2013年12月25日
講座「演劇人サルトル」参加受付中(1/6まで)
月に1回、気軽に劇場に足を運んでいただこうと演劇芸術監督・宮田慶子の企画のもと始まった「マンスリープロジェクト」。新国立劇場主催の演劇公演に関連したトークセッションやリーディング公演、ワークショップなど、多彩なイベントを劇場内各所にて入場料無料で開催しています。
2014年1月は、「アルトナの幽閉者」上演に先立って演劇講座「演劇人サルトル」を開講。大阪芸術大学大学院研究科長にして神戸大学名誉教授である山縣煕氏を講師にお迎えして、「アルトナの幽閉者」で語られる“幽閉”をキーワードに、サルトルの現在性を解説していただきます。
現在、1月17日(金)19:00、18日(土)13:00(各回とも同内容)に劇場5階の情報センターで開催される本講座への参加申し込みを受付中です(1月6日(月)まで)。よりいっそう「アルトナの幽閉者」をお楽しみいただくべく、ぜひご参加ください。
お申し込み、講座の詳細はこちらから。皆様の聴講をお待ちしております。
2013年12月20日
辻 萬長 紙面インタビュー
僕らは純粋に、
このドラマ、
この会話の面白さを
伝えなきゃいけない
辻 萬長
『出口なし』とか『恭しき娼婦』は読んだこともあったけど、この作品は読んでなくて。サルトル全集を買い込んで読みました。翻訳劇をやるときは、訳の違うものをいくつか比べて、参考にしたりもするんです。どっちが正しいとかじゃなく、ちょっとした訳し方の違いから、分かってくることがある。といっても、新しくもらった台本の方が、分かりやすいんですけど。
読んでて難しいなと思ったのはやっぱり、フランツと親父の関係。俺も息子が二人いるから分かるんだけど、親父って息子が心配なんです。だからこの父親にも「厳格」って言葉でカモフラージュされた愛情、過保護、みたいなところがあるんじゃないのかな。そんな関係性を基本に持っていれば、二人の会話もどんどん豊かに膨らんでいく気がします。個人的には、最後に父と息子が対決した後、そろって家を出て、っていう終幕の心理がもう少し掴めるともっと楽しくなれるんだけど……それはまだこれからの作業です。
ただ、ちょっと気になってるのは、この戯曲ってト書きが多過ぎるんだよね(笑)。「と、そこで煙草を消して」なんてことまで書いてある。でもそれにとらわれず、いったん言葉だけを頼りにこの作品を掴む作業はしておこうと思います。フランスの演出家でいいこと言った人がいてね。「戯曲は竹林のようなものだ」って。地上にスッと出ている竹が台詞で、「一見その間が飛躍しているように見えても、地下では必ず繋がっている。どうしてこの台詞の後にこの台詞が出てくるの?なんて疑問が出てきたら、筍のもとを掘ればいい。その作業が面白いんだ」って。まさに、その通りです。
演出の上村さんは、こまつ座の芝居で鵜山(仁)さんの演出助手をやってくれたことがあって。鵜山さんも彼には一目おいて、いろいろ相談しながら物事を進めていたし、僕も信頼しています。彼も「じゃあ、ト書きの通りここで右に」「今度は左にお願いします」なんて言うタイプじゃないと思うしね。「どうなんだよこれ」「そうですね、じゃあ……」「いや、でもね……」なんてやりとりのある状況を皆で作れれば、すごく面白い芝居創りになるんじゃないかなと思います。(岡本)健一とは前にも共演したけど、自分の考えてきたことをまっすぐぶつけてきてくれるし、こっちから投げたものもちゃんと受け止めて、返してくれる。お互いよく分かっているし、なんの心配もしていません。
ナチスを題材にした作品なんていうと、日本のお客さんは、「難しい」「分からない」なんて、ちょっと引いてしまったりもするかもしれない。でも、だからこそ僕らは、まず純粋にこのドラマ、この会話の面白さを伝えなきゃいけないし、「『アルトナの幽閉者』って知らなかったけど、こんな面白いんだね」と思ってもらいたいんですよ。
2013年12月17日
岡本健一 紙面インタビュー
第二次世界大戦後の西ドイツを舞台に、戦争で勢力を増した実業家の父親と、戦争体験のトラウマから自室に引き籠もり続けた青年の対決を描いた、サルトルの『アルトナの幽閉者』。
戦争が社会や個人に残した爪痕、その責任の行方、さらには家族内の愛憎までが加わり、複雑に織りなされた戯曲に、俳優たちはいかに向き合うのだろう。
リアルな感情を伝えられれば、
言葉の洪水も楽しんでいただけるはず
岡本健一
十代の頃はよく、哲学書や精神世界について書かれた本を読み漁っていて、サルトルも読んではいたんですが、戯曲を書いていたことまでは知りませんでした。実際に読んでみると、一つの物事に対して、まるで万華鏡のように、たくさんの表現や捉え方が出てきて。さすが歴史に残る作家だなと改めて気がつかされました。フランツと妹との近親相姦的な関係にもドキドキさせられるし、部屋から出て父親と対面する場面のやりとりもスリリング。だから、一つひとつの言葉の意味や文脈を読み解いて「正解はこうだ」と考えるよりも、怖かったり悲しかったり、ちょっと性的なものを感じ取ったり……その一瞬一瞬で自分が感じたことをそのまま、客席に伝えられればいいのかなと思います。
フランツは大変な経験をし、精神的なバランスを失っている人物ですが、言っていることは案外まともで、全くの狂人というふうには思えません。ユダヤ人たちを助けたかったという思い、その正当性が現実に太刀打ちできなくなってしまったこと、そこから生まれる良心の呵責が、彼を表に出られなくしてしまったんじゃないのかな。そういう意味では、この物語が始まるまでに彼に何があったのか……自分なりにそれをさかのぼり、身体にしみ込ませておくことも重要な作業になりそうです。
もちろん、僕が作り込んだところで、すべてが伝わるわけではないし、何がいちばん痛烈な印象を残すのかはお客さんそれぞれの感じ方によっても違ってくる。ただ、僕自身は、舞台をやるなら、目の見えない人や耳の聞こえない人にも伝わるような芝居をしたいと常々思っているんですよね。これは外国人の演出家と仕事をして学んだことですけど、どんなに台詞回しを工夫したり、表情を変えても真実を持っていなければダメ。逆に、一つひとつの台詞、対話から生まれてくる感情を大事にしていれば、言語の壁なんてなんでもないんです。だから、稽古場で生まれるリアルな感情を、たとえば見えない人には声だけでも、聞こえない人には姿からだけでも伝えられるようにできれば、この膨大な言葉の洪水も楽しんでいただけるんじゃないでしょうか。
『ヘンリー六世』しかり『リチャード三世』しかり、新国立劇場では、学ぶことの多い、知識としても身になる作品ばかりやらせていただいています。自分が演出する場合もそうですが、優れた作家の作品って、やっぱり勉強になるし、楽しい。それこそ、若い頃には背伸びして、メジャーな仕事をやればやるほど、アンダーグラウンド的な匂いのするものや古いものに憧れて、「映画は50年代以前のものじゃないと」なんてよく言っていたものですけど、今ようやく当時の思いに通じる作品に向き合うことができているのかもしれません。そう考えると僕は幸せですよね。この幸運にはちゃんと応えないと。
2013年12月11日
まもなくチケット発売開始!
今週末12月14日(土)は、「アルトナの幽閉者」チケットの発売日です。
期待の演出家3人が、国や時代も異なる劇作家の生み出した世界に挑むシリーズ企画、「Try・Angle -三人の演出家の視点-」の第三弾。第一弾の小川絵梨子演出「OPUS/作品」、第二弾の森新太郎演出「エドワード二世」ともに大好評だっただけに、上村聡史演出の本作にも期待が高まります。
チケットをお求めの際、高齢者割引や学生割引などが適用される方は、新国立劇場ボックスオフィスへお申し込みください。電話03-5352-9999(10時~18時)、劇場1階の窓口(10時~19時)にて、係りの者がご希望日のお席の空き状況をご案内しながら、お席をお取りします。年中無休ですが、12月28日(土)~1月3日(金)の年末年始はお休みをいただきます。
また、特に割引の適用がない方はインターネットでお申込みいただける新国立劇場Webボックスオフィスも便利です(各種手数料をお申込画面でご確認ください。座席表はこちら)。その他、各種プレイガイドでもお取り扱いしています。
なお、公演終了後に出演者や演出家、芸術監督を交えてトークを展開する「新国立シアター・トーク」を3月5日(水)13:00公演の終演後に開催。他日のチケット(半券可)でもご入場いただけますが、同じ日にご観劇なら一日たっぷり舞台の世界に浸れます。
良い席はお早めに。皆様のご来場を、心よりお待ちしています。
2013年12月6日
演出家・上村聡史 紙面インタビュー
新進気鋭の演出家との共同作業を通し、戯曲と観客をつなぐ“演出”の役割と可能性を見つめ直すシリーズ、「Try・Angle-三人の演出家の視点-」。そのラストを飾るのは新国立劇場には初登場となる上村聡史(文学座)による『アルトナの幽閉者』だ。
第二次世界大戦後の西ドイツを舞台に、戦争のトラウマから自らを邸の一室に閉じ込めた青年と、実業家の父らが繰り広げる愛憎劇。「産みの苦しみを味わいたかった」と語る、骨太な作品選びに込められた企みとは―。
インタビュアー:鈴木理映子(演劇ライター)
千年先の人類をも見通した、
悲劇的に見えて実はコミカルな
戦争と個人、家族の愛憎の物語
新国立劇場では、演出助手としてこれまでに4回ほど仕事をしています。ですからここは、文学座に続く「第二の学び舍」。若いうちからいろんな勉強をさせてもらった場所だけに、自分のやりたい作品と劇場のカラーとがとうまくマッチングした舞台にしたいという想いは強くあります。戯曲選びにあたっては大きな視点を持って書かれた作風であること、そして批評性が強い物語であることを第一に考え、迷わずサルトルを取りあげようと決めました。『アルトナの幽閉者』は、戦争と個人といった大きなテーマを持ちながら、同時に家族という小さな共同体の愛憎を描いていて、その振幅のダイナミックさが、とても魅力的でした。戦争をめぐる責任のありか、家庭内の複雑な人間関係……確かに書かれている言葉は難しいし、論理の対立を追うだけではドラマにならない苦しさもある。でも表面上は難しい対話の裏にも実は、主人公・フランツと義妹・ヨハンナの恋の駆け引きがあったりするんです。息詰る対話のやりとりの中に「やっぱり好き」「嫌い」とかっていう感情が顏を出す。「そんな偉そうなこと言っておいて、所詮は個人的な気持ちかよ!」と思わずつっ込みたくなるような人間の愚かさや愛らしさが、時に笑えるしドキドキしちゃいます(笑)。悲劇的に見えながらもコミカルなブールヴァール劇のような質感を持つ戯曲。だからこそ鮮やかに、人間の恐ろしさと滑稽さが見えてもくるんですよね。
幅広いジャンルを横断し、そのたびにさまざまな表情を見せる岡本健一さんは、純心と矛盾を孕んだフランツにぴったりですし、柔らかい口調の中にも芯の強さを感じさせる美波さんも、本当の自分と他者が作り上げるイメージの間でもがく元女優・ヨハンナにぴったりだと思います。そして、大きな父性と、井上ひさし作品でならしたユーモアと軽やかな味わいを併せ持つ辻萬長さん。これだけ理想的なキャストが揃えばきっと、重苦しい中にも滑稽さが覗く、魅力的なアンサンブルができるのではないでしょうか。
この作品はサルトル最後の創作劇で、どこか人生の終わり、死を意識したような感覚を持ってもいます。たとえば、フランツは部屋の中に引き蘢って「30世紀」の人々に向けたメッセージをテープに吹き込んでいます。彼は戦争加害者であると同時に、ナチスに従わざるを得なかった被害者でもありますが、そんな苦悩など、長い歴史や大きな宇宙から見ればほんの小さな点でしかない。それでも彼三千年後に向けて、自分の存在の証を残そうとするんです。こんなふうに単なる政治と個人の対立の物語、人間の苦悩というだけでなく、千年先のまだ見ぬ人類の未来を意識したこの戯曲を上演することに、ひときわ面白さを感じてもいます。宇宙の側、時間の側から見た人間。そんな視点を持ちながら、サルトルならではの味わいを出していければいいですね。
2013年12月4日
ブログ&コラムページをオープンしました!
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これからは定期的に公演に関する最新情報や関連情報を
随時、更新してまいりますので、どうぞお楽しみに!