 ぬぐい去れぬ家族への郷愁。 過去から逃れた男がたどる<追憶の劇> フランス気鋭の演出家による注目の舞台が登場。
「人は何かに心動かされたくて劇場に来るの」という信念をもつ演出家イリーナ・ブルック。彼女は、テネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』には、その「心を動かす」大きな力が存在しているのだと語ります。 『ガラスの動物園』は劇作家テネシー・ウィリアムズの出世作となり、1945年のブロードウェイの大ヒット・ロングラン以来、数ある彼の戯曲の中でも、世界中の観客から最も愛されてきた作品です。その魅力は演劇界にとどまらず文学作品としても高い評価と人気を誇っています。登場人物は4人。家族を執拗に愛し昔の夢を捨てきれない母アマンダ、内向的な姉ローラ、一家を支える息子のトム、ローラが憧れる青年ジム。舞台は彼らとの生活を回想する、トムの台詞から静かに始まります。このトムは作者自身の投影とも言われ、劇の進行役となって観客に自らの思い出を語りかけていくのです。演出のイリーナは今回の舞台で、トムの年齢を彼が回想している時(中年)の年齢に設定し、更に<思い出の劇>を印象付けます。 イリーナは、現代演劇界の巨匠ピーター・ブルックを実父に持ち、現在ヨーロッパ各国から注目される気鋭の演出家です。今回は実力派揃いの日本人俳優とのコラボレーションに期待が高まります。人物の心理を敏感にすくい取る演出で、美しくノスタルジックな場面が幾重にも重なり、繊細で哀愁漂う追憶の劇に、是非「心動かされて」下さい。 |