小川絵梨子 次期演劇芸術監督インタビュー(動画)

2018/2019シーズンより演劇芸術監督に就任する小川絵梨子が、新シーズンについて語ります。


シーズンの指針となる三つの柱を中心に、「こつこつプロジェクト」など新しく始まる企画についてご説明いたします。(3分27秒)




小川絵梨子 演劇次期芸術監督からのメッセージ



2018/2019シーズンより、新国立劇場の演劇芸術監督を務めさせていただきます。頂きました大任に、感謝を持って真摯に臨んで参ります。どうか宜しくお願い申し上げます。

これからの四年間における大きな方針として、三つの柱を考えています。

一つ目は、幅広い観客層に演劇をお届けすること。
国立の劇場として、一人でも多くの方に舞台と出会って頂きたいと思っています。これは新国立劇場が誕生して以来、国立の劇場の責務として引き継がれていることでもあります。任期中、唯一無二の斬新な新作から古典作品まで幅広い作品の上演に加え、子供と大人が楽しめる企画作品や日本各地へのツアー公演なども旺盛に行っていきたいと思います。

二つ目は、演劇システムの実験と開拓。
これには、新シーズンから始まるフルオーディションやディベロップメントが含まれます。
オーディション企画では、すべての配役をオーディションで行います。作り手が作品そのものと純粋に向き合い、そこに必要な俳優と出会うことは、舞台づくりに最も重要なことの一つだと考えます。毎シーズンに一本は、フルオーディションによる公演を予定しておりますが、第一回目となる今回は、鈴木裕美さんが演出として参加して下さいます。
ディべロップメントは、「こつこつプロジェクト」と銘打ち、一年間を通して作品を育てていくプロジェクトです。通常の1、2ヶ月という稽古期間にとらわれず、長いスパンでの創造の過程を経て、作品が体力をつけ鑑賞と批評に耐えうる強度を持った時に上演を行います。作り手の作品への理解と想像力を培い、一人でも多くの観客の方に舞台の豊かさを伝えられる公演を目指します。
第一回は、劇団を持たずフリーで活動されている、大澤遊さん、西悟志さん、西沢栄治さんの三人の演出家の方をお迎えしました。これらの実験と開拓が、地層が幾重にも重なっていくように、少しずつでも積み重なり発展していくことができれば本望です。

三つ目は、横の繋がり。
国内外を問わず、演劇の作り手の方々との交流や連携を積極的にしていきたいと思っています。具体的には、新国立劇場で行う一般の方々に向けてのワークショップや講演などにおいて豊かな経験と知識を持つ演劇団体のご協力を仰ぎ、共同での演劇活動を行いたいと思っています。
また海外の国立劇場との交流や国内外の招聘公演を行う予定です。国や立場は違えど、同じ演劇という世界に住む方々と交流を通して共に学び合い、演劇の発展と社会における有用性を高めることを目指します。

私の芸術監督就任一年目となる2018/2019シーズンでは、稲葉賀恵さん、寺十吾さんのお二人の演出家に、新国立劇場に初めてご登場いただきます。上村聡史さんには、現代の劇作家が翻案するギリシャ悲劇作品をお願いいたしました。また、私自身は、野木萌葱さんにお願いした新作戯曲と、海外戯曲の演出を務めさせていただきます。また招聘作品として、名古屋で長年創作活動を行われている天野天街さん率いる少年王者舘にご登場いただけることになりました。

演劇は時代を映す鏡と言う一方、ある時間ある場所に俳優やスタッフがいて物語を語りそこに観客がいる、という形態そのものは有史以来、変わらずにあるものだと認識しております。演劇に携わる一人として、古いものを捨て去るのではなく、発展させながら、新しい創造に挑戦していきたいと思っております。

舞台という豊かな世界を、一人でも多くの皆様に楽しんでいただければ幸いです。



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小川絵梨子 プロフィール



1978年、東京生まれ。2004年、アクターズスタジオ大学院演出部卒業。06~07年、平成17年度文化庁新進芸術家海外派遣制度研修生。10年、サム・シェパード作『今は亡きヘンリー・モス』の翻訳で第3回小田島雄志・翻訳戯曲賞受賞。12年、『12人~奇跡の物語~』『夜の来訪者』『プライド』の演出で第19回読売演劇大賞優秀演出家賞、杉村春子賞受賞。14年『ピローマン』『帰郷-The Homecoming-』『OPUS/作品』の演出で第48回紀伊國屋演劇賞個人賞、第16回千田是也賞、第21回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。最近の演出作品に『スポケーンの左手』『RED』『夜想曲集』『ユビュ王』『死の 舞踏/令嬢ジュリー』『CRIMES OF THE HEART ―心の罪―』『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』『The Beauty Queen of Leenane』など。新国立劇場では『OPUS/作品』『星ノ数ホド』『マリアの首 ―幻に長崎を想う曲―』の演出のほか、『ウィンズロウ・ボーイ』の翻訳も手がけている。18年9月より新国立劇場演劇芸術監督。