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2008年10月9日

バレエ「アラジン」スペシャルトーク
ビントレーが語る「アラジン」の魅力

―11月の世界初演が待たれる新国立劇場のバレエ「アラジン」。
去る9月7日、新国立劇場オペラパレスホワイエにて、振付・演出のデヴィッド・ビントレー氏をお招きして、スペシャルトークが行われました。
世界中で愛されてきたこの物語が、バレエとしてどのような舞台になるのか?いまだ謎に包まれた作品の秘密を、ビントレー氏自ら語ってくれました!


●「アラジン」制作のきっかけ・新国立劇場バレエ団を選んだ理由

 再びこの東京で、新国立劇場のすばらしいダンサーたちと仕事ができることを本当にうれしく思います。
 作曲家のカール・デイヴィスと仕事をしたことがあり、彼は私に「聞いてみてくれ」と「アラジン」のCDをくれました。カールはスコティッシュバレエのために、「アラジン」というバレエ作品の曲を作曲していたのですが、スコティッシュバレエでの上演は、大成功というわけには行きませんでした。しかしカール自身は、作った曲に大変誇りを持っていたんです。けれどその当時の私はまったく関心がありませんでした。せっかくもらったCDもしばらくは聞かずにいました。
 ある時、私のバレエ団がツアーをすることになり、車で長時間の移動していた時に、ふとそのCDを聞いてみようと思ったのです。聞いているうちにどんどん興奮していき、マンチェスターに着くとすぐにカールに電話をしました。そのときからずっとこの「アラジン」をバレエにしたいと考えていました。
 全幕バレエを創作するのは、とても大変なことで、準備期間だけでも2、3年はかかります。特に外国で行う場合、自分のカンパニーから離れて、長い時間をすごさなくてはなりません。それは大変なプレッシャーです。
 新国立劇場では「カルミナ・ブラーナ」での経験で、サポート体制が万全であるということが確信できていたので、ここで全幕バレエを提案することに迷いはありませんでした。ダンサーたちと過ごした、素晴らしい時間も忘れられませんでした。

振付・演出 デヴィッド・ビントレー

 

●「アラジンとプリンセス」3組の魅力

 私は作品を振付けるとき、すべてを作りあげてしまうのではなく、ダンサーと一緒に作っていきます。作り上げた役の中に、ダンサーを当てはめるということは一切しません。私は、いつもダンサーに、「もっと自分を出して、前に出てくるように。内面を出して、もっと前に出ろ」ということを要求しています。ダンサーたちには、常に自分を前面に出していてほしいと思っています。
 アラジンはほとんど舞台に出ずっぱりで、技術、エネルギー、演技、特にコミカルな演技ができなければなりません。なおかつアラジンは、パートナリング、サポートが上手でなくてはいけない。というのも、このバレエでは少なくとも3つの大きなパ・ド・ドゥがあるからです。
 アラジンを選ぶにあたり、まったく同じような人を選ぼうとは思いませんでした。体型もコンディションもまったく違うアラジン3人を選んだときに、それにふさわしいプリンセスも同時に決めました。カップルとしてちょうどよい、この二人はうまくいくな、という確信がなくてはいけなかったからです。

●ランプの精・ジーンの選び方

 アラジン同様に重要なジーンですが、私はどうしても踊るランプの精を作りたかった。しかも極端なことをやってみようと思ったんです。どうしてもランプの精は“30フィートの大男”というイメージがあるが、あえてこの逆をいってみようと考えました。たとえば、山本隆之のような背の高いアラジンには、小柄な吉本泰久のジーン、という具合に。吉本は30フィートはないけれども、とてもすばやく動き回るのです。けれど小柄な八幡顕光がアラジンをやるときはそういうわけにはいかない。もう少し背の高いジーンにしようと思い、中村誠を選びました。
 それぞれのキャストの関係というのはそれぞれまったく違うもので、その中で粘土をこね上げるようにひとつひとつの関係を作り上げていく、その過程が非常に興味深く、とても楽しむことができました。皆さんにはぜひ3つのキャストのすべてを観てほしいと思います。

●出席ダンサーの挨拶

―スペシャルトーク当日には、新国立劇場バレエ団からダンサーのみなさんも出席。いつもは寡黙なビントレー氏の口から、「アラジン」の創作の秘話が飛び出すと、感心しながら耳を傾けていました。
スペシャルトークの最後に、出席されたダンサーの方々から、お客様へ挨拶がありました。


本島美和(プリンセス役):ビントレーさんの中から、どんなイメージが出てくるか大変楽しみです。ビントレーさんの世界観をきちんと表現できるように、私たちもがんばりたいと思っています。

八幡顕光(アラジン役):初演で全貌がぜんぜん見えていないので、最終的にステージでどう仕上がっていくのかわくわくしています。僕とパートナーの絢子ちゃんは一番年が若いということもあり、エネルギッシュな踊りをみなさんに見ていただけるように努力していきます。

小野絢子(プリンセス役):ピュアにフレッシュに演じたいと思っています。皆様にお願いがあるんですけども、ビントレーマジック満載の舞台ですので、瞬きの回数は少なめにご覧になってください。見逃してしまいますので。

湯川麻美子(プリンセス役):開場記念以来この劇場で踊らせていただいていて、今回のピュアな10代のプリンセスという役は初めて。大人のイメージが定着しているかとは思いますが(笑)、そのイメージを打ち破って、新しい湯川麻美子をお見せできるようがんばります。

吉本泰久(ジーン役):とにかく世界観とか空気とかいっぱい考えている方なので、そこに沿いながら僕たちがどれだけやっていけるのか。当日観に来てくださった方には、必ずアラジンとプリンセスとともに幸せになる魔法をかけたいと思っていますので、ぜひお越しください。

中村誠(ジーン役):この作品の3時間は、いろんな人との出会いが詰まったものです。それを最終的に背負って皆さんにお見せできるこのダンサーという仕事を誇りに思っています。この舞台を通じて皆さんにいろいろな感動を与えられればと思います。

(左より)本島美和、八幡顕光、小野絢子、デヴィッド・ビントレー
湯川麻美子、吉本泰久、中村誠

 

―ビントレー氏の素敵な人柄と熱意にあふれるトークに、大盛況のうちにイベントは終了しました。
そんなビントレー氏が世界に放つバレエ「アラジン」。観どころ満載、楽しい仕掛け満載のステージを、ぜひお見逃しなく!


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