シアター・トーク
レポート


『象』新国立シアター・トーク
「日本の不条理劇」


2010年3月6日(土)小劇場
出席者:別役 実
    深津篤史
    鵜山 仁
    大笹吉雄(進行)

イメージを強制しない自由な舞台

大笹:深津さんは別役作品は初めてですか?
深津:初めてです。
大笹:まったく初めて?
深津:まったく初めてです。
大笹:演出なさってどうでしたか。
深津 篤史深津:ほんとうに最初のうちは、どうしよっかなぁって、かなり思ったんですね。お話の時系列であるとか場所性であるとか、っていうものを読み解けば、きっとこうなんだろうと思うんですけど、きっとこうなんだろうと思ってやると、暖簾に腕押しな感じがしちゃって、だったらもう役者さんと一緒に迷っちゃうんだったら迷ったままいこうよと、ゴールは決めなくてはいけないんですけど、迷ったままいこうという感じで、最初はほんとうにもう困ってしまったという感じでした。
大笹:演出のやり方としては、本読みをやって、立ち稽古をやってという正統的なものですか?
深津:基本、正統的だと思います。読み稽古をやって、まあセットがこんなんなので、早めから稽古場でもこのセットでやらせていただいて、リフターとかはさすがに組めないので階段とかでやって、とりあえず、あなたはこのリフターから出てください、このリフターから降りてくださいという、大まかな立ちは指定しましたが、細かいところは、結構みなさん役者さんがライブ感覚が優れた方が多いのでライブでやりましたね。だから、いろんなことがボツになったりイキになったりという感じでした.
大笹:別役さん、ご覧になっての感想というのはいかがですか。
Photo別役:僕はね、かなり気に入っているんですね。いままでの『象』の公演とはかなり違ったニュアンスが、ご覧になった方はおわかりだと思いますが、あのね、感覚的にいうと、開放してくれたという感じです。空間をね、いま深津君がいったように、廊下とか部屋とか仕分けなしで、幻想空間としていっぱいに開いて、ひとつの演劇空間として成立させてやっている感じなんですけどね。それと同時に.強制しない、客のイメージを強制しないで、全体像みたいなものをふわっと見せる、そういう構成が非常にうまくいっている感じがしました。それから、役者たちもかなり自由に動いていますし、それは要するに空間が開かれて、開放された感じがする。ヨーロッパなんかの大きな教会、たとえばゴシック建築の教会なんかにいくと、入っていくと精神を強制するんですね、背筋伸ばせとか、こっち向けとかなんとか非常に強制する、その強制しない空間ができあがった。それから、『象』という本を、僕はね、初期のころは上演されるごとにものすごくいやだった。なんか生理的にべたべたくっついてきて、やりきれない思いをして途中で逃げ出したくなったりする思いをしたんですが、最近は少しそれがなくなったんですけれども、本当に完全に開放された。わりと空間全体を見ながら自由にこちらのイメージで遊べる、それは深津君の功績なんじゃないかなという感じがします。役者の人たちもそれに応えて、割と自由に自分自身の遊びみたいなものも加えながらやっていた感じがした。僕はね、気に入ってるんですよ。