舞踊芸術監督 吉田都


2022/2023シーズンは私の芸術監督3シーズン目となります。就任直後からコロナ禍とともに歩んでまいりましたが、そんな中でも目指しているところは変わらずひとつです。カンパニーをより良くしていくため、そしてより多くの方にバレエ・ダンスの魅力に触れていただくために物理的な環境整備から公演回数、医療サポート、そして舞台メイクに至るまで様々な方面で改革を行ってきていますが、どれも巡り巡ってお互いに作用すると日々実感しております。植物がどの栄養が不足しても成長できないように、バレエカンパニーも様々な角度からのアプローチがあって大きく花開くものと思います。

このシーズンでは、4作品の新制作を皆さまにご紹介できることを大変嬉しく思います。ひとつめはシーズンオープニングの全幕『ジゼル』です。英国ロイヤルバレエに長らく在籍し、振付家としても活躍しているアラスター・マリオットを改訂振付に迎え、私自身も制作に関わることにいたしました。世界中のバレエ団で継承されてきたロマンティック・バレエの傑作ですので、伝統をリスペクトしながら新国立劇場バレエ団オリジナルのものを創り上げてまいります。
ふたつめは2021年に上演予定でありました『A Million Kisses to my Skin』。振付はクラシックのステップを基本としていますが、ダンサーたちには殻を破れるようなチャレンジになる作品と思います。振付家から直接、作品のエッセンスを受け取れる機会に、ぜひ多くのことを吸収してもらいたいです。華やかなバランシンの『シンフォニー・イン・C』などとともに、新春を彩るような公演にいたします。
残りの2作品は、5月に「シェイクスピア・ダブルビル」と題してお届けする、『夏の夜の夢』と『マクベス』です。『夏の夜の夢』もまた2022年1月に上演予定でしたが、同じくシェイクスピアを題材とした『マクベス』との二本立てで、非常にベストなタイミングで上演できる運びとなりました。『マクベス』はこれも世界的に活躍されているウィル・タケットに新国立劇場バレエ団のために制作していただく、オリジナルバレエです。まだ一度もバレエとして上演されていない、ジェラルディン・ミュシャが作曲したバレエ音楽「マクベス組曲」に振り付けていただきます。第一線で活躍されている振付家が新作を生み出す機会を、ダンサーが経験できるというのは大きな意味を持ちますから、私もとてもワクワクしております。

レパートリーも楽しみな演目が待っています。
ホリデーシーズンには新国立劇場の冬の定番『くるみ割り人形』。2021~2022年の年末年始にロングランで上演するというチャレンジをいたしましたが、非常に多くのお客様にご来場いただき大盛況に終わりました。ぜひ今後とも、こういった形での観劇スタイルが日本に根付くことを期待しています。
2月の『コッペリア』は何としても近いうちに再演したいと熱望していたプロダクションです。2021年に上演を予定していた際には残念ながら無観客公演という形になりましたが、ライブ配信で沢山の方にご覧いただきました。ぜひフランス的な魅力に溢れたプティの傑作を、改めて皆様にお届けしたいと思います。
シーズンの締めくくりには、2021年に新制作し大好評いただいた『白鳥の湖』を再演します。前回の上演に際し、ダンサーたちの大きな成長、またお客様の静かな、けれども熱い興奮を私自身目の当たりにし、この作品の力を感じました。今回は、エデュケーショナル・プログラムとしての上演とともに、バレエを愛する皆様にはもちろん、まだバレエには出会ったことのない方にもこの『白鳥の湖』の魅力をお伝えできればと願っています。

ダンス公演では、新国立劇場バレエ団の違った魅力をお楽しみいただける公演と日本の洋舞の原点を振り返る企画の3本が並びました。11月には、平山素子さんの『春の祭典』と新作『半獣神の午後』を上演します。新国立劇場で生まれ、再演を重ねてきた傑作に加え、男性ダンサーたちが多く活躍する新作に新国立劇場バレエ団ダンサーたちがどのように挑戦するか、どうぞご期待ください。
3月は新国立劇場バレエ団ならではの企画「DANCE to the Future」。新国立劇場バレエ団の中から振付家を育てるプロジェクト「NBJ Choreographic Group」で生まれた作品を上演します。劇場は作品を上演するだけでなく、つくる場所でもありますから、大切に積み重ねていきたいプロジェクトです。
「ダンス・アーカイヴ in JAPAN」は、日本独自の創作舞踊のパイオニアたちの作品を復元上演するシリーズの第4弾です。こちらは5年ぶりの上演となりますが、日本のダンス界においてモダンダンスのスタイルを創りあげて行った振付家たちの作品を現在活躍するダンサーによって再現することは、未来を見据えるという意味でも大切な企画です。

最後に、どなたにとっても困難な状況が続く中、新国立劇場、そしてバレエ団を応援してくださる皆様に深く感謝申し上げます。厳しい状況下にあっても舞台芸術の灯を消さずに歩み続けられてきたのは、皆様のサポートあってのことです。コロナ禍の終息はまだ見通せませんが、新たなシーズンも今できるベストを毎公演積み重ねていきますので、どうぞ劇場へいらしていただけましたら幸甚です。


舞踊芸術監督 吉田都


2022/2023シーズンは私の芸術監督3シーズン目となります。就任直後からコロナ禍とともに歩んでまいりましたが、そんな中でも目指しているところは変わらずひとつです。カンパニーをより良くしていくため、そしてより多くの方にバレエ・ダンスの魅力に触れていただくために物理的な環境整備から公演回数、医療サポート、そして舞台メイクに至るまで様々な方面で改革を行ってきていますが、どれも巡り巡ってお互いに作用すると日々実感しております。植物がどの栄養が不足しても成長できないように、バレエカンパニーも様々な角度からのアプローチがあって大きく花開くものと思います。

このシーズンでは、4作品の新制作を皆さまにご紹介できることを大変嬉しく思います。ひとつめはシーズンオープニングの全幕『ジゼル』です。英国ロイヤルバレエに長らく在籍し、振付家としても活躍しているアラスター・マリオットを改訂振付に迎え、私自身も制作に関わることにいたしました。世界中のバレエ団で継承されてきたロマンティック・バレエの傑作ですので、伝統をリスペクトしながら新国立劇場バレエ団オリジナルのものを創り上げてまいります。
ふたつめは2021年に上演予定でありました『A Million Kisses to my Skin』。振付はクラシックのステップを基本としていますが、ダンサーたちには殻を破れるようなチャレンジになる作品と思います。振付家から直接、作品のエッセンスを受け取れる機会に、ぜひ多くのことを吸収してもらいたいです。華やかなバランシンの『シンフォニー・イン・C』などとともに、新春を彩るような公演にいたします。
残りの2作品は、5月に「シェイクスピア・ダブルビル」と題してお届けする、『夏の夜の夢』と『マクベス』です。『夏の夜の夢』もまた2022年1月に上演予定でしたが、同じくシェイクスピアを題材とした『マクベス』との二本立てで、非常にベストなタイミングで上演できる運びとなりました。『マクベス』はこれも世界的に活躍されているウィル・タケットに新国立劇場バレエ団のために制作していただく、オリジナルバレエです。まだ一度もバレエとして上演されていない、ジェラルディン・ミュシャが作曲したバレエ音楽「マクベス組曲」に振り付けていただきます。第一線で活躍されている振付家が新作を生み出す機会を、ダンサーが経験できるというのは大きな意味を持ちますから、私もとてもワクワクしております。

レパートリーも楽しみな演目が待っています。
ホリデーシーズンには新国立劇場の冬の定番『くるみ割り人形』。2021~2022年の年末年始にロングランで上演するというチャレンジをいたしましたが、非常に多くのお客様にご来場いただき大盛況に終わりました。ぜひ今後とも、こういった形での観劇スタイルが日本に根付くことを期待しています。
2月の『コッペリア』は何としても近いうちに再演したいと熱望していたプロダクションです。2020年に上演を予定していた際には残念ながら無観客公演という形になりましたが、ライブ配信で沢山の方にご覧いただきました。ぜひフランス的な魅力に溢れたプティの傑作を、改めて皆様にお届けしたいと思います。
シーズンの締めくくりには、2021年に新制作し大好評いただいた『白鳥の湖』を再演します。前回の上演に際し、ダンサーたちの大きな成長、またお客様の静かな、けれども熱い興奮を私自身目の当たりにし、この作品の力を感じました。今回は、エデュケーショナル・プログラムとしての上演とともに、バレエを愛する皆様にはもちろん、まだバレエには出会ったことのない方にもこの『白鳥の湖』の魅力をお伝えできればと願っています。

ダンス公演では、新国立劇場バレエ団の違った魅力をお楽しみいただける公演と日本の洋舞の原点を振り返る企画の3本が並びました。11月には、平山素子さんの『春の祭典』と新作『半獣神の午後』を上演します。新国立劇場で生まれ、再演を重ねてきた傑作に加え、男性ダンサーたちが多く活躍する新作に新国立劇場バレエ団ダンサーたちがどのように挑戦するか、どうぞご期待ください。
3月は新国立劇場バレエ団ならではの企画「DANCE to the Future」。新国立劇場バレエ団の中から振付家を育てるプロジェクト「NBJ Choreographic Group」で生まれた作品を上演します。劇場は作品を上演するだけでなく、つくる場所でもありますから、大切に積み重ねていきたいプロジェクトです。
「ダンス・アーカイヴ in JAPAN」は、日本独自の創作舞踊のパイオニアたちの作品を復元上演するシリーズの第4弾です。こちらは5年ぶりの上演となりますが、日本のダンス界においてモダンダンスのスタイルを創りあげて行った振付家たちの作品を現在活躍するダンサーによって再現することは、未来を見据えるという意味でも大切な企画です。

最後に、どなたにとっても困難な状況が続く中、新国立劇場、そしてバレエ団を応援してくださる皆様に深く感謝申し上げます。厳しい状況下にあっても舞台芸術の灯を消さずに歩み続けられてきたのは、皆様のサポートあってのことです。コロナ禍の終息はまだ見通せませんが、新たなシーズンも今できるベストを毎公演積み重ねていきますので、どうぞ劇場へいらしていただけましたら幸甚です。

プロフィール

9歳でバレエを習い始め、1983年ローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞受賞。同年、英国ロイヤルバレエ学校に留学。84年、サドラーズウェルズ・ロイヤルバレエ(現バーミンガム・ロイヤルバレエ)へ芸術監督ピーター・ライトに認められて入団。88年にプリンシパル昇格。95年に英国ロイヤルバレエへプリンシパルとして移籍、2010年に退団するまで英国で計22年にわたり最高位プリンシパルを務める。
日本国内では97年の開場記念公演『眠れる森の美女』をはじめ、新国立劇場バレエ公演での99年『ドン・キホーテ』『シンデレラ』、00年『ラ・シルフィード』、04年『ライモンダ』ほか、数多くの公演に主演している。
ローザンヌ国際バレエコンクール審査員を務めるほか、後進の育成にも力を注いでいる。バレリーナとしての功績と共にチャリティ活動を通じた社会貢献が認められ、04年「ユネスコ平和芸術家」に任命される。12年には国連UNHCR協会国連難民親善アーティストに任命。
01年芸術選奨文部科学大臣賞、06年英国最優秀女性ダンサー賞、11年第52回毎日芸術賞など受賞多数。07年に紫綬褒章並びに大英帝国勲章(OBE)受賞、17年文化功労者、19年菊池寛賞。