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2012年3月2日

『さまよえるオランダ人』(3/8初日)のリハーサル大詰め。
舞台稽古が始まりました。

3月8日に初日を迎える『さまよえるオランダ人』の稽古は、いよいよ大詰めを迎え舞台稽古が始まりました。
眼光鋭く、ニヒルでワイルドなアウトサイダーの魅力溢れるエフゲニー・ニキティンは、スタッフの間で「掛け値なしにかっこいい」といわれるほどのオランダ人です。さらに、漆黒の輝きを放つ歌も素晴らしく、まさに歌役者として抜群の存在感を示しています。対するゼンタのジェニファー・ウィルソンは、世界中のオペラハウスをブリュンヒルデ、イゾルデ、トゥーランドットといったドラマティックな役で席捲している、今まさに上り坂のスターです。ワーグナーの作品の中でもイタリアオペラの匂いを残すこの作品では、輝かしさと厚みを兼ね備えたまさに超弩級の響きで、声を聴く喜びを存分に味わうことができます。周囲を巻き込んでいくゼンタのパワーには惹き付けられずには居られません。子煩悩な父親で、金にもひかれてしまうという人間臭さに満ちたダーラント。これを歌うディオゲネス・ランデスはバイロイト、ハンブルク、ミュンヘンを中心に活躍中です。声はしなやかで柔らく、マッチョな船乗りというよりも誠実で等身大な表現が魅力です。ゼンタを巡ってオランダ人と争うエリックはトミスラフ・ムツェック。イタリアオペラも多く歌っている美しいリリックテノールです。イノセントで純粋さと傷つきやすさを感じさせる役作りはオランダ人とは対照的で、ドラマ全体に一層の深みと広がりを与えています。

ピアノ伴奏での舞台稽古風景

この公演はロシア(オランダ人)、アメリカ(ゼンタ)、ブラジル(ダーラント)、クロアチア(エリック)、チェコ(指揮)、ドイツ(演出)と本当に世界中から才能が結集していますが、もちろん迎える日本側も強力な布陣。
まず、2007年初演時のキャストで、唯一今回も出演するのがゼンタの乳母であるマリーの竹本節子。暗く重苦しい作品の中で、数少ないユーモラスな瞬間を担う重要な役どころです。オランダ人の伝説やゼンタに対する思いなど、複雑な感情もしっかりと伝えてくれます。そして、オペラ全体の幕開けを担う舵手役は、大活躍中の望月哲也。そのさわやかな美声は作品中で清涼剤となると共に、悲劇の深さへの落差を作り出しています。来シーズン出演予定の『魔笛』タミーノへの期待も高まります。
そして忘れてはならないのが、新国立劇場が誇る合唱団です。今回も指揮者・ソリストたちからその素晴らしさに驚きの声があがっています。水夫の合唱、糸紡ぎの合唱など聴かせどころがいっぱいの本作品。力強くかつ精密な響きは、新国立劇場だからこそ味わえる愉しみです。

今夏、同役でバイロイト音楽祭にも出演する
ニキティン(オランダ人)

ドラマティックな役柄を得意とする
ウィルソン(ゼンタ)
普段は優しい笑顔のかわいらしい方

2007年初演時も同役を演じた 
竹本節子(マリー)

来シーズンの『魔笛』タミーノにも期待が高まる 
望月哲也(舵手)

指揮のトマーシュ・ネトピルは、尾高芸術監督が強く望んで、新国立劇場初登場が実現しました。今回ワーグナー初挑戦ながら、細部までビシッと把握した緻密さで全体を引っ張っていきます。荒れ狂う海が音となって立ちあがってくる興奮は聴き逃せません。『ラ・ボエーム』『沈黙』と名演を聴かせてくれた東京交響楽団も、充実したエネルギーを迸らせています。
今回は再演ながら、演出のマティアス・フォン・シュテークマンが参加しています。ワーグナー作品にさまざまなアプローチで取り組んできた彼が、作品自体に正面から立ち向かった正攻法の演出で、その明解な舞台運びは2007年の初演時に大成功を収めています。新国立劇場の舞台機構を活用して、幽霊船の登場シーンなど超自然の世界を目のあたりにさせてくれる装置も見どころ。複雑な動きを音楽に合わせて成し遂げる、技術スタッフの職人技の妙でもあります。
3月8日(木)の初日を、どうぞご期待下さい。

公演情報ページは下記をご参照下さい。
新国立劇場2011/2012シーズンオペラ「さまよえるオランダ人」ダイジェスト動画付き特設サイト

マティアス・フォン・シュテークマン(演出)&ひびのこづえ(衣裳)両氏によるトーク・セッションUSTREAM配信のご案内。
USTREAM配信(2/27実施)「さまよえるオランダ人」トーク・セッション

35歳の若さでベルリン・フィルにデビューしている
チェコの俊英ネトピル(指揮)

舞台上で動きを確認する
ニキティン(左:オランダ人)、シュテークマン(右:演出)

2月24日掲載ニュース
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