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2011年9月15日

「イル・トロヴァトーレ」マンリーコ役 ヴァルテル・フラッカーロ インタビュー!

2011/2012シーズン開幕公演「イル・トロヴァトーレ」でタイトルロールを歌うのは、世界的なドラマティック・テノールのヴァルテル・フラッカーロ。03年「アイーダ」、08年「トゥーランドット」に続き、待望の再登場となります。稽古の合間を縫って、お話を伺いました。

―東日本大震災の際、フィレンツェ歌劇場日本公演で東京にいらしたそうですね。非常に怖い体験をされたかと思います。今回の来日にあたって、迷われましたか?
いえ、全く迷いはありませんでした。もっと深刻な状況でしたらキャンセルしたかもしれませんが、今の東京は安全だと思いました。日本の建物は丈夫ですしね。

―マンリーコ役は、どのくらい歌われていますか? 
私の歌手デビューは、93年の「ナブッコ」イズマエーレです。当時から先生には「アイーダ」ラダメスなど大きな役を歌うように言われていましたが、自分の直感に従い慎重にキャリアを積んできました。2004年に準備が出来たところで、マンリーコ役を初めて歌いました。その後、シカゴ、ローマ、ジェノヴァ、ロンドン、パドヴァなどでこれまでに60〜70回ほど歌っています。

 
―「イル・トロヴァトーレ」という作品についてどう思われますか?
マンリーコは私にとって大好きな役のひとつです。他のヴェルディの役とも違いますね。まず、メロディーが美しい、そしてストーリーがどんどん発展していきドラマ性が高い作品です。また、歌の叙情性が最高のオペラだと思います。第3幕でマンリーコが歌う「愛しい恋人よ」は叙情性に溢れるアリアですが、そこからわずか2小節で「見よ、恐ろしい炎を」に変わるわけですね。このように、事前に予想できないような形で突然ドラマが変化するのが、このオペラの魅力だと思います。また、4幕のマンリーコは、嫉妬により別人のような悪い人物に変わります。怒りのあまり、レオノーラが自分のために毒を飲んだということにも気が付きません。このあたりのマンリーコの変化を演じるのも面白いですね。
このオペラの真の主役は、マンリーコではなくアズチェーナではないでしょうか。シカゴで指揮者のバルトレッティ氏の講演を聞いて、そのように考えるようになりました。アズチェーナの復讐が、すべての物語を導いていくのです。

―マンリーコの「見よ、恐ろしい炎を」はこのオペラ一番の聴かせどころですね。
マンリーコの狂気ともいえる感情が描かれたアリアですね。半音下げて歌われることもありますが、私は伝統に従って原調でハイCを歌います。実は、楽譜にはハイCは書かれておらずGなのですが、Cに上げるのが慣習で、ヴェルディも認めていたそうです。楽しみにしてください!

―稽古の様子はいかがですか? 
5日前から稽古に参加していますが、やっと時差が取れてきました(笑)。昔からよく知っているヴィテッリ氏、新国立劇場で以前共演した妻屋氏とまた一緒に仕事ができて嬉しいですね。指揮者のリッツォ氏とははじめてですが、才能ある指揮者だと思います。女性2人とは今回はじめてになりますが、とてもいい雰囲気で稽古は進んでいますよ。また、新国立劇場のスタッフがスムーズに物事を進めてくださるので、とても気持よく仕事できています。

―4月には新国立劇場で「オテロ」も歌われます。マンリーコとオテロを比べてみて、どう思われますか?
マンリーコは若者、オテロは成熟した大人という違いはありますが、アズチェーナ、イアーゴという第三者によって動かされるという点では共通しています。声楽的には、ヴェルディ作品はどれも難しいのですが、「トロヴァトーレ」は1、2幕は比較的楽で、3幕は二つの全く違うアリアを続けて歌わなくてはならず、後半が大変ですね。一方、「オテロ」は第1幕の登場の第一声から「自分はこういう声です」と名刺を出すようなもので、それからノンストップで歌い続けるのが難しいところです。二つとも大好きな作品なので、新国立劇場で歌うことができ、嬉しく思っています。

―両方の公演とも楽しみです。ありがとうございました。

 
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