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「三文オペラ」 読売新聞の劇評をご紹介します


新国立劇場中劇場で上演中の演劇「三文オペラ」。9月24日付の読売新聞夕刊に掲載された劇評をご紹介します!


したたかな女たちに力点

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写真撮影:谷古宇正彦

宮田慶子演劇芸術監督が2期目の任期の幕開けに、ブレヒト作、ワイル作曲の傑作音楽劇を演出した。


19世紀ロンドン。色男の泥棒の頭目メッキース(池内博之=写真右)は物乞いの元締ピーチャムの娘ポリー(ソニン=同左)と結婚する。怒ったピーチャムは破談にするため、警視総監ブラウンに逮捕を要求するが、実は彼はメッキースの親友。困り果てて友を探すと、娼婦ジェニー(島田歌穂)の元に隠れていた。


1928年初演。泥棒と警察のトップが裏で通じ合っているという設定が示す通り、資本主義社会の欺まんを、社会の底辺で生きる人々の人間模様と雑多な歌のぶつかり合いで浮かび上がらせる。


新翻訳を手がけた谷川道子と宮田は、主人公メッキースを動かすしたたかな女たちに力点を置いて描く。個性派ぞろいの役者陣がわい雑な空気を醸す中、ソニンが明るい光を放った。音楽を巧みに捉えて歌い踊ったり、ちょこまか動き回ったりと、まっすぐ人生を切り開く女をキュートに演じた。一方で人生の裏表を知るジェニー役の島田が陰影を加える。「ソロモン・ソング」など苦みのある曲を迫力十分に歌った。パワフルな女たちの間で、池内が演じたメッキースがおとなしく見えたのが惜しい。


階段を両翼に置いただけのシンプルな空間で、宮田は奇をてらわず役者たちに伸び伸びと演じさせた。バンドも当時の流行歌やオペラ風など多彩な曲を調子よく奏でる。原作の持つ風刺性、楽しさが無理なく引き出されていた。


(祐成秀樹)

2014年9月24日 読売新聞 夕刊

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演劇「三文オペラ」は新国立劇場中劇場にて、9月28日(日)までの公演です。

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