「カルミナ・ブラーナ」開幕速報第3弾
「読売新聞」(2005年11月1日夕刊)で絶賛!


〜「読売新聞」(2005年11月1日夕刊)の公演評より〜

評 カルミナ・ブラーナ (新国立劇場バレエ団)
音楽、踊り・・・オルフの世界堪能

撮影・瀬戸秀美

修道院で発見された13世紀の詩集にカール・オルフが作曲した躍動感溢れる世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」。新国立劇場バレエ団の新シーズンは、英国のデヴィッド・ビントレーがこの曲に振り付けたバレエの本邦初演で幕を開けた。
力強い合唱のうねりの中に神聖さと猥雑さが入り混じる曲の世界を、ビントレーは現代的に読み直し、ポップな感覚の振り付けで人間の営みを戯画化した。快楽に目覚め、堕落していく3人の神学生の姿を軸に、多様なスタイルを駆使して主題を浮上させる。
プロローグが印象的だ。黒いミニドレスにハイヒール、目隠しをした運命の女神のソロ(シルヴィア・ヒメネス)に続き、頭上を覆う無数の十字架に抗うかのように男性たちのエネルギッシュな群舞が展開する。シンプルな振り付けが、禁欲の抑圧と解放への憧れを巧みに表している。
神学生役の踊りにダンサーの個性が生きた。グレゴリー・バリノフが表現する初々しい恋とリバーダンス風の踊りが、交差して弾むような高揚感を生んでいる。居酒屋の場面での吉本泰久の緊迫感に満ちたソロは、敏捷な動きをダイナミックにつないで破戒の解放感とスリルを表現。その後段でトーシューズを履いた聖なる白鳥(真忠久美子)が男たちの欲望の餌食となる。
終幕は、売春宿。レビュー風に踊る女性たちに長身の若者(イアン・マッケイ)が取り込まれる。逡巡と転落。アクロバッティックなパ・ド・ドゥ(2人の踊り)は十字の軌跡を描きつつ、男女の情交を印象付ける。圧倒的なコーラスを背景に、無数に増殖した運命の女神が若者たちを踊りの渦へと巻き込んでいく=写真=。運命の掌中で懊悩する人間の姿か。
バリー・ワーズワース指揮の東京フィル、ソリスト陣、合唱も水準が高く、独自の総合芸術を目指したオルフの世界を堪能させた。

舞踊評論家 立木Y子
―6日まで

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