『キーン』『美しきものの伝説』合同制作発表


9月7日、『キーン』『美しきものの伝説』合同制作発表が開催されました。

9月7日(火)、当劇場オーケストラリハーサル室にて、1999/2000シーズン演劇の開幕を飾る2作品、『キーン』 『美しきものの伝説』の合同制作発表が開催されました。
その時の演出家、キャストのコメントをご紹介します。

栗山民也(『キーン』演出):
 私は、大学の時にこの作品に出会いました。そのときは、非常に肉厚なそれでいながら作品の中から色んな響きが聞こえてくる作品だと思いました。今回、江守さんと会い、江守さんの台詞をききながら、昔読んだキーンの一つ一つの台詞が蘇ってくるような気がしました。
 サルトルの思想について難しいことはわかりませんが、自らのなかに閉じこもるのではなくて、自分を主体にしてさらに参加していくというような、主体的な生き方というのがサルトルの全体像のように思います。特に、現代日本の社会を見ていると、組織の歯車の中に組み込まれて行くと言う感じの人間が非常に多いように感じます。そういった虚無感のある日本の社会の中で、こういった芝居をやることはとても意味があると思っています。
 あまり難しく考えず、サルトルの思想と娯楽性を一緒にした、祝祭性に富んだ舞台にしたいと思います。

木村光一(『美しきものの伝説』演出):
 この芝居の最後のレクイエムで、「死んだ人たち、目を閉じてはいけないまだ、目を閉じる時期ではない」と言っています。
 過去に生きた人たちのために花を咲かそうという意志、未来に生きる人たちのために、―――自分も含めて、この出演者たち、少なくともぼくらは今―――何かしなくてはいけないのではないか、というようなことが、この作品を今改めてやるということの意味だと思います。
 今の時代は、理想・希望・絶望・狂気の何一つもなく、ただボンヤリ生きている状態。大正時代という閉塞感漂う時代の中で、まるで喜劇のように、展開してゆく人々の悪あがきというのは、未来を知るための悪あがきで、それが非常に滑稽な姿であり、歴史劇の形を借りた喜劇だと思います。歴史劇が喜劇にならざるを得ない状態がこの芝居の中に流れています。
 広場に一本の杭を立てるという思想、希望を忘れてはいけないのではないかということ、これを、特に若い観客に観ていただきたいと思っています。

江守 徹(『キーン』俳優エドマンド・キーン役):
 僕も24歳の時に、初演の『美しきものの伝説』に出演しました。主演の大杉 栄(クロポトキン)をやりたかった覚えがあります。その頃、平幹二郎さんが『狂気と天才(『キーン』)』をやっていました。いろいろな巡り合わせを感じます。
 今、自分が55歳になり、『キーン』を演じることになりました。今年はこの一本しか舞台には出演しないので、死んでもかまわないくらいこの『キーン』に賭けています。
 『キーン』と自分との間にギャップはありません。役と自分の間にギャップがないほど、おもしろいと思います。素のままの自分の上に乗せるおもしろさ。自分も宵越しの金は持たない主義です。唯一、『キーン』とのギャップがあるとすれば、「1、000人の女性と浮き名を流した」点であります。しかし、自分も「熱烈な恋」をしたことはあります。ただ、妻帯者なので、その辺もオーバーラップする事はありませんが……。
 本当は林 隆三さんのやる大杉栄(クロポトキン)役をやりたかったというくやしさをバネにして、『キーン』にかけたいと思います。
 ギャフンといわせてみせます。

峰さを理(『キーン』デンマーク大使夫人 エレナ役):
 貴族の女性の役なので、たっぷり貴族階級に浸ってやりたいと思います。

渡辺 梓(『キーン』女優志願のアンナ役):
 役どころがまだつかめず悩んでいたが、江守さんのパワーに引き込まれ、吸い込まれながら、毎日やっていけばきっと、答えが見つかるだろうと実感ながらの毎日です。

高木 均(『キーン』デンマーク大使 ケーフェルと伯爵役):
 栗山さんと江守さんの創った本は、とてもおもしろい現代劇です。ご期待ください。

林 隆三(『美しきものの伝説』クロポトキン(大杉栄)役):
 大杉 栄という人物と、自分とのギャップをどう埋めて行くかとまどっていますが、楽しみでもあります。
 大杉 栄のように過激に燃えた経験はないが、自分の演じる、大杉の恋の部分については、共感できる部分があります。実際自分がそうでなくても、自分に正直であるところ、あまりまわりにとらわれないところは共感しています。

三田和代(『美しきものの伝説』野枝(伊藤野枝)役):
 『美しきものの伝説』をこのキャストでできるなんて、絶対経験できないことだと思います。自分の中からなにが出てくるのか、すごく期待しています。昭和の名作と言われているこの作品を観た事はないが、素手でぶつかって行きたい。お客様が興奮して帰って頂けるようにがんばりたいと思います。

久野綾希子(『美しきものの伝説』モナリザ(平塚らいてう)役):
 伝説的と言われる舞台に声をかけて頂きうれしく思っています。出演者の皆さんはそれぞれに強い思いを持った方々ばかりです。この中で一緒にやれることも大変うれしく、一生懸命がんばりたいと思います。

佐藤 慶(『美しきものの伝説』先生(島村抱月)役):
 抱月先生のセリフで、「俳優にも素顔がある、めったなことでそれを人に見せてはいけない。役者は舞台。素顔をぶら下げて町中を俳諧するものではない」というセリフがあり、大変気に入っています。
 今日は素顔でここに来ているので、なにも申し上げることはございません。

すまけい(『美しきものの伝説』四分六(社会主義運動家 堺利彦)役:
 昔、宮本研さんと飲んだくれていた頃があり、格別の思いがあります。皆さんと一緒に仕事できることを誇りに思っています。

中野誠也(『美しきものの伝説』ルパシカ(小山内薫)役):
 ずっと一緒にできたらいいな、と思っていました。今回、木村演出作品に出演できることを幸せに思っています。このメンバーでできることを誇りに思っています。

また、栗山氏は『美しきものの伝説』に関して、「木村さんは、僕の師匠なので、間違いないと思っています。」と語り、木村氏は「お互い、いい仕事がしたい。が、いい仕事をされると悔しいものです。来年からの芸術監督の仕事にも期待しています。」と語り、お互いの舞台にエールを送っていました。



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