Storyものがたり
【第1幕】
中世のドイツ。騎士タンホイザーは、禁断の地ヴェーヌスベルクで愛欲の女神ヴェーヌスの虜となっていた。やがてこの歓楽の日々にも飽き、引き止めようとする女神の誘惑を振り切って人間世界に戻る。通りかかった巡礼一行の歌声に心を動かされタンホイザーは贖罪を誓う。そこで狩りに向かうかつての仲間に出会い、「エリーザベトのもとにとどまれ」の一言でヴァルトブルク城へ共に帰って行く。
【第2幕】
ヴァルトブルク城、歌の殿堂の大広間でタンホイザーはエリーザベトとの再会を喜び、歌合戦に参加することとなる。領主ヘルマンからの歌合戦の課題は「愛の本質」を明らかにすること。かつての同僚ヴォルフラムは愛を清らかな"奇跡の泉"にたとえ、他の騎士たちも精神的な愛を讃える歌を歌う。タンホイザーはこれに反論し、愛の本質は官能の愛であると〈ヴェーヌス賛歌〉を歌い上げたため、ヴェーヌスベルクにいたことが人々に露見してしまう。騎士たちはタンホイザーを殺そうとするが、エリーザベトは「信仰の勇気が、この人にも与えられますように」と願う。このとりなしによって領主ヘルマンは、タンホイザーにローマ法王のもとへ贖罪の巡礼に出るよう命じるのだった。
【第3幕】
エリーザベトはタンホイザーの救済を祈っているが、ローマからの巡礼の中に彼の姿はない。エリーザベトは自らの命と引き換えにタンホイザーの救済を聖母に願う。そこに現れたタンホイザーは、ローマで自分だけ許しを与えられなかった様子を語る。自暴自棄になったタンホイザーはヴェーヌスベルクへの誘惑に今一度身を任せようとするが、エリーザベトの死によってその魂は救済される。「エリーザベトよ、わがために祈れ」と叫んで息絶えるタンホイザーに、神の恩寵をたたえる合唱が響く。