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「パルジファル」オペラトークを開催しました

 

ワーグナーの晩年の傑作、舞台神聖祝祭劇「パルジファル」が、ついに新国立劇場に登場します。10月2日(木)の初日に先立ち、公演をより楽しんでいただくためのオペラトークが本日9月23日(火・祝)、オペラパレスホワイエにて開催されました。
 
音楽評論家でワーグナー研究者でもある舩木篤也氏が語る「パルジファル」の音楽の魅力とは舩木氏は開口一番、「パルジファル」のこのなんともいえない美しい音楽を聴くたびに、怖い、奇妙な気持ちになるが、その訳を解き明かしたいと話しました。

  

「パルジファル」のあらすじは、簡単にいうと、中世のスペインで、純潔を旨とする騎士団が聖杯を守っている。しかしその城主アムフォルタスは、謎の美女クンドリーの誘惑に落ちた上、彼女を操る魔法使いのクリングゾルに、自分が持っていた聖槍で腹を刺され、その槍も奪われている。そしてその聖なる槍が、「愚か者」であるパルジファルの手によって本来の持ち主に戻って彼の傷が癒えるまでの物語です。

  

アムフォルタスは儀式の最中に呻いて嘆きます。儀式は聖杯城が生き延びるのに必要な一方、儀式を行うたびにアムフォルタスの傷が痛むのです。美しい音楽なのに、この陶酔する音楽がアムフォルタスをいじめ、苦しめているという良心の呵責、やりきれなさが「パルジファル」を観る一つポイントです。

 

実はクリングゾルは、聖杯城の中に入り信仰に身を捧げることを願っていましたが、純潔でなかった故にティトゥレルから騎士団に入れてもらえませんでした。そこで彼は、高潔を装った騎士団への報復のため、自らは去勢し、誘惑に落ちないようにした上で、男たちに誘惑をしかけ、アムフォルタスもその罠にかけたのです。

クリングゾルも悪だが、誘惑に落ちたアムフォルタスも悪、そして突き詰めれば、純潔な聖杯の世界も悪なのでは? と思わせます。

 

そして、自分の名前をわからず、善悪の別も分からない「正真正銘の愚か者」パルジファルが、クンドリーのくちづけにより成長し、アムフォルタスの傷とキリストの受難を結びつけ、その痛みを悟ることができたということは、ワーグナーは「官能の愛」も否定していないことになる、と舩木氏は語りました。

 

氏のトークの合間には、第一幕の前奏曲にはじまり繰り返し登場する3つの動機「愛餐の動機」「聖杯の動機」「信仰の動機」や、西洋の教会音楽、アムフォルタスの傷のテーマなどが、小埜寺美樹のピアノでわかりやすく紹介されました。

 

後半では、指揮の飯守泰次郎が登場、毎日8時間以上も稽古を積み重ねており、初日を前に大変興奮していると話しました。また、作品については、示導動機がしっかりしている「指環」4部作に比べ、「パルジファル」ではワーグナーは明確な答えを指し示していないのではと思っており、演出家のクプファーも同じ考えであること、結末の解釈などお客様の感覚に委ねたいと思っていると語りました。

  

最後に、今回のアムフォルタス役のカヴァーを務める大沼徹が、第1幕より「Erbarmen! 憐れみ給え」を、クンドリー役のカヴァーを務める池田香織が、第2幕より「Ich sah das Kind 幼子のあなたが...」と、小埜寺美樹のピアノ伴奏で「パルジファル」の聴きどころの一部を披露し、大喝采のうちに終了しました。

 

本オペラトークは下記の配信チャンネルにてお聞き頂くことができます。

配信チャンネル http://www.ustream.tv/channel/nntt-parsifal

「パルジファル」公演は10月2日(木)、5日(日)、8日(水)、11日(土)、14日(火)の5回上演です。

5日(日)、11日(土)がほぼ完売となっておりますが、ほか3回についてはチケットがございますので、お早めにお買い求めください。

 

◎『パルジファル』公演情報はこちら(公演日程、チケット料金、座席表など)

  


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「パルジファル」の魅力を語る舩木篤也氏
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沢山のお客様がいらっしゃいました
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飯守泰次郎新オペラ芸術監督
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大沼 徹(アムフォルタス役カヴァー)
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池田香織(クンドリー役カヴァー)     本公演ではアルトソロとして出演します

 

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終演後に 左より 小埜寺美樹(ピアノ)、大沼 徹、池田香織、舩木篤也氏、飯守芸術監督