「男たちの運命」をテーマに冒険を続けてきた2003/2004シーズン、締めくくりに『ファルスタッフ』がお目見えします。すべてを経験した男が、微笑みながら超然とその人生の終盤を迎える。ヴェルディとシェイクスピアの遺言ともいえる喜劇が、"オペラの旅"の最高の結末をお約束します。
勇壮な音楽、胸を打つ悲劇でイタリア・オペラの巨匠となった老ヴェルディが生涯最後のオペラに選んだのは、喜劇でした。シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』と『ヘンリー四世』を原作とし、ドラマも音楽も無類の楽しさと深い人生哲学にあふれた傑作です。とりわけ幕切れのアンサンブルは、「世の中すべて冗談だ」と歌うファルスタッフの言葉が、次々に受け継がれ壮大なフーガとなって劇場を包み込む、最大の聴きどころとなっています。
演出には、英国が育てた名演出家ジョナサン・ミラーが新国立劇場初登場。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーやBBCのシェイクスピア・シリーズなど、シェイクスピア作品で特に名高い彼が、豊かなユーモアのセンスと人生経験のすべてを傾けて取り組みます。ヴェルディのエネルギーを若々しく発散させるエッティンガーの指揮に、当代随一のバリトン歌手ヴァイクルをはじめチェルノフ、ヌッッォ、スーザン・アンソニー、ミルチェーワなど人気歌手たちが至芸を競う、贅沢なプロダクションです。どうぞお見逃しなく。
ものがたり
太った老騎士ファルスタッフは、金目当てにフォード夫人アリーチェとページ夫人メグに恋文を出した。まったく同文と気づいた夫人たち、それにファルスタッフに恨みをもつ従者バルドルフォとピストーラ、フォードと医師カイウスは、みんなで彼を懲らしめることに。ファルスタッフをおびき出しさんざんな目にあわせる間にフォードの娘ナンネッタと恋人フェントンの結婚も決まって、大団円となる。
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