ダンス「サーカス」 森山開次インタビュー(前編)


繊細にして鋭敏な感性と、海外のメディアから「驚異のダンサー」と評された高い身体表現能力で、

多くの観客を魅了する森山開次。

話題を集めた『曼荼羅の世界』から3年ぶりに新国立劇場で発表する新作は、「サーカス」がテーマ。

インタビューの前編では、このテーマを選んだ背景について語ります。

<下記インタビューはジ・アトレ3月号掲載>

インタビュアー:稲田奈緒美(舞踊評論家)


ジャンルを超えた出演者たち
子供も楽しめる「サーカス」!

news_ph01.jpg

─森山さんのダンスといえば、しなやかでシャープな身体とストイックな精神性が思い浮かびます。「サーカス」をテーマに演出・振付・アートディレクションをとるのは、これまでと異なる印象を受けます。


森山 僕は新国立劇場で様々な作品を創っていて、前作の『曼荼羅の世界』では芸術選奨文部科学大臣新人賞、江口隆哉賞などいくつもの賞をいただきました。妄想も含めてどんどん湧いてくる想像力をいかして、思い描く世界をダンスにしてきたんです。自分でも、人を笑わせるとか、おどけてみせるタイプではないな、と思っていました。だから、2012年にNHKテレビで、旅に出て何かに挑戦するという番組に出演したとき、あえて気質とは違うことに挑戦しようと、ニューヨークのクラウン(道化師)・ワークショップに参加しました。アメリカのクラウンは、ヨーロッパのどこか物悲しかったり、シュールだったりするピエロとはちょっと違うんですよ。大道芸的、エンターテインメント的というか、言葉をしゃべったり、コントをすることもあります。場所もいろいろで、地下鉄の中でゲリラ的にパフォーマンスをしたり、ケアクラウンといって入院している子供たちのところへ行って楽しませることもしました。人を笑わせるのは難しいけれど、面白かったんです。


─今回は、大人も子供も楽しめる作品になるそうですね。


森山
 NHKテレビの子ども向け番組「からだであそぼ」に長く出演していたので、そこでも人を楽しませる、笑わせるようなダンスを踊っていたんですよね。全身タイツを着て体でいろんなものを表現する中で、「踊る内臓」という人気コーナーがありました。内臓からついには骨になって、番組を飛び出して『LIVE BONE』というパフォーマンスになり、衣裳を担当したひびのこづえさん、音楽を担当した川瀬浩介さんと一緒に各地をツアーしています。

 

森山開次×ひびのこづえ×川瀬浩介『LIVE BONE』より (2013年/スパイラルホール/©森山開次プロジェクト)

moriyama.jpg

 

 ─ひびのさん、川瀬さんが今回もスタッフに加わって、森山さんの「サーカス」の世界を創るのですね。


森山 彼らの衣裳、音楽と共演するのが、ユニークな出演者たちです。コンテンポラリーダンサー、バレリーナ、元新体操選手、大道芸のパフォーマーもいます。今はサーカス自体が変わってきていますよね。シルク・ドゥ・ソレイユのように大規模なエンターテインメントもあれば、演劇を取り入れたアートっぽいものもある。もともと僕はミュージカルを通ってダンスを始めたので、アートとエンターテインメントの区別がほとんどないんです。今回はダンスを軸にしながらひねりをきかせて、大人も子供も楽しめる作品にしようと思っています。


─何が飛び出すかわからない、楽しみな世界ですね。 



インタビュー後編では、作品の構想について語っていただきます。お楽しみに!