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2011年9月30日

バレエ&ダンスの新シーズンが、いよいよ開幕です!
【オープニング特別対談】首藤康之×小野絢子(パート1)

9月30日の「Shakespeare THE SONNETS」、続く10月1日「バレエ・オープニング・ガラ」で、いよいよ新国立劇場バレエ・ダンス公演の新しいシーズンが開幕します。
「Shakespeare THE SONNETS」を踊る首藤康之は本年度の舞踊批評家協会賞を、バレエ団オープニング作品「パゴダの王子」初日を踊る小野絢子は同新人賞を受賞。ともに舞踊界の注目を集める二人に、新シーズン幕開を飾るそれぞれの作品について、語っていただきました。対談は「Shakespeare THE SONNETS」舞台リハーサルを目前に控えた9月25日におこなわれました。
 
 
−首藤さんは、小野さんの舞台を何回かご覧になっているとか。

首藤: 僕は3作品観せていただきました。「白鳥」と「シンデレラ」と、この前の「ロメオとジュリエット」。いつも素敵ですね。この間は8列目で観ました(笑)小野さん、マクミランの作品を踊ってみて、どうでした?
小野: 緊張というよりは、ああいったお芝居のものの方が入っていきやすいです。「白鳥の湖」とかの「古典バレエ」は、もう自分の中でアップアップ…してしまって(笑)
首藤: 自然でしたよね。等身大のジュリエットで。

―最初に小野さんの舞台をごらんになったきっかけは?

首藤: たまたまだったんです。新国立劇場のバレエが観たくて、「白鳥の湖」のチケットを買ったら、小野さんだったんです。すごく素敵なダンサーがいるんだなと思いました。足の使い方がほんと、綺麗で。

―小野さんが初めてオデットを踊ったときですよね。

小野: そうです。
首藤: すごいですね。続々と来年の「マノン」まで、ずっと続きますね。
小野: まだ自分でも吃驚していて、自分の中でも消化しきれていない感じです。
首藤: 「パゴダの王子」はどんな感じで進んでるんですか?
小野: いまビントレーさんはイギリスに帰っていらっしゃるところなので、今まで作ったところをリハーサルしています。例えば首藤さんは、ご自身でも振付けもなさるし、ダンサーとして自分でも表現なさるんですけれど、私たちはそれが別々なので、「まだ分かってないところ」っていう部分があって。そういった部分は自分でも「こうかな?」って考えながら、やってたりします。
首藤: ビントレーさんから、まず何か作品の流れなど説明があるんですか?
小野: 話される時もあるんですけれど、たいていご自身の中でだけ分かっているまま、どんどん進めていかれるので、私たちも割と頭を使います(笑)
首藤: 芸術監督がビントレーさんになって、どう変わりましたか?
小野: 作品の種類がすごく増えています。私は色んな振付家の作品をやれる方が楽しいです。
首藤: 「パゴダ」の音楽はバリ島のガムランを使っていると聞いて、すごく楽しみにしています。先日NHKの番組で10日間バリ島にいってきたんですけど、すごくいい響きですよね。神秘的な感じで。それが「パゴダの王子」とどうつながるのかなと思ってます。
小野: この作品は音楽が難しいです。ビントレーさんは音楽を聴きこんで知っているから、「ここでこうなる」っていうのがはっきりしているんですけれども、私たちは「え?」という感じです。
 
首藤: そうですよね、リズムもカウントも分からなくなって。そういう時って、どうやって消化するんですか?
小野: もう必死に何回も聴いて、、
首藤: だんだん聴き込んでいくと、奥の音が聴こえてくるんですよね。
小野: はい。覚えこむしかないです。首藤さんは作られる時はどうやって?
首藤: 今回の「Sonnets」の場合は、シェイクスピアという大きな主題があるので、まずは「Sonnets」という詩集を題材に。
小野: 105番ですか?
首藤: そう。でも105番だけではなく全部を題材としていて、流れとしては使うんですが、まずストラクチャーと言って台本を少しづつ作っていって、それからそこにキャラクターを付けていって、動きを付けていって…、最後に音楽をつけるという感じです。音楽は最後なんです。古典バレエの場合、まず音楽があってそこに振りをのせていくので、すごくスムーズなんですけれども。
小野: そうですね。
首藤: 動きを作ってから音楽にのせるのは、すごく難しい作業です。無音でずっと動きを作っているのが、最初はすごく難しかったんですけれども、だんだんとやっていると身体同士の対話がすごく分かってきて、メロディーとか音楽に流されなくなって色々な身体の中での発見があるので、今は、この作り方をよくしています。
小野: 二人で振付されるというのも、最初はすごく難しいんじゃないですか?
首藤: そうですね…難しいというよりは、楽しいですね。組み手など新しい発見があります。身体の組み合わせって本当にたくさんあって、それを発見すると、すごく心地いい…なんか新しい血が流れ始めるような感じです。毎日毎日がチェンジの日々だけれども、1日に1分作れればいいなという感じですね(笑)
小野: では本当に、本番になるまで完成しない?
首藤: そうですね、本番が近づいてくると、毎日通してはいるんですけれども、終わった後にまた流れを逆に入れかえてみて、どちらが効果的に見えるのか、色々な角度からお互い動いてみたり、話し合ったりしながら作っています。
小野: 私たちの場合ですと、自分は踊ってるだけでも、前にみてくれる人がいるので、そういった視点は持たなくてもいいんですけれども、作りながら踊りながら、また見ながら全部3つもやらなくてはいけないんですね。
首藤: そうですね。見てくださる方の意見を聞くことも大事ですけれども、一番信じなきゃいけないのは自分たちの中での事なのです。ここが僕もカンパニーにいたときとは全く違う経験で、すごく勉強になっています。
ところで、「パゴダの王子」の音楽はもう先にできているんですか?
小野: はい、音楽はブリテンのものがあるので。クランコ版やマクミラン版と同じものです。
首藤: まったく同じなんですか。
 
小野: でも、ちょっとストーリー自体は変えてあります。例えば一番違うのはマクミラン版ですと主役二人が恋人なんですけれども、私たちは兄弟という設定になっています。
首藤: 時代設定などもきっと違いますよね。
小野: そこはずいぶん違います。最初なんて着物の人たちがいたりして、ずいぶん印象が違う。
首藤: なるほどね、僕も今回シェイクスピアをやるので東洋人が見た異国の作家の作品にどう対処するかっていうのがすごく難しくて。シェイクピアは本当に一つ一つ素敵な美しい言葉を使っているのだけれど、よく読むとすごく生々しかったり、神秘的で謎が多いですよね。その言葉の裏に何が隠されているんだろう。とてもシンプルに見えるんですけれども、実はとてもたくさんの事が隠されていたり。その言葉を自分なりに解明したり、本当はシェイクスピアは何を言いたかったのかということを考えながら作っているんですけれども、本当に読めば読むほど謎が…。

−和服を使った作品は、首藤さんはベジャールさんの作品等で踊られてますよね。

首藤: 打掛けとかも、着るんですか?
小野: 私は着ないんですけれども、着る人もいます。
首藤: 僕たちがベジャールさんの「ザ・カブキ」という忠臣蔵を題材としたバレエをやった時には、まず朝バレエのレッスンの後に、摺り足から着物の袴のはき方など所作振舞いや日本舞踊を習い、その後に今度はバランシンを踊って、それから「カブキ」も踊るという…。とても楽しい経験でした。

−「ザ・カブキ」では再演の時も同じようにされたんですか?

首藤: 再演の度にやりましたね。やはり新しいメンバーが毎年コール・ド・バレエにはいっているので。新国立劇場ではダンサーの入れ替わりは、どのようになっているんですか?
小野: 1年ごとにオーディションがあります。
首藤: そういえば小野さん、プリンシパルになったんですよね。おめでとうございます。(拍手)
小野: ありがとうございます。
首藤: 小野さん自身、まったく新作の全幕バレエはこれまでどういうものを踊られたんですか?
小野: ビントレーさんの「アラジン」。やっぱり一から作っていくものの方がすごく楽しいです。
首藤: 楽しいですよね。すでにある作品はプレッシャーもあるし。でも古典は通っておかなくてはいけない道だと思います。英国人の俳優がずっとシェイクスピアをやっているように、身体のベースになりますから。

−新国立劇場バレエ団はまだオリジナルの作品が少ないのですが、首藤さんは普段どのように新作にアプローチされているのですか

首藤: 振付家のスタイルによってまったく違いますからね。でもベジャールさんやキリアンさんやノイマイヤーさんは基本的に、クラシックバレエがベースにあるので問題はないんですけれども、その後にご一緒したマシュー・ボーンさんやシディ・ラルビ・シェルカウイさんは、ベースがバレエではなくて。それはそれは、体はすごく大変でした。マシュー・ボーンさんのスワン・レイクなんかは、2時間半を素足で全部踊るので、足の裏が初めはボロボロになりました。今は免疫がつきましたけれども(笑)でも、色々ダンスのスタイルを学べるのは楽しいですね。
と言いながらも、古典バレエはすごく好きです。やはり絶対的なベースと美しさがあるので。そのベースを大事にしながら新しいダンスの可能性を少しずつ広げられたらいいなと思っています。身体の可能性ってすごく大きいんだなと、つくづく感じています。今回はとくに、中村恩恵さんと二人で組んでいるので、その可能性が倍に広がるんですよね。だからそういった部分も楽しみながら進んでいきたいなと思っています。

<パート2へ続く>

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