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2005年10月14日

オペラ「セビリアの理髪師」
オペラトークの模様と写真販売のお知らせ

オペラ「セビリアの理髪師」が開幕いたしました。ご観劇がより楽しくなるオペラトークの模様をご紹介いたします。

また、「セビリアの理髪師」でも公演写真の販売をいたします。キャビネ判(約12cm×16cm)のサイズで、1枚300円(税込み)です。ご観劇の記念に、ぜひお求めください。
販売場所:シアターショップ(メインエントランス)

郵送でのお申し込みをご希望の方は、お申し込みの写真番号、枚数、送付先、ご連絡先電話番号を明記したメモを同封の上、写真料金と送料を、現金書留にて下記までお送りください。折り返し、お申し込みの写真を郵送いたします。送料分は切手でお送りいただいても構いません。

料金:1枚300円(税込み)
送料:500円(何枚でも)
*確実にお届けするため郵便局のエクスパックを使用します。
     
*写真番号は、新国立劇場ホームページ「公演記録」の「セビリアの理髪師」のページに記載された番号でご指定ください。

お申し込み:〒151-0071 東京都渋谷区本町1-1-1 新国立劇場内 シアターショップ
お問い合わせ:シアターショップ TEL03-3375-0282

■「セビリアの理髪師」公演情報

「セビリアの理髪師」オペラトーク
日時:2005年9月27日(火)7:00開演
会場:オペラ劇場ホワイエ
出演者:ヨーゼフ・E. ケップリンガー(演出)
    ニール・カバレッティ(指揮)
    トーマス・ノヴォラツスキー(オペラ芸術監督)

 

トーク内容(敬称略):

<スピード感のあるコメディとその秘訣>

ノヴォラツスキー:今シーズンのテーマは“英雄たちの運命”ですが、この「セビリアの理髪師」では、英雄たちのコミカルな面を描いています。ケップリンガーさん、歌だけでも大変なのに、歌い手たちに肉体的にもハードな要求をされています。とてもスピード感のあるコメディですが、そのポイントは何でしょうか。

ケップリンガー:タイミングを把握していることです。技術を習得し、自然な演技で見せることです。実はこれは難しいことです。この作品では、音楽は単に美しい歌を聞かせるだけではなく、このドタバタコメディのストーリーを語っていくのにも役立っています。歌い手たちは、リズムに乗って、肉体的な面も含め、自由に表現することが重要になってきます。

ノヴォラツスキー:自然に演技すること、特にコメディは単なる思いつきではなく、日常生活を観察して、それを取り入れていく、それが全てを面白くしていると思います。

ケップリンガー:重要なことは、コメディは実はシリアスなものだということです。本人たちには悲劇的でも、見ている側からするととてもこっけいに見える、そういったシチュエーションが面白いのだと思います。

ノヴォラツスキー:その点で、ボーマルシェは天才的だと思います。登場人物はとても真剣だというのに、見ている側からすると、それがとてもこっけいに映るのですよね。この作品は、ボーマルシェによる三部作「セビリアの理髪師」「フィガロの結婚」「罪の母」の一つですが、特にこの作品に政治的なメッセージが込められていると思いますか。

ケップリンガー:三作品のどれもがフランス革命前のコメディです。当時の聴衆である上流階級の人々に受け入れられるためには、コメディで書かざるを得ないという状況でした。今回は、政治的な要素とコメディをうまくまとめ、スペインを舞台にするということを美術デザイナーと話し合い、1960年代後期のフランコ政権時代のスペインに設定しました。
ボーマルシェが言わんとしていることは、表面的には政治的な筋書きかもしれませんが、本質的には、愛というメッセージが込められているということです。身分に関係なく、人間にとって愛というのが重要であるということです。

 

<ロッシーニの音楽の魅力>

カバレッティ:ロッシーニを理解するためには、彼の音楽を愛することが大切です。聞いているうちに、どんどん虜になっていきます。ロッシーニがこの作品を作曲する前に、6作品もの同名のオペラ作品がありました。特に有名なのは、パイジェッロの作曲によるものです。ロッシーニがこの作品の作曲依頼を受けたのは24歳のとき、無名の時代です。すでに有名だったこの作品の作曲を新たに行うことは、大変勇気が要ったことでしょう。
彼は音を使って効果的に語りかける、そんな才能があったと思います。ロッシーニは、クレッシェンドを単なる音楽表現として使っただけではなく、緊張感の高まりを表現するなど、効果的に使った最初の作曲家で、クレッシェンド・ロッシニアーノという名称まで作られました。1幕の終わりには、クレッシェンドを効果的に使い、静かな状態から大きなカオス状態を表現しています。

ノヴォラツスキー:この作品の歴史をたどるのも、とても面白いものがあります。

カバレッティ:18曲のうち3曲は、過激に変更されたと聞いています。序曲も、初日限りで差し替えられ、現在の有名な序曲になりました。これは、他の作品のために作曲されたものでした。現在では考えられませんが、他の作曲家の作品の一部が使われることもありました。
ほとんどの作曲家の作品は、楽譜に書かれたとおりに演奏しようとします。しかし、ロッシーニの作品は、即興的に演奏できる幅を持っています。彼の作品は、声のために曲を書きました。妻はメゾ・ソプラノでした。彼の書いたとおりのコロラトゥーラをそのままに聴くことはできませんが、その時代の歌い手にあったコロラトゥーラを聞くことができるのです。


<即興に代わる魅力>

ノヴォラツスキー ヨーロッパのオペラ、演劇の世界では、規則がありながら、同時に即興も求められます。観客は、どのような即興が披露されるのか、それも楽しみにしていました。最近は、なぜそういう即興を聞かなくなったのでしょうか。

ケップリンガー 即興が際限なく行われるとキリがないということがあるのではないでしょうか。

カバレッティ 私もそう思います。最近はむしろ原曲を追及する方向にあります。

ノヴォラツスキー 今回上演の作品では即興はありません。音楽も演技もどのシーンもきちんと計算され、作られていると思います。見ているだけには、軽快で気楽に演じられているように見えるかもしれませんが、緻密な計算と十分な稽古で作られるものです。
それでは皆様、公演でお会いしましょう。どうぞお楽しみに。