演劇芸術監督
宮田慶子

2016/2017シーズンは、海外の同時代作品から、2014年のピュリッツァー賞に輝いた『フリック』で幕を開けます。30代の気鋭の劇作家アニー・ベイカーによる、さびれた映画館を舞台に、変わりゆく社会と疎外されてゆく人々の姿を描いた秀作を、マキノノゾミが演出にあたります。

続いて、11~12月は、いよいよシェイクスピアの中期を代表する『ヘンリー四世』第一部、第二部の連続上演です。『ヘンリー六世』三部作(09年上演)、『リチャード三世』(12年上演)に先立つ『ヘンリー四世』の上演によって、壮大な歴史がさらに大きな流れとなって出現します。演出はもちろん鵜山仁。キャストもスタッフも前作品を引き継ぎ、さらに新たな顔ぶれも加わります。世界的にも例のない「同じ俳優による連続上演」は、作品の骨格を鮮明にすると同時に、時代を造り変えていく人間ドラマをあざやかに描き出します。

3~5月はシリーズ「かさなる視点-日本戯曲の力-」と題して、昭和30年代に発表された三つの日本の戯曲に、気鋭の演出家三人が挑みます。

昭和31年に発表された「もはや戦後ではない」が流行語にもなり、まさに高度経済成長に日本が突入していった昭和30年代――。急激な時代の流れの中で、故意に、また無自覚に歴史の中に埋められ、歪められていくものたちへの劇作家たちの鋭い視点が、それぞれの作品の中に色濃く息づいています。

現代への第一歩を踏み出したあの時代を、三人の演出家の視点によって、新たに構築していきます。3月は、三島由紀夫・作『白蟻の巣』(昭和31年)に新国立劇場初登場の谷賢一が演出にあたります。4月は安部公房・作『城塞』(昭和37年)を、14年の『アルトナの幽閉者』で緻密な舞台を作り上げた上村聡史、そして5月の田中千禾夫『マリアの首』(昭和34年)は、13年『OPUS/作品』、14年『星ノ数ホド』の小川絵梨子が演出します。

6月はシリーズ「JAPAN MEETS…―現代劇の系譜をひもとく―」XIとして、アメリカの庶民を平易な筆致で描いたサローヤンの『君が人生の時』(1939年発表)を宮田演出で上演します。うらぶれた下町の酒場に出入りする人々の、決してうまくは行かない日々の中で、つつましくも夢を抱きながら生きる、人生の滋味を感じさせる作品です。

そして、7月はイギリスの現代劇の歴史を切り開いた、オズボーン・作『怒りをこめてふり返れ』(1956年)が「JAPAN MEETS…」XIIとして、ついに登場します。時代や社会への不満、怒り、苛立ちを熱く抱え込む労働者階級の生活を描いた名作の演出には、俳優として数多く新国立劇場に出演し、演出家としても活躍する千葉哲也があたります。

重量級の作品が勢揃いした演目を、それぞれが独自の視点で描く今シーズンのラインアップをお楽しみ頂きたいと思います。

宮田慶子 プロフィール・演出作品