「サロメ」という、タイトルだけは知っていたのですが、詳しい内容までは分かっていなくて。調べてみて「なんで、私なんだろう?」と驚きました。周りの人にも「今度『サロメ』に出る」というと、「『サロメ』でなんの役をやるの?」と聞かれるんですよね。「……っと、私がサロメ……なんだけど」みたいな(笑)。特に最初にいただいた台本は、新しい翻訳ができる前のもので、言葉も難しくて、なかなかイメージが掴みづらかったんです。でも、つい最近、この「ジ・アトレ」のインタビューで芸術監督の宮田慶子さんが「思春期を迎えた女の子の純粋性を持ったサロメを期待しています」とおっしゃるのを読んで、「そういうことか」とようやく腑に落ちるものを感じました。宮本亜門さんの演出も現代っぽい世界観になるとうかがいましたし、「それならついていけるかも」と、今は小さな希望を見出しつつあります。
「純粋無垢なサロメだからこそ」という説得力が、今回の私に求められていることですよね。でも、そういった物語の大きな流れを見せつつ、さらに彼女の複雑な感情の変化をも分かりやすく伝えなければならないわけですから、これは本当に難しい課題です。新しい台本の現代風で日常的な言葉が、この現実離れした物語をどうつづっていくのかもまだまだ分かりませんし……今は少しでも早く稽古場で、宮本亜門さんと共演する皆さんと顔を合わせ、お互いにこの作品をどう読んでいるのかを聞いたり、話したりしたいなと思っているところです。
舞台は二度目ですが、前回は小劇場での少人数のお芝居。演技に関しても「あまり舞台を意識せず、映像っぽく」という指示をいただいていたんです。でも今回の「サロメ」は劇場のサイズも大きければ、演目も本当に舞台らしいと思えるものですし、大人数が出演する作品でもあります。ですから私としては、今回も全く新たな場所を経験するという気持ちでいます。物語も人も大きく動くなかで、自分はどう立つのか、そこから何が生まれるのか。想像がつかないぶん楽しみでもありますし、ビシバシ指導していただけるようなこともあれば嬉しいですね。それぞれに違う考えを持った人との共同作業では一つひとつの言葉が新鮮に響くでしょうし、そういった場は自分の理解を試す意味でも面白いはずだと思うんです。ひとりで考えて混乱するのも、もういっぱいいっぱいなので(笑)、今は稽古に向けて、敢えていったん頭の中を空にするのもいいかなと考えています。その方がたくさんのことを吸収できそうですから。
インタビュアー◎鈴木理映子(演劇ライター)
『ジ・アトレ』3月号より
自分はどう立ち、そこから何が生まれるのか 想像がつかないぶん楽しみです