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2007年10月5日

今秋世界初演!バレエ『牧阿佐美の椿姫』の全貌に迫る
〜そのB:出演者に聞く〜

2007/2008シーズン・バレエの開幕を飾る牧阿佐美の椿姫」の世界初演まであと1カ月あまりとなりました。
振付はもちろん、音楽構成、舞台美術、衣裳など新国立劇場の完全オリジナル版となる「椿姫」。期待の新制作がどのようなものになるのか、様々な角度からご紹介してまいります。

編曲・指揮のエルマノ・フローリオが語る牧阿佐美版「椿姫」の音楽について
舞台美術・衣裳のルイザ・スピナテッリが語る牧阿佐美版「椿姫」の美術について

■マルグリット役・酒井はな に聞く

酒井はな

 

「椿姫」は、いつか踊ることができたらいいなと思っていた作品なので、チャンスをいただいたことに感謝しています。ヴェルディのオペラや原作の小説を通じて感じた私なりのイメージでは、マルグリットはとても気高い女性。彼女の運命は悲しい結末に向かっていきますが、それは彼女が自分に正直に、まっすぐ生きた結果なのだと思います。舞台では、マルグリットが自分自身よりも愛する人のことを大事に思える人間に成長していく過程を演じられたらと思います。結果的に彼女は愛する人のためにつらい道を選ぶことになりますが、そうした選択を素直に、しかも決然とできるマルグリットに、私自身一人の女性としても憧れます。
 リハーサルの前に、今回の作品のために編曲されたベルリオーズの音楽を聴かせていただきましたが、とてもバレエ的で美しい音楽です。ですが音楽に付けられた振りはとても細かく、またリフトもたくさんあります。ダンサーとして、ステップの一つ一つにどう思いを語らせていくか、毎日が挑戦です。相手役の山本隆之さんとは共演を重ねて感覚的に理解しあえるので、この作品でまた一緒に創りあげていくことができるのを楽しみにしています。

 今シーズンで新国立劇場開場10周年。日本に新国立劇場ができた、そのタイミングに居合わせたことをまず感謝しています。オープニングから参加でき、一緒に10年を過ごすことができました。それはとても貴重な年月だと思っています。特に杮落としの「眠れる森の美女」でオーロラ姫を踊らせていただけたことは、私にとって大切な宝物になりました。以来、これまでに出演した作品はどれも思い出深いものばかりですが、なかでも印象的なのは「マノン」です。日本人的な感性では演じることが難しい役で、振付も高度なテクニックを要求されますので、リハーサルはとても厳しく、辛かったです。でもバレエ団全員が苦しみながら新しいものを生み出そうとした、とても素晴らしい経験でした。

「マノン」の舞台より

 

 最初のうちは踊るということは肉体的にも精神的にもこれで精一杯という感じでした。年を重ね、以前教わったことが今になってようやく理解できるということが色々あります。10年たって、やっと身体に通じてきたのかも知れません。まだまだこれからです。今後とも、より良いダンサーを目指して精進したいと思っています。新国立劇場にいらしてくださるお客様にはいつも心から感謝しています。観てくださる方々のためにも、よりクオリティの高い舞台となるよう心をこめて踊ります。「椿姫」ぜひご覧になってください。