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2009年2月17日

「シュート・ザ・クロウ」作家オーウェン・マカファーティからのメッセージ

『シュート・ザ・クロウ』は、“仕事”についての作品にしたいと常々思っていました。

この作品を執筆していた当時、私はタイル貼りの仕事をしていたので、舞台をタイル貼りの世界に設定することは当然といえば当然のなりゆきでした。それならばこれはタイル貼りの世界を描いた作品なのかというとそうではなく、最初に述べたとおり、仕事についての作品です。私はこの作品を通して、仕事に内在する矛盾について考えたいと思ったのです。

世の中には好きでもない仕事に就いている人が大勢います。彼らは何年もの間、毎日足を引きずるようにして職場へ出かけて行き、自分の仕事と、それにどれほど長い時間を割かなければならないかということに対して文句を言い続けるわけです。けれどその仕事がなければ、彼らは何者でもありません。何の役にも立てず、何で人生を満たせばいいのか戸惑い、苦しむことになります。私たちは仕事が嫌いなのに、その仕事がないとどうしたらいいのかわからなくなってしまうのです。また、たいていの人は、仕事のおかげでより良い人生が送れると思い込んで自分を誤魔化しています。そのせいでもっと働かなければ、もっと頑張らなければというプレッシャーを感じてしまうのです。ところが一旦仕事を引退すると、無駄な時間を過ごしてしまったのではないかと思い始めます。仕事に人生を捧げてきたのに、本当に裕福になれる人はほとんどいません。それでも家庭生活を無事送ることができるのは、仕事をするからこそなのです。

以上のようなことを並べたところで、いかにも面白くなさそうなので、『シュート・ザ・クロウ』はコメディーにする必要がありました。お互いに話をしたり、喧嘩をしたりしながら仕事をする男たちのコメディーです。男たちは相手を裏切りながら、誠実さも垣間見せます。結局のところ、私たちが仕事を続けるのは、仕事仲間と一緒に過ごした時間があるからなのかもしれません。

新国立劇場の『シュート・ザ・クロウ』公演をとても楽しみにしています。 
                                                           Owen McCafferty