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2005年9月30日

「カルミナ・ブラーナ」
作品をより楽しむためにlecture@
〜「神なき時代の祝祭がはじまる」〜

◆新国立劇場バレエ団「カルミナ・ブラーナ」について


2005/2006シーズンの開幕を飾るのは「カルミナ・ブラーナ」。ドイツの作曲家カール・オルフによる舞台カンタータに、バーミンガム・ロイヤルバレエの芸術監督デヴィッド・ビントレーが振り付けた作品で、1995年に英国で初演された後も絶大な人気を誇るプロダクションです。
日本初演となるこのビントレー振付の「カルミナ・ブラーナ」を山本隆之、湯川麻美子をメインに新国立劇場バレエ団のダンサーたちが日本のバレエ団として初めて踊ります。
ビントレーは、今もっとも注目される振付家の一人で、アシュトンやマクミランを生んだ英国ロイヤルバレエの系譜にあって早くから作品づくりに手を染め、その才能は現在芸術監督を務めるバーミンガム・ロイヤルバレエで次々と開花しました。「アーサー王」「エドワードU世」などの全幕バレエのほかに「ペンギン・カフェ」のようなコミカルな舞台(*実は“人類の滅亡”につながる重いテーマを扱ったとビントレーは語っている)もあり、その内容は多岐にわたっています。この「カルミナ・ブラーナ」は、オルフの音楽の荒々しい高揚感、圧倒的なその迫力とビントレーの現代的演出で英国での初演時にも大きな話題となりました。(*初演時にはX指定の公演だった。日本でのR指定に近いが、日本ほど厳しい規制ではない。初演後は絶大な人気もあって繰り返し上演され、青少年向けの公演としても上演されている)
また「カルミナ・ブラーナ」の歌詞に沿って振付の随所に彼独特のユーモア感覚が散りばめられており、上質なエンターテインメントとしての一面も併せ持った作品です。
オルフ作曲の「カルミナ・ブラーナ」は独唱(複数)と合唱とオーケストラのための長大なカンタータで、1937年フランクフルトで初演され大成功を収めました。新国立劇場公演では、佐藤美枝子(ソプラノ)、ブライアン・アサワ(カウンターテナー)、河野克典(バリトン)といった一流のソリスト歌手と新国立劇場合唱団60名が出演する豪華なプロダクションになります。さらに指揮者はシンフォニー等でも評価の高いバリー・ワーズワース。英国ロイヤルバレエ音楽監督を経て、現在バーミンガム・ロイヤルバレエの音楽監督である彼が今回タクトを振ります。
今回のプロダクションは、バーミンガム・ロイヤルバレエからのゲストダンサー、近年ますます評価が高まっている新国立劇場バレエ団、一流のソリスト歌手、新国立劇場合唱団らが華々しく競演する壮大なものです。こうした大規模な公演は新国立劇場の巨大な舞台機構なくしては実現しない公演でも あります。劇場が生まれた過ぎし日の古代のような、本質的な劇空間が蘇ります。
日本のバレエ団としては初めてレパートリーとなるビントレー作品であり、新国立劇場バレエ団にとっても新たなページを開くことになる作品です。この劇場でしか実現しない公演にどうぞご期待ください。

運命の女神フォルトゥナと神学生3の官能的なパ・ド・ドゥ
バーミンガム・ロイヤルバレエの公演より

 

◆デヴィッド・ビントレー振付「カルミナ・ブラーナ」について

 「カルミナ・ブラーナ」はカール・オルフによるドラマティックで感情を溜め込んだような音楽と相俟ってスリリングでスケールの大きなプロダクションだ、とバーミンガム・ロイヤルバレエの芸術監督デヴィッド・ビントレーは自信を持って語る。ヨーロッパ中世の僧侶が書き残した風刺的な詩に触発されてオルフが作曲した興奮をかきたてられる合唱の力技は、それ本来の意味での祝宴そのものなのだ。ビントレーの息を呑むような振付が見る者に忘れがたい体験を約束してくれている。

<BRB「カルミナ・ブラーナ」公演評>
バーミンガム・ロイヤルバレエ 1997年6月
by Lynette Halewood
(前略)「カルミナ・ブラーナ」 は数シーズン前に初演された当時(ビントレーがBRBの芸術監督に就任して初のシーズンとなる1995年)、批評家たちからこそ賛否両論入り混じった反応を惹き起こしたが、観客にはつねに絶大な人気を誇っている。(中略)
運命の女神フォルトゥナのオープニングが苦悶のうちに終わったあとは、作品は大きく3つの部分で構成される。優しく、そして少しは頼りになるかという風情のデヴィッド・ジャスティンはポニーテールの娘たちを子犬がじゃれあうように追い回す恋模様を展開し、反抗心でむずむずしているロバート・パーカーは悪の世界に身を投じ、そしてYフロントむき出しのパンツ一丁まで脱いだケヴィン・オヘアは赤いドレスの女(最後には勝ち誇ってフォルトゥナの正体を現す)とエロティックにわたりあう。これら全ての場面は、常にこのカンパニーの特徴にもなっている高度なエネルギーと高度なダンサーたちの取り組みで上演された。加えて特筆すべき場面もいくつかあった。筆者はロバート・パーカーと焙られた白鳥(羽を魅惑的に揺らすチェンカ・ウィリアムズ)とがめぐり合う場面が特に気に入っている。(中略)
このバレエ全篇、特ににオヘアとミュラーのかなりアクロバティックなパ・ド・ドゥをみて観客たちはどう思っただろうか、といささか案じてはいた。しかし、観客たちにはこのバレエは好評だった。オペラハウス全体が夢中になっていたのだ。そう、筆者がここ数年ずっと見落としていた周辺領域に数限りない方法があるに違いない・・・・・・・・・・。