しいです。古典バレエで、型やスタイルもきっちりしていて、シンプルゆえの難しさがある踊りだと思います。研修生のとき、峻郁さんからはいろいろなことをまさに手取り足取り教えていただきました。アドバイスを思い出しつつリハーサルに臨みたいと思っています。今回一緒に踊る弟の拓朗君も何度か組ませていただいたことがありますが、何があっても動じない肝が据わった方なので、安心感があります。キラキラした幸せな空気感と、今の私たちにしかできない『眠り』をお見せできるよう頑張ります。

来シーズンも、今シーズンに引き続き、私自身がやるべきことは変わらず、ひとつひとつ成長できるように毎日を過ごしたいです。楽しみながら精一杯努めていきます!

渡邊拓朗

ノーブルなだけでなく強さもあるデジレ 「攻め」の部分も出していけたら

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研修所を経て、2017年にバレエ団に入団しました。バレエは姉、兄がやっていたのでその流れで僕も習っていましたが、中学生のころ、男性ダンサーのパがかっこいいと思うようになり、レッスンへの姿勢が変わりました。研修所ではがむしゃらに頑張りましたが、バレエ団は男性だけのクラスもあるし、先輩たちが本番に使う技を練習しているのを見て僕もやってみたりとモチベーションがあがる環境で、とても楽しくバレエと向き合っています。

バレエ団に入って2年目のときに『不思議の国のアリス』でトランプやフラワーのリードにキャスティングされ、少しずつソリストの役もいただくようになっていきました。3人の庭師は、もともとキャストに入っていなかったのですが、通し稽古の前日に「あなた、明日ちょっとやってみて」と指導のジャッキー(ジャクリーン・バレット)さんに言っていただいて、とても頑張って舞台に上がれたのもいい経験でした。

今回は『眠れる森の美女』のデジレを踊ります。より丁寧にノーブルに踊りたいので、日々のレッスンから頑張りたいですね。ただデジレはノーブルなだけでなく、強さもあると思うので、ノーブルなだけで終わらず、その中でも「攻め」のようなところも出せていけたらと思います。中島春菜ちゃんとはバレエ団の公演以外で一度『眠れる森の美女』を踊っているので、その時よりも余裕をもって、ドンと構えて踊りたいです。

いただいた役ごとに目指すところは違いますので、これからもひとつひとつ目の前のことに集中し、しっかり頑張っていこうと思っています。

廣川みくり

パ・ド・ドゥを通じてダンサーの個性をお楽しみください

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研修所を経て、新国立劇場バレエ団に入って8年になります。8年というとすごく長いようですが、いろいろなことが凝縮されていて、体感的には一瞬です。楽しいことは一瞬で過ぎ去ってしまうように、さっきまで朝だったのにもう家に帰ってきちゃった、というくらいあっと言う間に舞台が終わってしまい、その繰り返しでいつの間にか1シーズンが終わり次のシーズンを迎えて......。それが中断したのが、コロナの自粛期間でした。バレエ団にも行けずつらかったですが、今振り返ると、バレエ団のみんなが一緒に休める状況で、自分だけが踊れないというプレッシャーも感じずに休むことができましたし、冷静に自分を見つめ直せる、良い時間でした。

今回の「パ・ド・ドゥ集」は、監督がアーティスト1人1人の踊りをよく見てくださっているからこその企画だと思います。キャスティングしていただけたのは純粋に嬉しいですし、期待に応えたいという思いもあります。

一緒に踊る石山蓮君は研修所の後輩で、フレッシュだけど頼りになる存在。ですが、甘えすぎることなく、私も先輩として少しでもリードできるよう頑張りたいです。パ・ド・ドゥの難しいところは、登場するだけで、この2人にどういうことがあって、どういう気持ちなのか、それまでの物語を表現しないといけないこと。そして踊りでそれを表現するために必要なのが基礎。しっかりした基盤があってこそ初めて、装飾をつけられます。お客様には役の内面の表現を味わっていただくと同時に、パ・ド・ドゥを通じて、ダンサーの個性や今までとは違う部分を見つけ、楽しんでいただければ嬉しいです。

石山 蓮

体力と表現、共にチャレンジ 踊りの中で作るニキヤとの関係性

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バレエを始めたのは先にバレエを習っていた姉と兄の影響です。ロシアに1年留学した後、バレエ研修所で2年過ごし、新国立劇場バレエ団に入りたいと一層強く考えるようになりました。最初の1年はシーズン契約はいただけませんでしたが、登録ダンサーとして代役やカバーで踊る機会もあり、再挑戦の結果、契約ダンサーになりました。バレエ団に入ってからは実践的なことを学べる時間が増え、発見と勉強の毎日です。

今シーズンは『夏の夜の夢』のパック役が本当に大きな挑戦でした。体力面や技術的な課題に加え、自分で役を作って演じるのはほぼ初めてでしたので、自分の演技力で対応できるのか本当に悩み、考えに考えました。自分が思っている以上に表現しなければ伝わらないということを実感しました。難しいこともたくさんありましたが、舞台上ではたくさんのダンサーと目が合い、いろいろな演技ができてとても楽しかったです。

「パ・ド・ドゥ集」では『ラ・バヤデール』の"影の王国"からベールのパ・ド・ドゥを踊ります。ソロルのヴァリエーションも加えられると聞いていますので、体力面でも大変な挑戦になりそうです。しっとりした感じの踊りはまだあまりやったことがなく、その点でもチャレンジです。廣川みくりさんがパートナーなので心強いですし、踊りの中でニキヤとの関係性をしっかりと作っていけたら、と思っています。

来シーズンは、新国立劇場バレエ団に入る前に観て刺激を受けた『アラジン』に携われるのを特に楽しみにしています。いただいた役に対してさらに理解を深めることを意識し、自分に足りないところを補い成長していきたいです。

金城帆香

『ドン・キホーテ』グラン・パ・ド・ドゥは初 いろいろ吸収してレベルアップを

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高校時代は大学受験の準備をしていましたが、スタジオの発表会にゲスト出演してくださった新国立劇場バレエ団のダンサーの方々に接したことがきっかけで、プロのダンサーを目指そうと決意しました。1月のオーディションは書類審査で落ちてしまったのですが、5月に追加オーディションで合格することができました。私はバレエ留学もしておらず、入団してからはやるものやるものがほぼ初めてのため、新しいことを吸収しています。キャラクターダンスも未経験でした。今は自分の体と向き合う時間もとれ、毎日がとても充実しています。

『白鳥の湖』では、白鳥の娘たちのコール・ド・バレエで揃える難しさに苦労しましたが、シーズン最初の『ジゼル』で先輩方にいろいろと指導していただいた経験を活かすことができたと思います。同じ音楽で大きな2羽の白鳥の振りも覚えなければならず、ソリストの役も初めてでしたが、同期のダンサーと一緒に踊ることができたので2人で支えあい、乗り切れたように思います。

「パ・ド・ドゥ集」では『ドン・キホーテ』を踊ります。踊れると聞いたときは、素直に嬉しいという気持ちが強かったです。ヴァリエーションだけは踊ったことがあるのですが、グラン・パ・ド・ドゥは未経験。いろいろなことを吸収してレベルアップしていきたいです。

『ドン・キホーテ』は来シーズンのオープニングで全幕が上演されます。作品自体も大好きなので、作品世界の中に自分がいられることがとても嬉しいです。来シーズンも新しい経験が続きそうで今からワクワクしています。

山田悠貴

思い入れのあるバジル役 踊ることで皆さんに何かを届けられたら

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登録ダンサーを経て、新国立劇場バレエ団の契約ダンサーになって2年目です。8歳でバレエを始め、ジョフリーバレエ・アカデミー、ワガノワ・バレエアカデミーに留学しました。ワガノワでは世界のバレエとはどういうものなのか、世界基準を知ることができたのが、自分にとって大きいことでした。とても厳しい環境でしたが、たくさん成長させてくれた場所です。

今シーズンは『ジゼル』のぺザント・パ・ド・ドゥに始まり様々な機会をいただき、感謝と幸せでいっぱいです。特に『夏の夜の夢』のパック役は何物にも代えがたい経験でした。もちろん課題もたくさん見つかりましたし、まだまだ改善しなくてはいけない点もありますが、たくさんの方が観にいらしてくださり、拍手や解禁になったブラボーをいただけたことが本当に嬉しくて、初日のカーテンコールでは思わず涙がこぼれました。『シンデレラ』の道化役を怪我で降板してしまったので、1年後にアシュトン振付の作品で、パックを踊れたことも僕にとっては意味のあることでした。

新国立劇場でグラン・パ・ド・ドゥを踊らせていただけるのは、夢みたいなこと。バジルはワガノワ時代も留学生公演で踊らせていただいたり、いろいろなところで踊ってきた思い入れのある作品です。踊ることで皆さんに何かを届けられたら、と思います。直前には全幕の『ドン・キホーテ』公演もあるので、先輩方からもたくさん吸収したいです。

怪我をしたことで自分との向きあい方が変わりました。バレエ人生は短いからこそ、一瞬一瞬を大切に、怪我なく成長し続け、感謝を忘れずに進んでいきたいです。


2023/2024シーズン「DANCE to the Future: Young NBJ GALA」

2023年11月25日(土) ~ 26日(日) 全2回公演
新国立劇場 オペラパレス

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