『プライムたちの夜』市原えつこスペシャルコラムその2!

2062年はこうなる?!~人とアンドロイドの関係~

メディアアーティスト市原えつこによる
観劇の前に読んでおきたいコラムをお届けします

2017年の文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で「シン・ゴジラ」に次いで入賞を果たし、いま注目されている「デジタルシャーマン・プロジェクト」。そこには奇しくも『プライムたちの夜』に通じるコンセプトが根底に流れていた。
『プライムたちの夜』の世界はもうすぐそこなのか?プロジェクトを率いる市原えつこ氏に語っていただいた。

新たな弔いの萌芽 ~「エンディング産業展」に見る~

私事だが、最近「エンディング産業展」に行ってきた。
エンディング産業展(ENDEX)は葬儀・埋葬・供養に関する商品やサービスの集まる、エンディング産業に関する専門展示会だ。

アナログなイメージの強い葬儀産業だが、昨今は葬儀にも様々な形が生まれてきているらしい。会場ではテクノロジーを導入した新しい弔いの形の数々に目を見張った。

ソフトバンクの家庭用ロボット「Pepper」が導師の代わりを務めるというロボットの読経・説法サービス「Pepper導師」は、浄土宗、真言宗など宗派ごとに異なる経典も読みあげられるという。
故人の身体の一部や遺骨から抽出した炭素から合成したダイヤモンドで作られた美しいジュエリーは日常に溶け込むデザインで、一般的なご婦人が身に付けてもまったく違和感がない。
既存の仏壇をCGを駆使した映像表現に置き換えるサービスでは、読経の実演をされていた住職の方が「旧来の仏壇よりも荘厳な演出で、読経にさらに気合いが入る」と茶目っ気のある感想を述べていた。
インタラクティブに光る、ガラス製の美しい墓石もあった。墓石として気になるのが経年劣化に耐えられるかという点だが、高品質なガラスを使っており耐久性も既存の墓石に劣らないらしい。

「人の死を扱う」という重い仕事に携わる事業者の方々が、明るく創意工夫を凝らしたサービスをたくさん考案されている様子には勇気付けられるものがあった。 それと同時に、弔いを巡る様々な環境の変化の中で、故人を弔う方法というのは変革の時期にあるのだと実感した。

かつての日本社会では、地縁によって家と寺が結びつき、寺が持った墓地に入る家系の葬儀を代々その寺を執り行う、というような地域と寺との密接な関係があった。 しかし高度経済成長期を経て、檀家と寺の関係は希薄になり、弔いの形も多様化していった。これまでのしきたり通りの弔いを望まない人も増えてきているという。
幸か不幸か、現代の感覚に沿った葬儀というのはこれからどんどん更新されていくのだろう。

30年後のエンディング産業展で、『プライムたちの夜』の世界を具現化するようなプロトタイプは生まれているのだろうか? 個人的にはその様子がありありと目に浮かんでしまい、脚本家のジョーダン・ハリソン氏の慧眼にあらためて舌を巻いた。

「大事な人の死後に身代わりをしてくれるアンドロイド」という魅惑的なサーヴィスを現実的な選択肢として突きつけられたとき、あなたはどうするだろうか?

メディアアーティスト/妄想監督 市原えつこ(いちはら・えつこ)

メディアアーティスト、妄想監督。1988年、愛知県生まれ。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web媒体、海外雑誌等、多様なメディアに取り上げられている。主な作品に、大根が艶かしく喘ぐデバイス《セクハラ・インターフェース》、虚構の美女と触れ合えるシステム《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》、家庭用ロボットに死者の痕跡を宿らせ49日間共生できる《デジタルシャーマン・プロジェクト》等がある。 2016年にYahoo! JAPANを退社し独立、現在フリーランス。

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