近代能楽集
『綾の鼓』『弱法師(よろぼし)

  • 2008/2009シーズン
  • 2008/2009 Season Play

    2008/2009シーズン<演劇>オープニング公演
  • 小劇場

能の現代化に成功した三島由紀夫の傑作が
みずみずしい感性で甦る。

2008/2009シーズン開幕は、三島演劇の代表作といわれる『近代能楽集』が登場します。能をもとに翻案されたこの全8編からなる戯曲集は、三島の古典文学への尊敬と挑戦をもって、能の現代化という困難な作業を見事に成功させ、さらに新たなる20世紀文学の傑作を創造したといわれました。またギリシャ劇にも通ずるそのテーマの普遍性から、演劇人たちの創作意欲をかきたて、世界での上演も高い評価を獲得しました。今回はその中から人気の2作品を一挙におおくりいたします。
老人の貴婦人への叶わぬ恋を描いた『綾の鼓』を、五反田団を主宰し今春に岸田國士戯曲賞を受賞、小説でも三島賞、芥川賞候補となった注目の演劇人・前田司郎が演出。『弱法師』は盲目の青年・俊徳の親権裁判が舞台の作品で、桃園会を主宰し新国立劇場上演の『動員挿話』が第13回読売演劇大賞優秀演出家賞に輝き、今年2・3月の再演でも好評を博した深津篤史が演出を手がけます。
出演は、卓越した演技力を持つ十朱幸代、ほか綿引勝彦、多岐川裕美、国広富之ら実力派が揃い、テレビドラマ等でも活躍中の木村了が俊徳に挑み、三島の密度の濃い台詞を俳優陣がどう表現するのか期待が高まります。
みずみずしい感性で、三島作品に新たな風を吹き込むプログラムをどうぞご堪能ください。

ものがたり

『綾の鼓』
法律事務所で働く老小間使・岩吉は、向いのビルの洋裁店を訪れる華子に想いを寄せている。岩吉は恋文を毎日届けてもらうのだが、ある日手紙を読んだ華子の取り巻きたちは、岩吉に音の出ない鼓を渡し、もし窓越しに鼓の音が届けば華子が想いを叶えるという悪戯を思いつき手紙を送る。岩吉は喜び勇んで鼓を打つが、やがて鳴らないとわかると絶望して窓から身を投げる。1週間後の深夜、洋裁店を訪れる華子の前に亡霊となった岩吉が現れ再び鼓を打つ…。

『弱法師』
晩夏。俊徳の親権をめぐり、産みの親と養い親、調停委員の桜間級子の間で裁判がもたれていた。5歳の時、空襲の炎で失明し両親も失った俊徳は川島夫妻に救われ育てられたが、15年後、産みの親の高安夫妻が現れ俊徳を引き取りたいと申し出てきたのだ。話は平行線をたどるが、俊徳は級子にそんな両夫妻を嘲ってみせる。桜間が美しい夕映えに感嘆の声をあげると、俊徳は、炎に目を灼かれた時に見た「この世の終わりの景色」の幻影に襲われるのだった。