オペラ芸術監督
飯守泰次郎

芸術監督に着任してから早くも3シーズン目を迎えます。オペラの喜びを多くのお客様と分かち合うために力を尽くし、新国立劇場のピットあるいはホワイエでお客様をお迎えできることは、私にとって大きな喜びです。皆様のオペラに対する愛情とご支援に、深く感謝いたします。

新国立劇場開場20周年を迎える2017年に向け、オペラ史上最大のスケールを持つワーグナーの「ニーベルングの指環」四部作に、3年がかりで取り組んでおります。2015/2016シーズンに上演した序夜『ラインの黄金』をご覧いただいた多くのお客様から、続きを期待する大きな反響をいただき、大変勇気付けられました。2016/2017シーズンは、四部作の2番目の作品にあたる『ワルキューレ』で幕を開け、3番目の作品『ジークフリート』をもって閉幕いたします。いずれも、『ラインの黄金』と同じ、往年の名演出家ゲッツ・フリードリヒのプロダクションで、フィンランド国立歌劇場(ヘルシンキ)の協力による新制作です。四部作を通し、昨秋に素晴らしいローゲを披露した世界最高のヘルデン・テノールであるステファン・グールドが出演しますので、今シーズンは彼のジークムント、そして『ジークフリート』のタイトルロールをお聴きいただけます。『ワルキューレ』のブリュンヒルデはイレーネ・テオリン、フリッカはエレナ・ツィトコーワ、と新国立劇場でも特に人気の高い歌手です。『ワルキューレ』ヴォータンおよび『ジークフリート』さすらい人は、2015/2016シーズンに新国立劇場に初登場するグリア・グリムスレイです。『ジークフリート』のブリュンヒルデは新国立劇場でおなじみの世界的ワーグナー・ソプラノであるリカルダ・メルベート、そして『ラインの黄金』で皆様を魅了した歌手陣が再登場し、世界で最も旬のワーグナー歌手が勢揃いいたします。

今シーズンの3本目の新制作は、ベルカント・オペラの代表作であるドニゼッティの『ルチア』です。世界が注目するコロラトゥーラ・ソプラノの新星、オルガ・ペレチャッコを迎えます。演出は、モンテカルロ歌劇場総監督で演出家としても著名なジャン=ルイ・グリンダです。有名な“狂乱の場”のアリアでは、オリジナル通りのグラスハーモニカで演奏する予定です。

再演演目は、まずプッチーニの名作から『ラ・ボエーム』をお贈りいたします。続いて、イタリア・オペラを代表するロッシーニの喜劇『セビリアの理髪師』をお楽しみいただきます。そして、スペインの激情ほとばしるビゼーの『カルメン』。『蝶々夫人』では、新国立劇場研修所を修了して、これまでも素晴らしい活躍をしている安藤赴美子が、満を持してオペラパレスに主役として登場いたします。ヴェルディの作品からは後期の傑作『オテロ』。さらに、モーツァルトの『フィガロの結婚』では、新国立劇場研修所から世界に羽ばたいた中村恵理がスザンナで実力を披露いたします。

重厚で哲学的なワーグナーの大作2演目と、ベルカントの『ルチア』に代表されるイタリア・オペラを中心にオペラの魅力を満喫していただける名作の数々、というコントラスト鮮やかな2016/2017シーズンの新国立劇場のラインアップをお楽しみいただきたいと思います。ぜひオペラパレスにお越しください。

プロフィール

1940年生。62年桐朋学園短期大学音楽科(指揮科)卒業。61年に藤原歌劇団公演『修道女アンジェリカ』にてデビュー。66年ミトロプーロス国際指揮者コンクール、69年カラヤン国際指揮者コンクールでともに第4位入賞。72年に芸術選奨新人賞とバルセロナのシーズン最高指揮者賞を受賞。72年から76年まで読売日本交響楽団指揮者、70年からバイロイト音楽祭の音楽助手として数々の歴史的公演に加わり、ブレーメン、マンハイム、ハンブルク、レーゲンスブルクの各歌劇場にも指揮者として籍をおいた。エンスヘデ市立歌劇団第一指揮者を経て、79年から95年までエンスヘデ市立音楽院オーケストラ指揮者。93年より98年まで名古屋フィルハーモニー交響楽団常任指揮者。97年より東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団常任指揮者、2012年4月より同団桂冠名誉指揮者。01年から10年まで関西フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者、11年から同団桂冠名誉指揮者。第32回(2000年度)サントリー音楽賞、第54回(2003年度)芸術選奨文部科学大臣賞受賞。04年11月紫綬褒章、08年第43回大阪市市民表彰、10年11月旭日小綬章を受章。12年度文化功労者および日本芸術院賞。14年より日本芸術院会員。第56回(2014年度)毎日芸術賞(音楽部門)受賞。
新国立劇場では、00年『青ひげ公の城』、08年地域招聘公演『ナクソス島のアリアドネ』、12年オペラ研修所公演『フィレンツェの悲劇』『スペインの時』、14年『パルジファル』、15年『さまよえるオランダ人』『ラインの黄金』を指揮している。また16年5・6月には『ローエングリン』、16年10月には『ワルキューレ』、17年6月には『ジークフリート』を指揮する予定。2014年9月より新国立劇場オペラ芸術監督。