シェイクスピア大学校


『ヘンリー六世』上演記念 シェイクスピア大学校
6回連続講座
芸術監督:鵜山 仁
監修:小田島雄志 河合祥一郎

VI シェイクスピアは『ヘンリー六世』をなぜ書いたのか? 河合祥一郎(英文学者)
2009年11月19日[木]

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[河合祥一郎氏登場](拍手)
敵の分子の河合です(笑)。まさか、こんな舞台の上で、池のそばでお話するとは思ってもいませんでした。チャータムの書記のように後ろから民衆に襲われて、パソコンなんか持っていたら、「こいつはパソコン持っているぞ、殺してしまえ」と言われそうですが。チャータムの書記については、後ほどお話したいと思っています。実は、今回の鵜山さん演出の『ヘンリー六世』の中には、新国立劇場の演劇研修所を卒業した人たちが数名参加して活躍しています。その中の一人がチャータムの書記を演じていました。先ほど鵜山さんからご紹介いただいたように、彩の国さいたま芸術劇場で蜷川幸雄さんが、「よし、戦おう」とおっしゃって『ヘンリー六世』を上演しますが、ぶつけたんではなくて、たまたまなんですね。さいたまの企画がすでに決まった時に、「え、新国でもやるの?じゃあ、勝負だね」というような話になっていったのです。
後ほど、お話ししますけれど、さいたまは交通事情がありますので、こちらのように9時間というわけにはいきません。ご覧になったら早く帰れるようにということで、三部作をひとつにまとめて、休憩を間にいれて前半後半、全部で6時間以内に短くまとめようということで、松岡和子さんの訳を私がぎゅっと凝縮しました。面白いことは全部詰まっています。
ですので、新国立劇場の監修、そして講演をというご相談を受けた時に、「私、さいたまでやるんですけど、大丈夫なんですか?」と申し上げたら、制作の方が「大丈夫です。同じ『ヘンリー六世』で互いに協力し合いましょう、ということになっています」とお答えいただき、今日こちらにまかり出ました。
ここで今日お話しするのは、敵の分子としてではなく、英文学者としてお話します。また劇評家としてお話しするのでもなく、劇評については実は『シアターアーツ』という国際演劇評論家協会(AICT)で出している雑誌に、新国立劇場の『ヘンリー六世』について長めに書かせていただきましたので、そちらをご覧いただければと思います。