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2011年2月18日

イデビアン・クルー「アレルギー Allergy」 井手茂太インタビュー&メッセージ動画掲載!

2011年3月9日(水)より、新国立劇場小劇場にて開幕する、イデビアン・クルー「アレルギー Allergy」。人気のダンスカンパニー、イデビアン・クルーが、約2年の産休期間(活動休止)を終え、いよいよ始動する。日常生活の何気ない一面を巧みに切り取り、ユニークなダンスに仕上げるイデビアン・クルーの主宰・井手茂太(いでしげひろ)が、イデビアン・クルーと本公演の魅力について、大いに語ってくれました!また、皆様に向けてのメッセージ動画もアップしました。インタビューとあわせてご覧ください!

「アレルギー」リハーサルより

井手茂太(いでしげひろ)

 

・独特な世界観をもつ作風

―先日リハーサルを拝見いたしました。とってもユニークな世界観だなと思ったのですが。

井手 どのように作品を作るかは、いろんな人がいると思うんですが、ぼくはかなり具体的なところからスタートします。ただ、あまりにリアルになり過ぎると 説明になってしまい、お客さんのイメージも湧かなくなってしまうと思うんです。みている人が、「ここはどうなってんのかな、こうなのかな、全然わかんないよな」といった、疑問符(クエスチョン)がたくさん出てくるような、それでいてその状況自体を面白がってもらえるようなものが作れたらいいのかなと

―毎回作品テーマはきっちり決めているんですか。

井手 ある程度の大まかなものはもちろん決めますが、あとは現場次第です。

―キャラクターの設定は細かく決めているんですか?

井手 こちらも大まかなものは。

―「排気口」(08年8月世田谷パブリックシアター)のときはプログラムに人物相関図が載っていましたが?

井手 「排気口」のときは、とにかく人数が多かったんで、なにか役柄を作りたいねってことになって、複雑になってしまったので初めて相関図を作ってみたんです。あの時は昼ドラにインスピレーションを得て、舞台を昼ドラ定番の“旅館”にして、そこに怪しげな駆け落ちの二人が現れて、何か金遣い荒そうな主人がいて…というのをダンスでやろうと。

―でも、昼ドラを再現しているわけではない。

井手 そうですね。再現ではないですね。背景が“旅館”ってだけで。やってることは、もっといろいろと盛りだくさんにやってます。

08年「排気口」より 撮影:青木司

「アレルギー」リハーサルより

 

―動きとか振りがとてもユニークですね。

井手 ダンスって、ダンサーが立って動いたりするだけで、自然とみえてくるものがあると思うんですよ。みているだけでイメージが湧いてくるというか。でも、ただ漠然と動くだけではダメだと思うんです。ぼくの場合は、結構具体的に指示します。例えば、「何をやっても続かなくて、新しい仕事、仕事を変えてもやっぱりダメで」そういう人の気持ちで歩いてね、とか、「でもなんで腹減るんだろう、金もないのに金借りてまで飲んじゃうんだろう。でも毎日眠たくなるんだよな、毎日過ごすんだよな、もう考えても無駄だ」って、最終的にはハッピーな感じでハケていって、とか。

―そこまで具体的に指示されているんですね。

井手 もう、すごい言いますよ。役者に言ってるみたいに。二人のからみがあるとして、「こうやってお互い助け合ってるけど愛じゃないんだよね、お互いバツイチだったね、わかるわかる、離婚の方が大変だよね、それにひきかえ、あいつらはいいよな」って言う目線で二人でこっちみてくれ、とか。でも、それはあくまでダンスの振りとしての指示であって、そういったシーンをやりたいわけではないんです。

―そうですね。場面場面も何かストーリーがありそうにみえて…

井手 結局追っていったら何にもない、みたいな。

―でも、全体的には繋がっている感じもしなくはない。

井手 繋がってないようで、どっかで繋がってる感じ。

―言葉を使ったシーンもありましたが。

井手 ぼくらの場合、「なんで芝居が入るの?」とよく言われるんですが、僕の中では別に“芝居”ではないんです。言葉を発するとか、表情を作るとかも、ひとつのダンスだと思ってます。

・産休(活動休止)を明けてみて

―今回“産休明け第一弾”ですが、リハーサルに入ってみていかがですか?

井手 そうですね、ぼくら仲はいいんだけどプライベートでは積極的には会わないので、久々に集まった最初の1週間はずっと近況報告でしゃべってばっかりいました。ぼくはイデビアンというホームグラウンドで、自分が表現したいものを、みんなでクリエーションしていけるってのがうれしくて、うれしくて、一気に振りが出来ました。

―もともとはどういう経緯で集まったメンバーなんですか?

井手 もともとはダンスの専門学校のクラスメイトの集まりです。今は色んな背景を持ったメンバーが加わって、より個性豊かになりましたけど。結成当時は、「イデビアン」ってジャンルを作ってやろうって思ってました。その頃まだ、“コンテンポラリーダンス”って言葉がなくて、“ポストモダン”とか、“モダンダンス”とかって言われていたんですが、でもぼくらはそこじゃなかったですから。

・「演劇的な」ダンス、「日常生活を切り取る」ダンス

―「演劇的なダンス」といえば、ピナ・バウシュを思い起こしますが、彼女のような内向的なイメージではないですね。

井手 普通、コンテンポラリーダンスって世界に向けてみたいなところが少なからずあると思うんですが、うちってもっと身近なことがターゲットですから、わかりやすいんだと思います。

―例えるならば「あるある」系のダンスという感じですかね。日常生活の動きを切り取るって言うのも、決して概念的なものじゃなく、とても具体的なものなんですよね。どの仕草だってのがすぐ分かるっていうのか。

井手 一歩離れたところから、作り手としての目線ではなく、第三者的にみているからかもしれません。ごく普通の観客、それもどちらかといえば“お芝居”が好きな客層で、決して“踊り通”ではない。それでいて不思議なものをみたい人、「今回は知り合いからチラシもらったから来てみました」みたいなお客さんにもきちんと伝わるように、と思っています。

―そういう意味では、他所のカンパニーでは絶対みられないシチュエーションのダンスが出てきます。例えば「大黒柱」(08年12月川崎市アートセンター)のとき、建物の竣工式かなにかで偉い人が延々とスピーチしていて、大工さんとか参列している人たちがみんな飽きちゃって、眠くなって、居眠りして、っていう場面のダンスとか。

井手 で、みんな鳶職の格好をしている、と。

―でも、まさかそれが音に乗ってダンスになるなんてって思いますよ。だからこそ毎回「次に何を持ってきてくれるんだろう」という期待を抱いてしまうんです。

井手 先が読めないし、怖いもの見たさ、「ここの定食屋汚いけど、入ってみたら意外とおいしかった」みたいなものを目指してるんです。バレエのお客さんなんかは、きっと度胸があると思うんで、是非入って来てほしいですね。


我々の生活している本当にさりげないヒトコマ、みた人には必ず分かる“ある、ある”の世界を、紛れもなく“ダンス”として昇華する井手茂太の手法は、とことんオリジナリティーに溢れた唯一無二のもの。“ダンスって難しいんじゃないかしら…”と思っている人にこそみて欲しい、新しいダンスがそこにあります。百聞は一見にしかず。是非一度体験してください!!


リハーサル風景+井手茂太からのメッセージをどうぞ!
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イデビアン・クルー「アレルギー Allergy」の公演詳細はこちらからどうぞ