ギリシャ悲劇の壮大なスケール、ホフマンスタールの緊密なドラマ、
Ｒ．シュトラウスの濃厚な音楽。
『エレクトラ』への挑戦に強力な布陣で臨みます。

「女たちの運命」がテーマの2004／2005シーズン、２本目の新制作作品は、血塗られた家系アトレウス家の娘エレクトラが盲目的な復讐の情念に燃え、悲願を果たした末に命を絶つ凄惨な復讐劇『エレクトラ』。ソフォクレスのギリシャ悲劇を題材とするドラマは１幕に凝縮され、オペラ史上最大規模といえる分厚いオーケストラとドラマティックなソプラノに支配された音楽が、緊迫、憎悪、恐怖、歓喜、恍惚といっためまぐるしい感情の起伏を雄弁に伝えます。
フロイトに「エレクトラ・コンプレックス」と名付けられたエレクトラの異常なまでの父親への執着を、レーマンは深く心理に踏み込んだ演出で描きます。指揮には、昨年の『フィガロの結婚』で鮮烈な印象を残したシルマーが再登場。バイロイトを出発点にワーグナーとシュトラウスを中心に活躍するセクンデと、近・現代音楽のプリマドンナとして不動の地位を誇るアームストロングのふたりのドラマティック・ソプラノが対峙し、グスタフソン、ブルナーらと濃密なドラマを構築してゆきます。難役ぞろいのため上演困難といわれる『エレクトラ』への挑戦は、常に高く評価されている新国立劇場のシュトラウス上演に、新たな扉を開くこととなるでしょう。

ものがたり