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2006年11月25日

オペラ「フィデリオ」フロレスタン役
ステファン・グールド氏にショートインタビュー!!

【フロレスタン】ステファン・グールド

 

Q.来日は2度目だと伺っていますが、前回の来日はいつでしたか?
A.前回日本に来たのは、2001年の同時多発テロが起きた9・11のちょうど一週間後でした。その1週間前にニューヨークからウィーンへ渡り、ミュンヘンにあるバイエルン州立歌劇場の日本ツアーで日本へ来たのです。ズービン・メータ氏の指揮のもと、「トリスタンとイゾルデ」、「フィガロの結婚」、「フィデリオ」といった一連のオペラと、ベートーヴェンの「第九」というプログラムでした。「トリスタンとイゾルデ」のメロート役で出演し、そのほかの演目ではいくつかの役のカヴァーでした。当時は、オーストリアのリンツ歌劇場にいましたが、私はこのツアーでズービン・メータとの共演により、歌手としてのキャリアが動き出し波に乗ってきたと思っています。

Q.来日時、日本の聴衆に対してはどのような印象を持ちましたか?
A.日本の観衆は、オペラについて驚くほど博識が深いと感じました。特にワーグナー作品に関してはとても情熱的で知識も豊富な観衆が多くいらっしゃいます。彼らは音楽をとても真剣に捉えていらっしゃいます。

Q.オペラデビューは「フィデリオ」だったと伺っています。
A.はい、その通りです。2000年1月のことです。当時はオーストリア・リンツ歌劇場のアンサンブルメンバーでした。長い間ミュージカルを歌った後、初めてオペラに戻りました。リンツは、ウィーンからもそう遠くはないところです。優れたアンサンブルでして、運よくオペラでの経験を積む機会を頂きました。

Q.この作品に関してはどう思われますか?
A.ベートーヴェンの「フィデリオ」も、もちろん面白い作品です。今、日本ではドイツ語のオペラ自体がとても人気がありますね。
この作品は、古典派からロマン派への橋渡しとも言える作品で、後の作曲家たちへの影響も多大です。ワーグナーや、初めて音楽よりもドラマを重要視したヴェルディには、明らかにベートーヴェンの影響があったといえるでしょう。しかし、ベートーヴェンはオペラの作曲は難しいと考えていました。「フィデリオ」に関しても決して満足することがなく、当初は「レオノーレ」という作品でしたが大部分を変更しています。オペラの作曲に力を注ぐことも煩わしく思っていたようですし、交響曲の作曲をより好みました。ベートーヴェンの作曲はとても器楽的ですし、彼としてはドラマの方向性をしっかりコントロールしたかったのです。その器楽的なメロディを書くことと、ドラマのコントロールという点ではとても苦しんだようですね。オペラの中では、特にアンサンブルのメロディで、古典的な声楽を想定した器楽的なメロディが見受けられます。いつもこの2つのバランスに悩み、自ら作曲したものを好むということは一度もなかっただろうと思います。

Q.今リハーサルの真最中ですが、心境は如何ですか?
A.リハーサルはとても順調に進んでいます。スケジュールに関してもよくプランが練られていて、まとまりがありますし、そのおかげで、演技もスムーズに覚えることができました。全ての統制が取れていて、無駄な時間が全くないことに喜んでいます。
そして、合唱団にとても感動しました!!彼らは実に素晴らしく、特にドイツ語の発音は、ドイツの合唱団よりも良いのではと思うほどで、一語一句聞き取ることができるのです。

Q.ではリハーサルは順調と断言してくださるのですね!(笑)
A.ええ、もちろんです!!

Q.マレッリの演出に関してはどう思われますか?
A.私はとても明確な演出だと思います。演出でいつも興味を持つのは、演出がキャラクター形成の発展に貢献しているか、それとも、妨げになっているかという点です。この「フィデリオ」の演出は明解であり、登場人物が別の登場人物をよりはっきりと映し出しています。また、台詞や歌の発声にも良い影響があるので、とても嬉しく思います。それから、舞台セットの作りは、声をよく響かせる舞台デザインですね。生の音の響きはとても良い様です。

 

Q.共演はエヴァ・ヨハンソンさんです。
A.彼女とはドレスデンの劇場にて「さまよえるオランダ人」で共演しました。とても良いバランスだったと思いますし、ヨハンソンさんは経験豊富なプロフェッショナルですので、とても共演しやすい歌手です。舞台上でも物事がスムーズに進みますし、今回も素晴らしいアンサンブルになると確信しています。「フィデリオ」のような、重厚なドイツ作品はどこの劇場でも似たようなキャスティングで何度も何度も出演する傾向にあります。世界中どこにいても…です。例えば、皆さんご存知のトーマス・モーザー、初演のフロレスタンですけれども、多くの演目で、以前モーザーが歌っていた役や先にモーザーが歌った役が廻ってきます。そして、同じような歌手たちと歌い始めるのです。「フィデリオ」は特別な作品ですし、レパートリーとしている歌手は決して多くはありません。ですから、エヴァともこの先も共演する機会が多くなると思います。とても楽しみです。

Q.最後に聴衆へのメッセージをお願いいたします!
A.新国立劇場で歌う機会を得て、とても嬉しく思います。近い将来また出演できることを願っていますし、多くの機会があることを願うばかりです。知識の多いオペラファンの方たちに歌うことは喜びです。芸術的な経験にオープンで、貪欲であり、受容力がある観客に歌うことは、アーティストにとって素晴らしい経験です。ヨーロッパでは、オペラを100回も見ているような観客はそれほど情熱的でもなく、新しい感性で音楽を受け入れることをしないのです。そのような観客は日本では見かけません。日本の観客はたとえ以前に見たことがあるオペラであっても、何か新しい経験を求めて熱心に観劇していると思います。
皆様と劇場でお会いできる事をとても楽しみにしています!




オペラ「フィデリオ」公演情報 公演初日は2006年11月30日(木)18:30開演です。
皆様のご来場をお待ちしております!