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「ウィンズロウ・ボーイ」演出家 鈴木裕美に聞く

 

 Winslow1HP.jpg「ウィンズロウ・ボーイ」の演出家にして、2005年には、自ら「ラティガン祭り」と銘打ち、ラティガン3作品をプロデューサーとして上演したほどテレンス・ラティガンに惚れ込んでいる鈴木裕美に、上演間近となった本作についてたっぷりとインタビューしました。

 

―――いまや伝説となっている「ラティガン祭り」をプロデュースもされましたが、鈴木さんがここまでラティガンに惚れ込んでいるのは何故ですか?

そうですね、ラティガンに限らず、そういう作家の方が好きなのですが、人間というものに対する視線が非常に辛辣だったりシニカルだったりするところと、愛情深いところを両方併せ持っているところが、非常に好きです。

あとはよく申し上げているんですが、"芥川賞"というよりは"直木賞"的な作家であって、お客様や俳優や「演劇」という行為そのものに対する愛に溢れている。細かいことなんですが、例えば1幕の終わりまで出ていて2幕で衣裳が変わっている俳優は2幕初めには出ないようになっている、とか(笑)。また、思想的なことは、作品や人物描写の裏側に隠している品の良さなど、とにかくお客様に楽しんでいっていただきたい、という気持ちに溢れているところが、とっても好きなところです。

 

―――そんなラティガンの書いた「ウィンズロウ・ボーイ」。第一次世界大戦前夜のお話ですね。

そうなんです。勿論そこにある種のメッセージ性はあるんですが、でもさっき申しあげたように、それは登場人物を通して描かれていて、決して直接的ではない。その役が言わないような言葉までメッセージのために言わせてしまったりしない。ラティガンも"役"を信じてるし、"俳優"を信じてる。ですから、役をやることに真摯な「俳優」というものが好きな人、つまり......"一般的な演劇好き" 、なんだそれって感じですが(笑)、そういう方にこそ楽しんでいただけるかなと思っています。

 

―――台本を拝見しましたが、4幕構成で非常に起承転結がはっきりしている、それでいて各幕の中でも最後に向かって段々と盛り上がって行って、「つづく...」というように次の幕に移る、とってもワクワクする内容でした。

はい。演劇を観る喜びに溢れた戯曲だと思っています。家庭の内部で起こる裁判劇で、非常にサスペンスフル。もう単純に面白い。登場人物も全員が、非常に美しいところ――やせがまんをして歯を食いしばって自分の美学を貫くところと、そこに偏らない人間臭い部分の両方を持っているというのも魅力ですね。

 

―――今回、翻訳の小川絵梨子さんとは初顔合わせですか?

そうなんです。小川さんにお願いしたのは......自分がプロデューサーとして、坂手(洋二)さんにやってもらったことがあるので(注:「ラティガン祭り」のオープニング作品は燐光群の坂手洋二による「ウィンズロウ・ボーイ」だった)、その時の言葉をなぞらないようにしたいというのは強くありました。そんな中、小川さんが翻訳なさっていたお芝居を見て、その翻訳がとてもわたしにはピン!ときたんですね。それでお願いしようと。

 

―――実際にやられていかがでしたか?

もう、びっくりするくらい楽しかったです!!実は、ふたりには共通点がとっても多くて。ふたりとも劇作はやらない演出家で、劇団に所属しておらず、女性で、しかも女子校育ちなんです(笑)。それでいちいち話が合う、っていうか、全然キャラは違うんですけど、何を大事にしたいかが同じで。それから、翻訳打ち合わせをやっていると、(鈴木)「なんでこうしたの?」 (小川)「だってこういう演出にすると思ったから」 (鈴木)「なるほどね!......いやいや、それは私が決めるんだよ!」みたいなやり取りも楽しくて(笑)。そういう部分もあって、お互いに非常に納得した言葉でこの上演台本を作れています。おかげで、俳優さんたちも言葉に対して不安にならずに演じてくれていると思います。

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いよいよ4月9日に開幕が迫って参りました「ウィンズロウ・ボーイ」。ドラマチックな春のオープニングを飾る作品です。この後上演予定のどの演劇とも趣向が違う、ウェルメイドな演劇作品。皆さまも、ラティガンが描く魅力的な登場人物たちとともに、演劇の愛と素晴らしさに触れる4月を過ごしてみませんか??

 

公演日程 2015年4月9日(木)~26日(日)

公演詳細はこちらから!

 

[撮影:小林由恵]