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2007年9月12日

今秋世界初演!
バレエ『牧阿佐美の椿姫』の全貌に迫る〜そのA:美術〜

2007/2008シーズン・バレエの開幕を飾る牧阿佐美の椿姫」の世界初演まであと2カ月あまりとなりました。
振付はもちろん、音楽構成、舞台美術、衣裳など新国立劇場の完全オリジナル版となる「椿姫」。期待の新制作がどのようなものになるのか、様々な角度からご紹介してまいります。

■舞台装置・衣裳のルイザ・スピナテッリが語る牧阿佐美版「椿姫」の美術について

ルイザ・スピナテッリ

 

アレクサンドル・デュマ・フィスの小説「椿姫」は、19世紀、ベル・エポック(良き時代)の繁栄を謳歌していたパリが舞台です。デュマが24歳の時に書かれたこの小説は、バレエ、演劇そして、巨匠ヴェルディによって創り出された崇高なるオペラにいたるまで、様々な形式の舞台で上演され、世代を超えた人々に共通する心の中の作品となりました。
このような小説を原作としたバレエの舞台を創るにあたり、表現様式の模索が始まりました。その結果考えついたのは、若き恋人アルマンへの愛により改心をする「娼婦」マルグリットの物語を、モネやマネなどの巨匠による絵や色を用いた印象派時代の絵画的演出によって、華麗で豪華な雰囲気の中で解き明かしていくというものです。

 

原作当時の光景を用い、それをチュールに描いていくことによって、淡くほのかな遠い昔の雰囲気を再現しています。見事な舞台イリュージョンは、観客の皆さんを、はるか遠い想い出の中に、そしてモネの空や芳しい花々が曖昧に映し出される中にかすむ田園風景の中で駆け巡らせます。そして、当時の衣裳に身を包み、絹の衣擦れの音とダイヤモンドの光の屈折の中で踊る舞踏会へといざない、さらには、時に軽やかな、時に荒々しい悲哀の色調に染められたこの物語の終焉の熱情をも共有させてしまいます。
振付はこの愛の情熱を語り、そして絵画的な舞台背景は、あらすじを語る額縁になり、主役の感情が息づき、出会い、愛し合い、そして最後に光と音楽と絵画の永遠の抱擁の中で死にゆく舞台となります。
この夢のようにロマンティックな舞台を実現するためのコラボレーションの機会を新たに与えてくださったことに感謝しています。