地域招聘公演 オペラ「沈黙」
指揮者・山下一史氏 ショートインタビュー

新国立劇場は、今週二つの演目の初日を迎えます。
2005・2006シーズンオープニング オペラ「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
地域招聘公演 ザ・カレッジ・オペラハウス オペラ「沈黙」です。

本日は、新国立劇場 地域招聘公演の第1作品目となる大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウス オペラ「沈黙」を指揮する山下 一史氏に、稽古前にお話をお伺いいたしました。

〜新国立劇場での公演に向けて、みんなの意気込みを感じています。〜

〜 そして、それぞれの歌手が「役を自分の物」にしています。〜


Q.稽古の状況は如何でしょうか。
A.この作品は2003年にザ・カレッジ・オペラハウスが公演して、高い評価を頂いたプロダクションのレパートリー公演です。現在、9月の東京公演に向けて、稽古が順調に進行しております。

 日本のオペラ作品は、公演の機会が少ないのでレパートリーになりにくいのが現状です。暗譜で歌うだけでも大変なのです。海外の作品と比較して、役をレパートリーにすることが、とても難しいのです。新国立劇場の地域招聘公演として、ザ・カレッジ・オペラハウスのレパートリーから現代・日本作品であるこのオペラを公演します。この作品は、松村禎三先生が13年の歳月を費やされて作曲されたオペラです。稽古を積めば積むほど作曲家の想いを感じます。

キチジロー役で出演する桝 貴志さん以外の出演者は、私も含めて再度の出演です。レパートリーシステムの最大のメリットは「公演と稽古を積み重ねていく」ことです。それがこの公演では出来るのです。いま、「役を自分のものとして、自然に噛み砕いた形」となるように、みんな全力で稽古しています。

 

<指揮者:山下 一史氏>

神が「踏みなさい」と、大きな愛とともに劇場へ降臨したような気がします。


Q.原作は遠藤周作氏の「沈黙」、キリシタン弾圧のお話です。
A.遠藤周作さんはこの原作で、苦しい殉教をした人は聖人に列し、後は切り捨てるという教会の態度に対して疑問を投げかけました。私はクリスチャンなのですが、キリスト教は「人間は、罪深いところから出発している」としています。拷問にかけられて、耐え切れずに踏絵を踏んだ人間は弱い信仰、耐えて踏まなかった人間は強い信仰、と神は峻別なさったのでしょうか。人間の親でさえ出来のよい子も悪い子も愛します。ましてや神は等しく我々を愛して下さっているに違いないのです。人間は、強い人もいれば弱い人もいます。逃げて行った人間を、だれか責めることができるでしょうか。これが遠藤周作さん特有の人間愛であると感じます。

 この作品の最後のシーンで、ロドリゴが神に絶望し「主よ、あなたは本当におられるのか。」と叫んだ後、オーケストラがG♯(ソ#)のユニゾンでクレッシェンドしてディミヌエンドします。この音楽は、神が「踏みなさい」と、大きな愛とともに劇場へ降臨したような気がします。

Q.キチジロー役は、若き期待のバリトン桝 貴志さん(新国立劇場研修所 5期生研修生修了生)です。
A.大阪音楽大学を卒業、新国立劇場研修生を修了した彼が、今回のザ・カレッジ・オペラハウスの公演で新国立劇場の舞台に立つことは、彼にとって凱旋出演といえると思います。とても力がある歌手です。好演を期待しています。

<リハーサル中の桝 貴志さん【右端】>

 そして、オハル役の石橋 栄実さんも素晴らしい演技力と歌唱力です。原作には無い、松村先生が創作された役ですので難しい部分もあると思いますが、見事に演じています。
 また、フェレイラ役の井原 秀人さん、ロドリゴ役の小餅谷 哲男さん、井上筑後守役の田中 勉さんをはじめ、関西を中心に活躍している素晴らしい歌手が出演します。そして、特筆すべきザ・カレッジ・オペラハウス合唱団の素晴らしい合唱と、オペラを愛しピットで演奏することに誇りを持っているザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の演奏です。どうぞ皆さん、オペラ「沈黙」にご期待ください。

【取材協力:大阪音楽大学 ザ・カレッジ・オペラハウス】

■「沈黙」 <2005年9月16日(金)・18日(土) 2回公演>

チケットのお申し込み:新国立劇場ボックスオフィス 03−5352−9999



■「ニュルンベルクのマイスタージンガー」公演情報 (2005年9月14日〜10月2日)

チケットのお申し込み:新国立劇場ボックスオフィス 03−5352−9999



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