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2011年2月18日

新国立劇場オペラ研修所Web特集 『「外套」「ジャンニ・スキッキ」に向けて』
〜第3回 11期生女声4人に聞く〜

Q: 作品に対する想いを

上田:プッチーニのオペラを、一本通して演じることにあこがれていました。だから今回、とてもうれしいです。研修所にいるうちに実現するとは思っていなかったので。幸せです。

上田純子木村:私はジャンニ・スキッキで、ラウレッタを歌います。ラウレッタのアリア「私のお父さん」は突出して有名です。カルメンの「ハバネラ」並に有名なアリアでないでしょうか。すべてのオペラアリアの中でも、上位5位に入るくらいじゃないかと思います。その、有名なアリアが、オペラ全体の中ではどういう役割なのかを、お客様に見ていただきたいです。

 :あまりクラシック音楽に詳しくない友人と話をしても「私のお父さん」は知ってるって人が多いよね。

上田:でも、確かに、どういう場面であのアリアが出てくるのか、あんまり知られていないと思う。

木村:オペラの中でのあのアリアというのが、ラウレッタのどういう気持ちを表しているかを知ってほしいです。アリアだけだと、ピュアな女の子が歌っているように聞こえるけど、そうじゃないのよね。ちょっと黒いというか。

上田:よく考えると、歌詞が結構ひどい。

塩崎:さっきまで「小鳥さん、小鳥さん」とか言っていたのに、「言うこときいてくれなきゃ、死んでやる」って言うのには驚かされます。

木村眞理子 木村:「外套」もすごくいい音楽。ジャンニ・スキッキとは対照的な、濃密で、どろっとした音楽に興奮します。

上田:2つのオペラは両極端だから、見ていて楽しいと思います。プッチーニも「『外套』で人を驚かせ、ひきつけ、『ジャンニ・スキッキ』で笑いをとる」と言っていたそうです。もっともだと思うの。

塩崎:プッチーニのオペラには、メゾのいい役があまりありません。そんな中で、「外套」のフルーゴラ役は、プッチーニ最高のメゾ役だと思います。 「外套」の登場人物の中で、実は本名なのは、ミケーレとジョルジェッタ とルイージだけです。他の役はみんなあだ名であったり、「男」とか「女」とかいう抽象名詞です。それで、本名の3人だけがとてもヴィヴィッドで、他の人は曖昧な描かれ方をしているように、私は感じています。その劇的な意味を見出して、舞台上で表現したいです。

上田:「外套」のなかで名前が付いて3人は持っている時制が違うと感じます。ミケーレは昔の思い出に固執していて、ルイージは今生きることで精いっぱい。ジョルジェッタはというと、未来ばかりを夢見ています。両極端な男に挟まれて、その揺れる気持ちの葛藤を表現したいです。身近な人と浮気をするのはいけないと思うけど、正直、ジョルジェッタには、それしか選択がなかったのではないかと。ジョルジェッタはよく「ディフィーチレ(難しい)」とよく口走るのですが、それがキーワードだと思います。一つ一つの「ディフィーチレ」をどのように演じ分けるか。プッチーニの書いた音楽に何が潜んでいるか。すべてはスコアの中に書いてあると思うので、もっと研究しなければと思います。

塩崎めぐみ  :私は比較的軽めのメゾで、いつもはバロックオペラやモーツァルトのズボン役を得意にしていました。だから、プッチーニを歌う機会がくるとは思っていませんでした。今回は大きなチャンスをもらったと思っています。今回演じるフルーゴラとツィータはどちらも自分の実年齢よりも、だいぶ上の設定です。いつものレパートリーの役よりも、年齢差が大きいので、それを埋めていくのが大変です。楽譜を読み込み、たくさん研究をして、役を深めていきたいと思います。演出家のデイヴィッド・エドワーズ先生の手法は、型にはめるんじゃなくて、まず研修生自身に考えさせて、その上で、各自の役の探求を手助けし、上の次元に導いてくださるやり方。私たちを次のステップに連れて行ってくれるのがとてもお上手です。リハーサルでは、いろいろと壁を感じることもあるけど、それを超えていくことで非常に成長できます。

Q:演出家のデイヴィッド・エドワーズさんと指揮者のドミニク・ウィラーさんとは過去の研修所の公演や試演会で共演をしていますが、どんな方々ですか。

堀 万里絵  :私は、1年次の時に、デイヴィッド先生の演出で「ばらの騎士」のオクタヴィアンを演じる機会がありました。実は、研修所に入る前にもやったことがあって、役は理解しているつもりだったのですが、先生のもとでやると、まったく違いました。途中で涙が出て歌えなくなるほど、役に入ることができました。

塩崎:そうね。演者の想像力をすごく大切にしてくれる方です。固定観念に縛るのではなく、想像力をはぐくんでくれる人。研修所でそういう人に出会えて幸せです。今回またご一緒できるのがとても楽しみです。

上田:指揮者のドミニク先生は、私たちを研修生としてみているのではなく、共演する演奏家として見てくださいます。一緒に音楽を作っていこうという意思がとても強い方で、とてもうれしいです。ディスカッションを重ねて、一緒に音楽を作っていく作業ができるのが幸せ。

木村:「オペラ」というものを、とてもよく知っている指揮者だと思います。演技についても、音楽と一体として考えてくださっていて、とてもやりやすいです。「そう演技をするのなら、ちょっと体の向きを変えるだけで指揮が見やすくなるよ」とか、いつも実践的なアドバイスをくださいます。 デイヴィッド先生もドミニク先生も、「オペラが大好き」というのを強く感じます。演出家と指揮者の相性が抜群で、それで作品全体が良くなっていくと思います。

Q:他に、今回の公演の見どころは?

上田:「外套」と「ジャンニ・スキッキ」がどう関連をもって上演されるか、ぜひ楽しみにしてください。2つの違う話をどう絡めるか。面白いですよ。

全員:そうそう(笑)他のどこにもない「外套」と「ジャンニ・スキッキ」になると思います。

塩崎めぐみ
2010年3月「ファルスタッフ」クイックリ夫人役

 

木村眞理子
2010年3月「ファルスタッフ」ナンネッタ役

 

上田純子
2010年3月「ファルスタッフ」アリーチェ役

堀 万里絵
2010年7月 オペラ・ハイライツ【試演会】より
「ドン・カルロ」エボリ公女役

舞台写真:江川誠志

 

上田 純子(ソプラノ・オペラ研修所11期生)
国立音楽大学大学院修了。第38回イタリア声楽コンコルソでソプラノ特賞受賞。第8回東京音楽コンクール声楽部門第1位。オペラ研修所では『ファルスタッフ』アリーチェ役などで出演。栃木県出身。

木村 眞理子 (ソプラノ・オペラ研修所11期生)
大阪音楽大学大学院修了。卒業時に大阪音楽大学最優秀賞受賞。第61回全日本学生音楽コンクール全国大会第3位。オペラ研修所では『ファルスタッフ』ナンネッタ役などで出演。滋賀県 出身。

塩崎 めぐみ(メッゾソプラノ・オペラ研修所11期生)
鳥取大学農学部卒業。武蔵野音楽大学大学院修了。イタリアピアツェンツァにてジョバンニ・パリミエールマスターコースに参加。オペラ研修所では、『ファルスタッフ』クイックリ夫人役などで出演。鳥取県出身。

堀 万里絵(メッゾソプラノ・オペラ研修所11期生)
国立音楽大学卒業。二期会オペラ研修所第51期マスタークラス修了。修了時に優秀賞、奨励賞受賞。第7回藤沢オペラコンクール入選。オペラ研修所では、『ファルスタッフ』メグ役で出演。二期会会員。山形県出身。