『イル・カンピエッロ』稽古場たより④西尾友香理
オペラ研修所修了公演E.ヴォルフ=フェッラーリ作曲『イル・カンピエッロ』。
今年の3月で3年間の研修を修了する18期生、4人目にご紹介するのはガスパリ―ナ役の西尾友香理(ソプラノ)です。
国立音楽大学卒業。同大学大学院修了。
オペラ研修所公演では、『こうもり』ロザリンデ役、『フィガロの結婚』伯爵夫人役、
『ジャンニ・スキッキ』ネッラ役、『コジ・ファン・トゥッテ』フィオルディリージ役、
G.ガッツァニーガ『ドン・ジョヴァンニ』ドンナ・エルヴィーラ役で出演。
ANAスカラシップにより、昨年度9月にはミラノ海外研修を経験、今年度3月にはミュンヘン海外研修に出発予定。
平成28年度修了公演W.A.モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」 平成29年度「YOST2017~歌曲と重唱の夕べ~」(撮影:田原一彦)
【今回演じる"ガスパリーナ"について】
当時では、珍しく本が読め、勉強のできる賢い、気取り屋のガスパリーナ。
あえてインテリ風に"正しく"発音しようとする彼女は、家族のようなカンピエッロの住人からもからかわれたり。
でも、そうする彼女には理由がありました。
「皆とは何か違う気がするの。実はわたし、庶民じゃなくて貴族なんじゃないかしら?」
そんな疑問を持ち、本当の自分を求めながら、運命の相手との結婚を夢見ます。
このオペラには、ガスパリーナのアイデンティティの確立というテーマも隠されています。
自分の出生の秘密が明かされた時、自分のあるべき姿を見つけ、愛する人と新たな世界へ踏み出します。
彼女の成長を見守っていただけたら、と思います。
【お客様へひとこと】
ガスパリ―ナは、今まで演じた役の中でも特にユニークなキャラクターです。
ヴェネツィア語、ガスパリ―ナ特有の喋り方、早口等には難しさを感じました。
自由奔放に見えますが、実は理由があって、その理由(出生の秘密)が分かってからは、役がすっと入り込んできました。
私自身、幼少期を過ごしたアメリカを再訪した際に、知らなかった過去の自分と現在の自分が一体化したようで、
すっきりとした気持ちと、温かく嬉しい安堵感を感じたのを覚えています。
その点で、自分の出自を知ったガスパリーナとは共感する部分があり、親しみと愛おしさをおぼえます。
また、見所としては1幕のカバリエーレとの二重唱があります。
2人は互いに、一生懸命分からない外国語を伝えようとしますが、話が噛み合うようで噛み合いません。
彼女の独特のテンポ感に振り回されるのもどこか心地よく、そんな姿も可愛く思えてきます。
茶目っ気があり、演じていてとても楽しい場面です。
三年間の研修を修了する最後の舞台を、お世話になりました方々、見に来てくださるお客様に感謝と愛を込めて、
生き生きとしたガスパリーナを存分に演じたいと思います。
劇場でお会いできるのを楽しみにしております。
稽古の様子
稽古場では、通し稽古が順次行われています。
これまでの稽古の成果が形になってきている反面、浮かび上がってくる新しい課題に研修生たちは日々取り組んでいます。
今回はダブルキャストでの公演です。
3月8日・11日組、3月10日組、それぞれの持つ声を生かしてアンサンブルを作り上げていきます。
オペラ研修所修了公演「『イル・カンピエッロ』稽古場たより」次回の更新は3月2日(金)を予定しております。
本番を1週間後に控えた稽古の様子をお伝えいたします。
ぜひ、ご覧ください!