2017/2018シーズン 神々の黄昏2016/20172017/2018シーズン 神々の黄昏

INTERVIEW インタビュー 日本人歌手が語る『神々の黄昏』INTERVIEW インタビュー 日本人歌手が語る『神々の黄昏』

世界的なワーグナー歌手が集結する『神々の黄昏』では、日本人歌手の活躍も楽しみ。
ラインの乙女を演じる3人は、『ラインの黄金』でも同役を歌い、『ワルキューレ』ではオルトリンデを歌った増田のり子。新国立劇場のさまざまな演目で活躍する、オペラパレスに欠かせないメゾソプラノ、加納悦子。『ワルキューレ』でロスヴァイセを歌った田村由貴絵。
アルベリヒを演じるのは、“日本のアルベリヒ歌い”のバリトン、島村武男。
4人に『神々の黄昏』への思いをうかがった。
<ジ・アトレ5月号より>

2016年「ワルキューレ」より ©寺司正彦

アルベリヒ 島村武男 飯守監督からどんな要求が来るかとても楽しみアルベリヒ 島村武男 飯守監督からどんな要求が来るかとても楽しみ

アルベリヒは、新国立劇場ではキース・ウォーナー演出で3回、他にも二期会の公演や東京シティ・フィルの演奏会形式で歌っています。これだけの回数を歌っているのは日本では僕だけだという自負があります。
「指環」の物語は、アルベリヒとヴォータンの争いの物語であり、僕はお金と心の物語だと解釈しています。黄金を手に入れたアルベリヒは、黄金、すなわちお金で世界を制することができると考え、一方ヴォータンは世界中を自分の血族にして、心で世界を制しようとしたのです。アルベリヒが黄金に執着するのはそのせいで、だからアルベリヒは息子ハーゲンに「絶対に黄金を失っちゃいけない」と強く言うのです。『神々の黄昏』のこの対話の場面は物語上とても重要だと思います。ここは演出家によって表現が全く異なる場面ですから、今回どうなるのか楽しみです。
ヴォータンの方がよっぽど楽ではと思うくらい、アルベリヒの歌はテクニック的に難しいです。なぜなら、苦痛を表現するために、高音を常にピアニッシモで歌わなければならないからです。普通、高音ならのびのびと明るく歌いますが、アルベリヒはそうではないのです。ドイツ語には「閉める母音」と「開く母音」があって、アルベリヒは「閉める母音」で歌わなければなりません。この母音の響きがアルベリヒのキャラクターを表現するのです。
飯守監督は「指環」のすべてをご存じで、歌手への要求は決して妥協しません。今、僕を指導してくれるひとりです。指揮者から要求が来ると、ものすごく嬉しいですよ。今回、飯守監督からどんな注文が来るか、楽しみにしています。

ヴォークリンデ 増田のり子 3人のアンサンブル ハモったときの美しさはたまりませんヴォークリンデ 増田のり子 3人のアンサンブル ハモったときの美しさはたまりません

『ラインの黄金』に引き続き、『神々の黄昏』でもヴォークリンデを歌わせていただきます。『ラインの黄金』で奪われた黄金が、年月を経て、ついに取り戻せると思うとうれしいですね。また、「指環」のひとりの人物を最初から最後まで演じられることは幸せだと感じています。
ラインの乙女はソロではなく3人で歌いますから、音量のバランス、微妙に異なるピッチやヴィブラートの波を合わせなければなりません。アンサンブルの難しさがありますが、ハモったときは堪らない美しさです。加納悦子さん、田村由貴絵さんは歌唱も演技も素晴らしい実力をお持ちの方々なので、息を合わせて作っていきたいです。
ラインの乙女はジークフリートとの場面に登場しますから、いよいよステファン・グールドさんと一緒に歌うことになります。これまで『ラインの黄金』『ワルキューレ』で素晴らしい声を堪能させていただいたので、ついに同じ場面で掛け合いで歌えると思うと今からワクワクします。
『ラインの黄金』のとき飯守監督は、ラインの乙女3人それぞれに細かなアドバイスを書いた紙をくださったんです。歌詞もすべて手書きで書かれて、そこに注意すべき点を書き込んでくださったその紙は、宝です。監督の指揮は、手の動きだけでなく、気の動きのようなものを感じます。本番の舞台では、監督の作品に対する強い思いを感じますし、私たちもそれに応えるべく、100%の力を出して舞台を作り上げたいと思っています。
『神々の黄昏』は、前三作が積み重ねてきた物語の最後ですから、感動的になると思います。ラインの乙女が黄金を取り戻す最終場面がどんな演出で描かれているのか、本当に楽しみです。

ヴェルグンデ 加納悦子 ライン川への親近感あの中にいるんだな、と想像していますヴェルグンデ 加納悦子 ライン川への親近感あの中にいるんだな、と想像しています

ワーグナー作品は、自分のできる限りで巡りあえた役を歌っています。そんな巡りあいのひとつとして、ヴェルグンデを今回初めて歌います。ワーグナー作品はやはり特殊な存在ですよね。物語は、一般的なテーマではありませんし、人間でないものもたくさん登場する、人知の届かない話のような気がします。もちろん音楽のパワーはものすごいですが、話の内容としてはやはりドイツ人のものという印象を持っています。ラインの乙女も人間ではありませんしね。ただ、私はライン川のほとりのケルンに暮らしていたので、ライン川への親近感はあります。あの水の中にヴェルグンデはいるんだな、ローレライのあたりかしら、と今は思い描いています。
メゾ歌手なら誰しも、ワーグナーを歌うときは必ずヴァルトラウト・マイヤーさんの録音や映像で勉強しますが、今回彼女がいらっしゃるのですよね。マイヤーさんが歌うヴァルトラウテは歌ってみたい役なんです。彼女がどう歌うのか、リハーサルでは彼女に張り付いていようと思っています。
飯守監督の指揮でオペラを歌うのは、実は今回が初めて。バイロイトで学ばれたことを土台に持った、ワーグナーのスペシャリストの正統的な解釈を体験できる貴重な機会だと思っています。
新国立劇場のこれまでの公演で最も印象に残っているのが、昨年12月の『セビリアの理髪師』です。歌手それぞれが素晴らしくプロフェッショナルな仕事をした見事な舞台で、とても楽しくてスカッとしました。『神々の黄昏』もみんながプロフェッショナルな仕事をして素晴らしい舞台になることを期待しています。

フロスヒルデ 田村由貴絵 緊迫のドラマの合い間心和やかにお聴きくださいフロスヒルデ 田村由貴絵 緊迫のドラマの合い間心和やかにお聴きください

『ラインの黄金』ではラインの乙女のヴェルグンデのカヴァーを務めましたので、稽古では舞台上で演じましたが、今度はフロスヒルデをお客様の前で歌うことになり、うれしいですし、頑張らなきゃと身の引き締まる思いです。
指環をめぐる悲劇の中で、ラインの乙女の登場は箸休め的な場面ですよね。お客様が気持ちを落ち着かせられるよう、ストーリーをつなぐ場面を演じる名脇役でありたいと思っています。波が漂うような八分の九拍子の音楽ですから、緊迫のドラマの合い間で心和やかにお聴きいただけるよう歌いたいです。
加納さんとは初めてですが、増田さんとは二期会『コジ・ファン・トゥッテ』で姉妹役を共演しました。あの作品は三度の音程で一緒に動きますが、増田さんとは非常に歌いやすかったです。今回の久しぶりの重唱が楽しみです。
ロスヴァイセを歌った『ワルキューレ』では男性を運ぶ動きが大変に見えたかもしれませんが、体力的には『ラインの黄金』の演出のほうがきついんですよ。傾斜の舞台を滑り、歌うときは途中で止まるのですが、「止まる」ことがなかなか難しくて。靴に滑り止めを付けていただいて、体を斜めにして踏ん張って歌いました(笑)。しかも優雅なポーズでなければならないので、負担のかかる姿勢が多くて、足が筋肉痛になりましたよ。また、床には、黄金が登場する穴があって、そこに向かって手を上げた状態で滑り降りなければならないのが怖かったですね。今回はどのような演出になるのか……。『ラインの黄金』と同じように斜面ならば、夏の間に体を鍛えないと、と密かに思っております(笑)。

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